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4.ホーク
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冷えた空気。冷たいコンクリートの上で転がっていたサルモネは自分のクシャミで目を覚ました。
「……えッ? 」
ガバッと身体を起こすと、自分が鉄格子に阻まれた空間に閉じ込められていたことに気がついた。
「なんだこれ! え? ガロ、ガロは?! 」
鉄格子を掴み、視線をあちこちと動かすが呻く声や泣き叫ぶ声だけしか聞こえない。
サルモネ以外にも牢屋に囚われている人はいるようだった。
「くそッ! ガロ! ガロ無事?! 」
「静かにした方がいい。看守が来たら面倒だぞ」
「誰? 」
暗い空間、サルモネでは無い声がした。低く落ち着いた声の主は格子に寄りかかるサルモネの元まで足音も立てずに近づいた。
ライターの火がつき、ジジッとタバコに火をつけたスーツの男。
「お前はガロに嵌められたクチか? 」
「えッ? 」
「ガロ、カンパニーの幹部だよ。通称は、確かホークだったか……」
「カンパニーって? いや、ガロが嵌めたってどういうことですか? 」
「ラットカンパニー。人身売買斡旋から裏取引、貴族の暗殺までする真っ黒な組織だよ」
タバコの男はブロンドの髪をかいてサルモネを隣に招いた。
「ガ、ガロがそこの幹部だって? 」
「あぁそうだ。なかでもアイツはかなりイカれてるな」
「……嘘だ! ガロはそんな事しない! 」
「お前、アイツと知り合ってどのくらいだ。バカな魔法士でもアイツが手を出しちゃいけない領域に踏み込んでいることは分かるぜ? 」
知り合って間もない。
だけど、はじめて友人となったガロを自分を嵌めた、騙したと思いたくはなかった。
「お前、オズんとこの弟子だろ」
「……え? どうして知ってるんですか」
「はッ。お前を知らねぇこの国の魔法士がいるかよ。オズウェルの弟子っていう肩書きの強さを知っておいた方がいい」
「でも、ガロは知らなかったですよ」
「馬鹿か。知らねぇフリしてたに決まってるだろ。いかにカンパニーがお前を虎視眈々と狙っていたか……」
灰がポトリと落ちる。金髪の男は腰を下ろしてサルモネを見上げた。瞳に刻まれた十字が煌々と光る。
「まぁ、思い出してみろ、ここにぶち込まれる前のこと。それでもガロを信じるのか」
記憶が途切れたのはガロの見下ろす冷たい目だ。理性を総動員すれば満場一致でガロはサルモネを裏切った、いやもともとカンパニーに引きずり込むのを目的としていたと結論が出る。
だけど、全部が全部ガロが悪だとは思えないのだ。
「フゥ……」
煙を吐いた男は立ち上がった。
「お前、名前は? 」
「俺のこと知ってるんじゃ」
「出回ってんのは赤髪と琥珀色の目って事だけだ。そんな珍妙な色のヤツそうそういねぇからな」
「……珍妙って。サルモネです、名前はサルモネ」
金髪の男は一瞬だけ目を見開くとすぐに元の凛々しい表情に戻った。
「俺はクラウン。カンパニーに潜入していたアリスフォードの諜報員だ」
「……諜報員? 」
「ラットカンパニーの内部を探ってたんだ。幹部まで上り詰めたがドジってここにぶち込まれたけどな」
「……えッ? 」
ガバッと身体を起こすと、自分が鉄格子に阻まれた空間に閉じ込められていたことに気がついた。
「なんだこれ! え? ガロ、ガロは?! 」
鉄格子を掴み、視線をあちこちと動かすが呻く声や泣き叫ぶ声だけしか聞こえない。
サルモネ以外にも牢屋に囚われている人はいるようだった。
「くそッ! ガロ! ガロ無事?! 」
「静かにした方がいい。看守が来たら面倒だぞ」
「誰? 」
暗い空間、サルモネでは無い声がした。低く落ち着いた声の主は格子に寄りかかるサルモネの元まで足音も立てずに近づいた。
ライターの火がつき、ジジッとタバコに火をつけたスーツの男。
「お前はガロに嵌められたクチか? 」
「えッ? 」
「ガロ、カンパニーの幹部だよ。通称は、確かホークだったか……」
「カンパニーって? いや、ガロが嵌めたってどういうことですか? 」
「ラットカンパニー。人身売買斡旋から裏取引、貴族の暗殺までする真っ黒な組織だよ」
タバコの男はブロンドの髪をかいてサルモネを隣に招いた。
「ガ、ガロがそこの幹部だって? 」
「あぁそうだ。なかでもアイツはかなりイカれてるな」
「……嘘だ! ガロはそんな事しない! 」
「お前、アイツと知り合ってどのくらいだ。バカな魔法士でもアイツが手を出しちゃいけない領域に踏み込んでいることは分かるぜ? 」
知り合って間もない。
だけど、はじめて友人となったガロを自分を嵌めた、騙したと思いたくはなかった。
「お前、オズんとこの弟子だろ」
「……え? どうして知ってるんですか」
「はッ。お前を知らねぇこの国の魔法士がいるかよ。オズウェルの弟子っていう肩書きの強さを知っておいた方がいい」
「でも、ガロは知らなかったですよ」
「馬鹿か。知らねぇフリしてたに決まってるだろ。いかにカンパニーがお前を虎視眈々と狙っていたか……」
灰がポトリと落ちる。金髪の男は腰を下ろしてサルモネを見上げた。瞳に刻まれた十字が煌々と光る。
「まぁ、思い出してみろ、ここにぶち込まれる前のこと。それでもガロを信じるのか」
記憶が途切れたのはガロの見下ろす冷たい目だ。理性を総動員すれば満場一致でガロはサルモネを裏切った、いやもともとカンパニーに引きずり込むのを目的としていたと結論が出る。
だけど、全部が全部ガロが悪だとは思えないのだ。
「フゥ……」
煙を吐いた男は立ち上がった。
「お前、名前は? 」
「俺のこと知ってるんじゃ」
「出回ってんのは赤髪と琥珀色の目って事だけだ。そんな珍妙な色のヤツそうそういねぇからな」
「……珍妙って。サルモネです、名前はサルモネ」
金髪の男は一瞬だけ目を見開くとすぐに元の凛々しい表情に戻った。
「俺はクラウン。カンパニーに潜入していたアリスフォードの諜報員だ」
「……諜報員? 」
「ラットカンパニーの内部を探ってたんだ。幹部まで上り詰めたがドジってここにぶち込まれたけどな」
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