幼馴染の彼

あんにん

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  ゆっくりとはるにぃの方を向けば視線が絡み合う
  
 「仕事で来てたんだ。」

  そう言うと少し離れた所で立っていたスーツ姿の男性の方へ視線を向ける
  その後を追うように俺達も視線を向ければ、それに気付いた男性が軽く頭を下げた
  俺達も軽く頭を下げればはるにぃが言葉を続けた
  
 「先輩だよ、俺の指導係。ここの近くに取引先の会社があって、今日は用があって一緒に来てたんだ。」

 「用が終わって、ご飯でも食べようかってブラついてたら手を引かれてる尚也の姿見つけてさ、最初は友達なのかと思ったけど、よく見たら嫌がって離れようとしてたから、それで先輩に話して一緒に着いてきてもらったんだ。そしたら襲われそうになってるから、急いで人呼びに行ってもらって、俺は先に止めに入ったって感じかな、、、」

  そこまで言えば俺の方を向き

 「もう少し早めに助けられたらよかったんだけどね、、、。」

  その言葉に首を振る
  正直あの場ではるにぃが来てくれなかったらもっと酷い事になっていただろう
  そうならなかったのは紛れもなくはるにぃのおかげで、、、
  だから「そんな事ないよ。助かった、ありがとう。」そうお礼を言えば「そっか。」って呟いた


 「じゃあ俺は先輩も待たせてしまってるし行くね、、、皆も気を付けて帰って。」

  そう言えばあの男性の元へ向かった
  その後ろ姿を眺めていれば楓が遠慮がちに声を掛けた

 「なおや、、、その、、色々大丈夫か?」
 「大丈夫だよ、、、」
 「そっか、、、」

  俺らの何とも言えない雰囲気に亮介と湊が困惑の表情を浮かべているのが見えて、慌てて笑顔を作り「帰ろうか。」と声をかけた

  帰り道、どこか落ち着かない雰囲気の中、俺の携帯が着信を知らせた
  確認すれば父親で、、、3人に電話に出る事を伝え通話を始める

 「なおや!大丈夫なのか?」
 「父さん、、どうしたの?」
 「警察から連絡あったよ。」

  なんで父親に連絡が?と思ったが警察の人が色々聞いてきた時に俺は放心状態で、きちんと応えられていない時があった。その時横ではるにぃが対応してくれていた事をうっすらと思い出す

 「そっか、、、」
 「大丈夫なのか?今からお母さんとそっちに行くから。」
 「だい、、じょうぶ、、、だから、、、」
 「そんなに声震えてるのに大丈夫なわけないだろ。親に気を使う必要はない。それに明日、一緒に来てほしいって言われてるから。」
 「そっか、、、」
 「今日は一緒にホテルに泊まろう」
 「わかった、、今まだ外にいるから楓たちと駅の近くいるね。」
 「分かった。また連絡する、気を付けるんだぞ。」
 「うん、、、またね。」

  電話を終えれば心配そうに見つめる3人に笑顔で「両親が今から来るんだって。だから大丈夫だよ。」そう告げれば少しホッとした表情を見せた

 「それでさ、一緒に駅近くのお店で待ってくれるかな?」
 「「「もちろんだよ」」」

  3人のハモった声に自然と笑みが溢れる

  駅近くの喫茶店に入ってから2時間程経った頃、再び父親からの着信

 「今ついたけどどこにいる?」
 「駅近くの喫茶店。お店出て改札のとこまで行くよ。」
 「分かった。」

  電話を終え3人に伝えて席を立ちお店を出ればすっかり陽が落ちていた
  急いで改札の方へ向かえば両親の姿をすぐに見つけることが出来、声をかける
  それに気付いた母親が急いで駆け寄り俺を抱き締めれば「よかった。」と涙混じりの声で呟いた

  少し肩が震える母親の背中にそっと手を回し「もう大丈夫だから。」と声をかけた

  一緒に待ってくれていた楓達に俺と両親でお礼を伝えて、向かっている間に父親が予約をとってくれたホテルで一夜を過ごした

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