33 / 35
33. 変わらない
しおりを挟む竣くんが事故にあってから1ヶ月
あの後一命を取り留めたものの未だ目が覚めずにいる
毎朝目覚める度に期待して
時間のある限り病院で過ごしながら
目を覚まして名前を呼んでくれるのを待った
"きっと大丈夫"
そう思っていても、そんな日が1日増える事に不安はましていく
"もしかしたらこのまま..."
なんて考えたくないのに頭をよぎる最悪な考え
寝付けない日が続き目の下にできた隈
日に日に濃くなっていくそれに見ないふりをして過ごしていた
「結くん、最近寝れてないんでしょう、、、」
バイト終わり、着替えを済ませ今日も病院に行こうとお店を出ようとした所でまみこさんに声をかけられた
「そんなことないですよ、、、」
「竣くん、まだ目が覚めないのね、、、」
「、、はい。」
「きて、」
そう言って手を取られランチ営業の終わった誰もいない店内の椅子に座らされた
すると、晃さんと凪くんがやってきてオムライスを俺の前に置いた
「あの、、俺、食欲なくて、、、」
「今の状況で、睡眠も食事もとれなくなってしまうのも分かるけど、でも、、少しでも食べて欲しいの。」
「でも、、、、」
「このままじゃ結くんも倒れてしまう、、そうなったら竣くんに会いに行くことすら出来なくなってしまうのよ」
その言葉に何も言えず詰まってしまえば
「お願い、、残してもいいから、、少しでも食べて」
3人を見れば不安、心配そんな感情が入り交じった顔で俺を見ていた
その姿に俺はスプーンを手に取り1口食べた
その瞬間思い出される
ここで初めてこのオムライスを食べたあの日を....
あの時と何も変わらない優しい味
ずっと見守ってきてくれた晃さんとまみこさん、そして凪くん
気付けば涙が溢れていた
どれだけ "大丈夫" と言い聞かせても消えない不安
またあの声で名前を呼んで欲しい
「好きです。」と少し照れた表情で伝えて欲しい
あの時返せなかった「好き」をたくさん伝えたい
食べる事もままならず泣き続ける俺を、まみこさんがあの時と同じように抱きしめてきた
「抱えてる不安、全部話して。誰かに言う事で心が落ち着く事もあると思うの。」
そう言いながらまるで小さい子をあやす様に優しく撫でられる背中
その言葉に俺は全てを話した
ここにやって来た理由から全てを
全てを話し終えた時には涙で顔はぐちゃぐちゃになっていた
だけど、ずっとあった不安も悲しみも軽くなっていて
「きっと大丈夫なんて言葉は軽く言えないけど、私達はずっとあなたのそばにいるから、、、だから、、もっと頼ってちょうだい。あなたも、大事な家族みたいなものなんだから。」
「1人でいたくないと思うなら、、いつでも来てもいいんだからね。」
"あぁほんとに、、、あの時も今も、ずっと俺に寄り添ってくれるこの人たちに会えて、俺はほんとに幸せ者だ、"
そう思いながら「ありがとう、、ございます。」お礼を言いながら頭を下げた
「俺、病院行ってきますね。それで、また一緒にここに食べにくる事、竣くんに提案してきます!」
「いいわね。いつでも待ってるからねって伝えといて。」
「はい!それで、、、その後、またお邪魔してもいいですか?」
「もちろん」
そう言いながら笑顔を見せる3人に俺も笑顔を見せてお店を出た
11
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
オメガ社長は秘書に抱かれたい
須宮りんこ
BL
芦原奏は二十九歳の若手社長として活躍しているオメガだ。奏の隣には、元同級生であり現在は有能な秘書である高辻理仁がいる。
高校生の時から高辻に恋をしている奏はヒートのたびに高辻に抱いてもらおうとするが、受け入れてもらえたことはない。
ある時、奏は高辻への不毛な恋を諦めようと母から勧められた相手と見合いをする。知り合った女性とデートを重ねる奏だったが――。
※この作品はエブリスタとムーンライトノベルスにも掲載しています。
フェイク・ハニー ~御曹司の擬似恋人になったのは、お金のため! だのに僕、本気になってる……!?~
大波小波
BL
夏目 都(なつめ みやこ)は、大学二年生の苦労人オメガだ。
弟たちを養うために、学生相手に便利屋を始めた。
次第にエスカレートして、ついには体を売ることも辞さなくなった、都。
そんな彼の元へ現れたのは、富豪の御曹司アルファ・神谷 雄翔(かみや ゆうと)だ。
雄翔は都に、自分専属の便利屋になって、疑似恋人を演じて欲しいと願い出た……!
【完結】ブルームーンを君に(改稿版)
水樹風
BL
【約束のカクテルは『ブルームーン』】
祖父に売られるようにして、二十歳以上年上の藤堂財閥の当主・貴文の後妻となったオメガの悠(はるか)。
形だけの結婚も、実は悠にとって都合のいいものだった。
十年前、たった一度だけキスをしたアルファと交わした不確かな『約束』。
その『約束』をどこか諦めながらも胸に抱き、想い出のジャズバー【Sheets of Sounds】でピアノを弾き続ける悠。
そんな悠の隣には、執着にも近い献身で彼を支え続ける、ベータの執事・徳永がいた。
絡み合う過去とそれぞれの想い。
やがて、アメリカで仕事をしていた貴文の息子・恭一が帰国したことで、過去と今が交わり解けだす……。
◇ この作品は、以前投稿していた同名作品を、一人称視点から三人称一元視点に改稿・加筆したもので、エピソードも若干異なります。
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
愛しているかもしれない 傷心富豪アルファ×ずぶ濡れ家出オメガ ~君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる~
大波小波
BL
第二性がアルファの平 雅貴(たいら まさき)は、30代の若さで名門・平家の当主だ。
ある日、車で移動中に、雨の中ずぶ濡れでうずくまっている少年を拾う。
白沢 藍(しらさわ あい)と名乗るオメガの少年は、やつれてみすぼらしい。
雅貴は藍を屋敷に招き、健康を取り戻すまで滞在するよう勧める。
藍は雅貴をミステリアスと感じ、雅貴は藍を訳ありと思う。
心に深い傷を負った雅貴と、悲惨な身の上の藍。
少しずつ距離を縮めていく、二人の生活が始まる……。
春風のように君を包もう ~氷のアルファと健気なオメガ 二人の間に春風が吹いた~
大波小波
BL
竜造寺 貴士(りゅうぞうじ たかし)は、名家の嫡男であるアルファ男性だ。
優秀な彼は、竜造寺グループのブライダルジュエリーを扱う企業を任されている。
申し分のないルックスと、品の良い立ち居振る舞いは彼を紳士に見せている。
しかし、冷静を過ぎた観察眼と、感情を表に出さない冷めた心に、社交界では『氷の貴公子』と呼ばれていた。
そんな貴士は、ある日父に見合いの席に座らされる。
相手は、九曜貴金属の子息・九曜 悠希(くよう ゆうき)だ。
しかしこの悠希、聞けば兄の代わりにここに来たと言う。
元々の見合い相手である兄は、貴士を恐れて恋人と駆け落ちしたのだ。
プライドを傷つけられた貴士だったが、その弟・悠希はこの縁談に乗り気だ。
傾きかけた御家を救うために、貴士との見合いを決意したためだった。
無邪気で無鉄砲な悠希を試す気もあり、貴士は彼を屋敷へ連れ帰る……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる