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あまりにも、一方的な
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「い……やぁ……」
消えてしまいたい。エルミアが泣き声を出すと、内側でアムラスがふるえた。
「恥ずかしがらないでくれ。エルミアのは……薬のせいなんだから」
「こ、こんな……ずっと、こんなこと、後遺症なんてなかったのに!」
「でも、感覚はあったんじゃないか? 刺激を与えると、薬の効能で……ひたすら欲情しやすくなる」
まさしく見透かすような彼の言葉に、エルミアは絶望感を覚えていた。
「そんな……薬なんて……!」
「あるんだよ。エルミアは、媚薬って聞いたことはないか?」
「知らな……い、です」
はじめて耳にするものだった。
面食らったような顔をしてから、アムラスは肉杭を引き抜いた。
「は、ぁ……あっ」
身体からアムラスが抜け出るだけで、身体に甘いものが広がった。
湿った音を残して身体から抜け出し、腹部に当たった熱く濡れた肉杭に、エルミアは未練を覚えた。もっとなかにいてほしい、かきまわしてほしい、つながっていたい――認めたくない感情が脳裏に芽生える。
「刺激を与えて発散させたほうが、薬が抜けるのがはやくなるらしい」
「し、刺激を与えなければ……?」
刺激とは、まさかいまのようなふしだらな行為か。
「時間がかかるみたいだね」
エルミアは長い息を吐く。
――時間をかければ、これは消えるのだ。
「それなら、こんなことする必要……」
「いやだった?」
ぬけぬけというアムラスに、エルミアは声を大きくしていた。
「駄目です、こんなこと……いけません……!」
彼の身体が離れ、つい力なくうなだれたその下腹部に目がいってしまう。
「それなら、どうして俺がここに来るのを許した? 俺がついてきて、なにも起きないとでも?」
エルミアはおずおずとうなずいた。
「なんでそう思うんだ?」
自分がアムラスの眼中にあるなど、考えたこともなかった。
「私は……アムラスさまにふさわしくないです」
今度はアムラスの表情に怒りが宿る。エルミアは瞠目し、シーツを引き寄せてくるまった。
「……俺は一度も、そんなふうに考えたことはない」
「きちんとした家柄の方でなければ、アムラスさまのおそばには」
「アムラスと呼んでくれ」
目を逸らしたまま首を振ると、アムラスの手がのびてきてあごをとらえた。屋上でそうしたときのような強さはなく、エルミアは目を逸らしたままだ。
「また昔みたいに笑ったり……一緒に過ごすことはできないのか」
「私はここで、独り身で人生をまっとうしようと思っています。そのつもりで……ここに、来たんです」
アムラスの吐くため息を重く感じた。
「本気なのか」
「はい。ですから……放っておいて薬が消えるなら、それで……いいんです」
あごをとらえたアムラスの指に力がこもり、ややあってそれが消えた。
アムラスは手を離すと、エルミアの背をシーツ越しにそっとふれた。
彼の手がふれ、エルミアはかすかに身をふるわせる。
ふっとアムラスがほほえんだ気配があって、エルミアは目を伏せた。
「俺は放っておくつもりはない」
「……そんな」
エルミアが顔を上げると、月光に照らされたアムラスがこちらを見つめていた。
恋しいひとの顔だ。
初恋で、それをあきらめ、なのいいまだに彼への気持ちをエルミアは胸に秘めている。
実るはずがないものだ。
身分が違う。
彼の神官長の家系より、エルミアの家は下級だ。なによりエルミアの母の出自は平民だ。この気持ちが実を結ぶわけがない。エルミアは母のように、日陰の暮らしをする気はなかった。日陰の暮らしをするくらいなら、エルミアは独りでいる。
――でも。
彼のどこか決然としたまなざしを見返し、エルミアは考えた。
――でも、もしも彼がそのつもりだったら。
現に彼に組み敷かれたばかりだ。彼がエルミアを囲うつもりでいたら、自らデュカの森という最適の場所を選んでしまったことになる。
アムラスはなにを知っているのか。薬のこと自体、エルミアはまったく聞かされていなかったことだ。
隠者として暮らそうとしていたから、誰も知らせなかったのか――考えても自身からこたえは出てこない。
「アムラスさま、薬のこと、どのくらいご存じなんですか?」
「……今夜はもう休もう」
「いいえ! 教えていただかないと……」
不安で落ち着かない。
「交換条件を出していいか?」
「交換条件……?」
アムラスはにやにやとひとの悪い笑みを浮かべた。
「エルミアがひとつ質問をする。俺はこたえる。かわりに、薬の発散をさせてもらう」
「発散……って」
「悪い話じゃないだろう? 知りたいことが知れて、薬も発散できるんだから」
エルミアは自分の身体を抱きしめた。
「冗談、ですよね」
「どうかな」
依然にやにや笑いを顔に貼りつけたアムラスは、手早く服を着ると開いたままの扉へ大股に進んだ。
「おやすみ、エルミア」
「待って!」
「なに? もう一回発散したい?」
言葉に詰まったエルミアに笑い、足音も騒々しくアムラスは屋上に駆け上がった。
彼は鍋を持って引き返してきた。部屋の前をいき過ぎながらちらりとエルミアを見た顔には、やはりひとの悪そうな笑みが貼りついている。
彼はなにもいわずに建物から出ていった。
濡れた地面を歩くアムラスの足音が遠のいていく。
エルミアはため息をついた。
服を着ようと身じろいだ身体のなか、アムラスが最奥で吐き出した精がゆっくり降りてくる感覚に目を見開く。
「あ……」
どうしたらいいかわからず中腰になると、温かい液体が流れ出てエルミアの内股を濡らした。
アムラスの精だ――エルミアの身体の奥が疼いた。一度瞬いた瞬間に、アムラスの熱いうめきと腰の動きを思い出してしまう。
「……そんな……」
エルミアはシーツが汚れるのもかまわず、ベッドにしゃがみこんでいた。
心臓がどくどくと急速に脈打ちはじめていた。身体の芯が疼いている。
部屋にひとりになったいま、エルミアは素直になっていた。
――彼が欲しい。
いやだ、などと口走っていたが、エルミアはあの行為を悦んでいた。
アムラスの腕のなかで、嵐のような時間をまた過ごしたい。
これも薬のせいなのだろうか。
これまで、儀式の後身体に残っていた感覚を思い出すことは多々あった。だがここまでひどい感覚はなかった。
閨での夫婦の営みについて、エルミアは無知といっていい。男性のどの部分と女性のどの部分に使うか。そして男性が精を吐き出して終わることくらいはわかっている。それ以外は最初は苦痛を伴い、後々夫婦の愛情で乗り越えられる、と曖昧な知識しかエルミアにはない。すくなすぎる知識では、交歓など絵空事とおなじだ。
アムラスを求めるこの感覚は、薬のせいなのか――正常なことなのか。
性経験どころかまともな知識もないのに、なにが正常でなにが異常なのか判断できない。
「私、どうなるの……?」
エルミアは裸のままベッドに身を横たえた。
疼きがおさまるのを待ち、エルミアはいやなことを考える。
――クレスカの儀式ではどうだったのだろう。
神を降ろした男性に対して、おなじようになっていなかったか。
「……まさか」
薄くエルミアは笑った。
自分は眠っていたのだ。なにも覚えていない。眠っていた人間が、明確な反応を返すことなど土台無理ではないか。
上掛けを引き寄せ、エルミアは目を閉じる。
瞑目した途端に、身体が重くなった。
倦怠感がひどい。
あっという間にエルミアは眠りに落ちていた。
(続)
消えてしまいたい。エルミアが泣き声を出すと、内側でアムラスがふるえた。
「恥ずかしがらないでくれ。エルミアのは……薬のせいなんだから」
「こ、こんな……ずっと、こんなこと、後遺症なんてなかったのに!」
「でも、感覚はあったんじゃないか? 刺激を与えると、薬の効能で……ひたすら欲情しやすくなる」
まさしく見透かすような彼の言葉に、エルミアは絶望感を覚えていた。
「そんな……薬なんて……!」
「あるんだよ。エルミアは、媚薬って聞いたことはないか?」
「知らな……い、です」
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面食らったような顔をしてから、アムラスは肉杭を引き抜いた。
「は、ぁ……あっ」
身体からアムラスが抜け出るだけで、身体に甘いものが広がった。
湿った音を残して身体から抜け出し、腹部に当たった熱く濡れた肉杭に、エルミアは未練を覚えた。もっとなかにいてほしい、かきまわしてほしい、つながっていたい――認めたくない感情が脳裏に芽生える。
「刺激を与えて発散させたほうが、薬が抜けるのがはやくなるらしい」
「し、刺激を与えなければ……?」
刺激とは、まさかいまのようなふしだらな行為か。
「時間がかかるみたいだね」
エルミアは長い息を吐く。
――時間をかければ、これは消えるのだ。
「それなら、こんなことする必要……」
「いやだった?」
ぬけぬけというアムラスに、エルミアは声を大きくしていた。
「駄目です、こんなこと……いけません……!」
彼の身体が離れ、つい力なくうなだれたその下腹部に目がいってしまう。
「それなら、どうして俺がここに来るのを許した? 俺がついてきて、なにも起きないとでも?」
エルミアはおずおずとうなずいた。
「なんでそう思うんだ?」
自分がアムラスの眼中にあるなど、考えたこともなかった。
「私は……アムラスさまにふさわしくないです」
今度はアムラスの表情に怒りが宿る。エルミアは瞠目し、シーツを引き寄せてくるまった。
「……俺は一度も、そんなふうに考えたことはない」
「きちんとした家柄の方でなければ、アムラスさまのおそばには」
「アムラスと呼んでくれ」
目を逸らしたまま首を振ると、アムラスの手がのびてきてあごをとらえた。屋上でそうしたときのような強さはなく、エルミアは目を逸らしたままだ。
「また昔みたいに笑ったり……一緒に過ごすことはできないのか」
「私はここで、独り身で人生をまっとうしようと思っています。そのつもりで……ここに、来たんです」
アムラスの吐くため息を重く感じた。
「本気なのか」
「はい。ですから……放っておいて薬が消えるなら、それで……いいんです」
あごをとらえたアムラスの指に力がこもり、ややあってそれが消えた。
アムラスは手を離すと、エルミアの背をシーツ越しにそっとふれた。
彼の手がふれ、エルミアはかすかに身をふるわせる。
ふっとアムラスがほほえんだ気配があって、エルミアは目を伏せた。
「俺は放っておくつもりはない」
「……そんな」
エルミアが顔を上げると、月光に照らされたアムラスがこちらを見つめていた。
恋しいひとの顔だ。
初恋で、それをあきらめ、なのいいまだに彼への気持ちをエルミアは胸に秘めている。
実るはずがないものだ。
身分が違う。
彼の神官長の家系より、エルミアの家は下級だ。なによりエルミアの母の出自は平民だ。この気持ちが実を結ぶわけがない。エルミアは母のように、日陰の暮らしをする気はなかった。日陰の暮らしをするくらいなら、エルミアは独りでいる。
――でも。
彼のどこか決然としたまなざしを見返し、エルミアは考えた。
――でも、もしも彼がそのつもりだったら。
現に彼に組み敷かれたばかりだ。彼がエルミアを囲うつもりでいたら、自らデュカの森という最適の場所を選んでしまったことになる。
アムラスはなにを知っているのか。薬のこと自体、エルミアはまったく聞かされていなかったことだ。
隠者として暮らそうとしていたから、誰も知らせなかったのか――考えても自身からこたえは出てこない。
「アムラスさま、薬のこと、どのくらいご存じなんですか?」
「……今夜はもう休もう」
「いいえ! 教えていただかないと……」
不安で落ち着かない。
「交換条件を出していいか?」
「交換条件……?」
アムラスはにやにやとひとの悪い笑みを浮かべた。
「エルミアがひとつ質問をする。俺はこたえる。かわりに、薬の発散をさせてもらう」
「発散……って」
「悪い話じゃないだろう? 知りたいことが知れて、薬も発散できるんだから」
エルミアは自分の身体を抱きしめた。
「冗談、ですよね」
「どうかな」
依然にやにや笑いを顔に貼りつけたアムラスは、手早く服を着ると開いたままの扉へ大股に進んだ。
「おやすみ、エルミア」
「待って!」
「なに? もう一回発散したい?」
言葉に詰まったエルミアに笑い、足音も騒々しくアムラスは屋上に駆け上がった。
彼は鍋を持って引き返してきた。部屋の前をいき過ぎながらちらりとエルミアを見た顔には、やはりひとの悪そうな笑みが貼りついている。
彼はなにもいわずに建物から出ていった。
濡れた地面を歩くアムラスの足音が遠のいていく。
エルミアはため息をついた。
服を着ようと身じろいだ身体のなか、アムラスが最奥で吐き出した精がゆっくり降りてくる感覚に目を見開く。
「あ……」
どうしたらいいかわからず中腰になると、温かい液体が流れ出てエルミアの内股を濡らした。
アムラスの精だ――エルミアの身体の奥が疼いた。一度瞬いた瞬間に、アムラスの熱いうめきと腰の動きを思い出してしまう。
「……そんな……」
エルミアはシーツが汚れるのもかまわず、ベッドにしゃがみこんでいた。
心臓がどくどくと急速に脈打ちはじめていた。身体の芯が疼いている。
部屋にひとりになったいま、エルミアは素直になっていた。
――彼が欲しい。
いやだ、などと口走っていたが、エルミアはあの行為を悦んでいた。
アムラスの腕のなかで、嵐のような時間をまた過ごしたい。
これも薬のせいなのだろうか。
これまで、儀式の後身体に残っていた感覚を思い出すことは多々あった。だがここまでひどい感覚はなかった。
閨での夫婦の営みについて、エルミアは無知といっていい。男性のどの部分と女性のどの部分に使うか。そして男性が精を吐き出して終わることくらいはわかっている。それ以外は最初は苦痛を伴い、後々夫婦の愛情で乗り越えられる、と曖昧な知識しかエルミアにはない。すくなすぎる知識では、交歓など絵空事とおなじだ。
アムラスを求めるこの感覚は、薬のせいなのか――正常なことなのか。
性経験どころかまともな知識もないのに、なにが正常でなにが異常なのか判断できない。
「私、どうなるの……?」
エルミアは裸のままベッドに身を横たえた。
疼きがおさまるのを待ち、エルミアはいやなことを考える。
――クレスカの儀式ではどうだったのだろう。
神を降ろした男性に対して、おなじようになっていなかったか。
「……まさか」
薄くエルミアは笑った。
自分は眠っていたのだ。なにも覚えていない。眠っていた人間が、明確な反応を返すことなど土台無理ではないか。
上掛けを引き寄せ、エルミアは目を閉じる。
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