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知らない時間

61:商人の勘

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「猪突猛進な我が皇女様は宝石姉妹に見張ってもらうことにして、対策を考えようかな」
「ですねぇ」
「しかしだ、シドン、どうして皇女も小生と一緒に呼んだんだい?」
「アケロン様にも皇女様の無茶を知っていただこうと思いまして」
頬杖をつき右ひざに左足を乗せるようにしたお行儀の悪いアケロンはシドンへ尋ねれば、シドンが予想外の返事をする物だから思わず立ち上がってしまった。
「まぁぁ!シドン!酷い!!」
「冗談ですよ。ルカが最初にこの奇妙さに気がついたのですから状況報告は当然でしょう」
「皇女様への義理立てってとこかな?」
「それもあります」
「『それ』と言うことはもう一つは?」
「私めの勘が言っているのです。『皇女がご存知だ』と」

ニイっと、初めて会った時よりも読めない笑みでシドンが私を見つめてくるので目を反らしておくと、アケロンが手を叩いて立ち上がった。さて、ここでのアケロンは私の味方をしてくれるのか、くれないのか予想もつかない。私に実害さえなければ、この賢者はどちらにでも転ぶでしょうし。いいえ、違うわね。実害があったとしてもわからないわ。過去での接点もないし。

「さすが未来の大商人だね。しかし皇女はこの件をご存知じゃないよ。毒の種類も知らなかったのだからね」
「ですか」
「さあ、皇女は先に帰っててもらおうかな?ここからは悪巧みの時間だから」
「えっ!?アケロン、でも私」
「17時の鐘が鳴ったら子供はお家へ帰りなさい」

アケロンがそう言って指をパチンと鳴らした瞬間、私の目の前にはシドンではなくアガタ…でもなく、仮面の目の部分から除き見える瞳を見開いているフルクトスが現れたのである。
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