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13. あけた夜
しおりを挟む新幹線に乗り込み竣くんと談笑しながら、時折流れる景色に目を向ける
だんだんと近付いてくる故郷に俺は膝の上でグッと拳を握りしめた
その後、電車を乗り継ぎようやく着いた懐かしい景色に目を細める
「なつかしいな、、、」
思わずそう呟けば竣くんがそっと俺の手を繋いだ
視線を向ければ「行きましょう。」と落ち着く優しい声で促した
それに頷き足を進める
予約していたホテルでのチェックインを済ませ荷物を置き近くを一緒に歩く事にした
あきらと出会った高校が近くにある事を知っていたので行ってみたかったのだ
あの時と何一つ変わらない校舎に思い出が一気に蘇る
緊張しながらも期待に胸を弾ませながら入学したその日にあきらと出会い仲を深めていった
時には喧嘩をして、一緒に帰ってやるもんかと先に教室を出たはずなのに結局すぐに寂しくなってこの門であきらが出てくるのを待ってた時もあった
ここで思い出される全てにあきらがいて、、
途端に滲む目を瞑りゆっくりと深呼吸をする
「大丈夫ですか?」
様子を伺うように問いかける竣くんに「大丈夫」そう短く返事をして、思い出をなぞるように2人で行ったファミレスやデートしたお店を見て回った
もうここに、あの時のような笑顔を見せるあきらの姿がない事をようやく受け止めきれた気がした
ホテルに戻りコンビニで買った軽食を口にしながら明日の予定を確認してその日は早めに眠りについた
翌朝、まだ眠気がする中準備を済ませ目的の場所へ向かう
数年ぶりにやってきたあきらが眠る場所
そっと撫で「なかなか来れなくてごめんな。」そう呟いた
竣くんが持ってくれていたのを受け取り綺麗にしていく
花を置き、線香に火をつけ手を合わせた
たくさん話した
いなくなってから自分がどうなったのか
こうやって話せるようになるまでにこれ程の時間が経ってしまった事
今どこでどう過ごしているのか
そして、一緒に来てくれた竣くんの事
時間にしたら数十分、だけど濃い内容だったと思う
顔を上げれば竣くんも手を合わせてくれていた
ゆっくりとその目が開き「お話出来ましたか?」優しく聞いてくれた
「おかげさまで。」
「それならよかったです。」
「帰ろうか」
「はい」
過去数回、ここに来ればあきらの死を突きつけられ苦しかった
目の前に立った時には嗚咽するほど泣き立っていられなかった
現実を受け止めたくなくて、頭では分かっていても体がここに来るのを拒否した
それでも行かなきゃ、そう思いながらも行動出来なかった
笑顔でいて欲しい。
あきらがそう願っていたから、だから、、、前を向き始めた "向かなきゃいけない" そう思った
しばらくして普通の生活が出来るようになって、乗り越えたと思っていた
だけどそれは、まだ明けていない暗闇を "もう大丈夫" そう自分に言い聞かせながら無理矢理手探りで進んでいただけだった
この思い出の場所で心を馳せた事であきらの死とちゃんと向き合えた気がした
だから今日、自分の力でしっかり立っていられた
今度こそ本当に前に進めた気がした
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