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あんにん

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33. 変わらない

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  竣くんが事故にあってから1ヶ月
  あの後一命を取り留めたものの未だ目が覚めずにいる
  
  毎朝目覚める度に期待して
  時間のある限り病院で過ごしながら
  目を覚まして名前を呼んでくれるのを待った

  "きっと大丈夫"
  そう思っていても、そんな日が1日増える事に不安はましていく

  "もしかしたらこのまま..."
  なんて考えたくないのに頭をよぎる最悪な考え

  寝付けない日が続き目の下にできた隈
  日に日に濃くなっていくそれに見ないふりをして過ごしていた


 「結くん、最近寝れてないんでしょう、、、」

  バイト終わり、着替えを済ませ今日も病院に行こうとお店を出ようとした所でまみこさんに声をかけられた

 「そんなことないですよ、、、」
 「竣くん、まだ目が覚めないのね、、、」
 「、、はい。」
 「きて、」

  そう言って手を取られランチ営業の終わった誰もいない店内の椅子に座らされた
  すると、晃さんと凪くんがやってきてオムライスを俺の前に置いた

 「あの、、俺、食欲なくて、、、」
 「今の状況で、睡眠も食事もとれなくなってしまうのも分かるけど、でも、、少しでも食べて欲しいの。」
 「でも、、、、」
 「このままじゃ結くんも倒れてしまう、、そうなったら竣くんに会いに行くことすら出来なくなってしまうのよ」
 
  その言葉に何も言えず詰まってしまえば

 「お願い、、残してもいいから、、少しでも食べて」

  3人を見れば不安、心配そんな感情が入り交じった顔で俺を見ていた
  その姿に俺はスプーンを手に取り1口食べた

  その瞬間思い出される
  ここで初めてこのオムライスを食べたあの日を....
  あの時と何も変わらない優しい味
  ずっと見守ってきてくれた晃さんとまみこさん、そして凪くん

  気付けば涙が溢れていた
  
  どれだけ "大丈夫" と言い聞かせても消えない不安
  またあの声で名前を呼んで欲しい
  「好きです。」と少し照れた表情で伝えて欲しい
  あの時返せなかった「好き」をたくさん伝えたい

  食べる事もままならず泣き続ける俺を、まみこさんがあの時と同じように抱きしめてきた
 
 「抱えてる不安、全部話して。誰かに言う事で心が落ち着く事もあると思うの。」

  そう言いながらまるで小さい子をあやす様に優しく撫でられる背中
  その言葉に俺は全てを話した
  ここにやって来た理由から全てを

  全てを話し終えた時には涙で顔はぐちゃぐちゃになっていた
  だけど、ずっとあった不安も悲しみも軽くなっていて
  
 「きっと大丈夫なんて言葉は軽く言えないけど、私達はずっとあなたのそばにいるから、、、だから、、もっと頼ってちょうだい。あなたも、大事な家族みたいなものなんだから。」
 「1人でいたくないと思うなら、、いつでも来てもいいんだからね。」

  "あぁほんとに、、、あの時も今も、ずっと俺に寄り添ってくれるこの人たちに会えて、俺はほんとに幸せ者だ、"

  そう思いながら「ありがとう、、ございます。」お礼を言いながら頭を下げた

 「俺、病院行ってきますね。それで、また一緒にここに食べにくる事、竣くんに提案してきます!」
 「いいわね。いつでも待ってるからねって伝えといて。」
 「はい!それで、、、その後、またお邪魔してもいいですか?」
 「もちろん」

  そう言いながら笑顔を見せる3人に俺も笑顔を見せてお店を出た

  
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