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遡った時間
50:変わり始めた未来
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この場からは慣れたかったのだろうコラーロが早歩きでアールトスの方へ向かおうとしていると、彼女よりも先にニックスがアールトスに声をかけた。
「どうかなさいましたか」
「いいや、そのぅ…儂みたいなもんがお声がけをするのは申し訳ないんじゃが」
「構いませんよ。ただの雑談をしているだけですので」
ニックス!雑談って言ってしまうのね…。
私はその雑談で危うく陥れられそうになったのに……。以前の私なら絶対にカメオがある部屋に入れていたでしょうねぇ。
「それなら失礼いたします。庭にこのような物が落ちとってのぅ、お姫樣方の物かと思いまして…。メイドのどなたかにお渡ししようと思っておったのじゃ」
「これは…。貴方のお陰で雑談が無事終わりそうです。ーーちなみにこれはどちらで?」
「王宮の門すぐ側の茂み、ポップブッシュの側に落ちとったんでの」
「そうだったのですか。私に持ち主の心当たりがございますのでお渡ししておきましょう」
「ありがたい!儂みたいなもんはさっさとここから立ち去らせていただきますゆえ、お許しください」
「アールトス何を言ってるのです。皇女様はいつだっていらっしゃいって仰ってるのに!」
「おや、アガタ様いらしたのですかの」
「居りましたよ。すぐに声をかけてくだされば良いのに」
「いやいや、カエオレウムでは本来平民は王宮に入ってはならんのでな」
ははは、とアールトスは頭を掻きながらニックスの方を見て、口元に一本指を立ててに黙っておいてくれと伝えている。それを見たニックスは頷くと、足早にこちらの方へ歩きはじめた。そして口を開けば開く程に失言を繰り返しているオケアノスの前に立って、言葉を遮るのだった。
「殿下、お話中失礼いたします」
「なんだニックス、今は取り込み中だ。後にしろ」
「ですが、サラに関係しますし、今最も重要な話題かと思いますよ」
「ーー手短に言え」
「かしこまりました」
ニックスは仰々しいくらいのお辞儀をしてからサラの方へ向き直った。
「サラ、失くしたカメオはこれじゃないか?」
「まぁ!!凄いわニックス!!いつの間に皇女様のお部屋から取り返してくれたの?」
「とんでもないことを言うね。これは庭に落ちていたそうだよ。それも王宮の正門にね。ーーこれがどういう意味かわかるかい」
王宮の入り口・・・私は一応王妃候補としてここ、離れの宮殿に部屋を持っているから正門なんてここに来た日以来行っていないわね。つまりニックスの今の言葉は、暗に『皇女が対応することは出来ない』と皆の前で伝えてくれたのね。ちょっとまって、確か記憶が正しければ、正門って陛下の呼んだ招待客以外は使用しないはずじゃないかしら。晩餐会やエッセ侯爵のような寵臣とか親密な者しか使わない場所よね。
「まぁそうなのね!!先日はお父様と一緒に来ましたのでその時に落としたのかと思いますわ」
「なるほど!テンペスタス子爵なら父上の重臣であるから正門を使うだろうな!ニックスお手柄だな」
「…サラ、先日着けて王宮に着たのなら、何故皇女様が関係していると思ったのかい?それにメイド云々の下りは?」
「そう聞いた気がしたのですが…ルサルカ様、申し訳ございません。私の早とちりでしたわ…許して下さる?」
分が悪いと思ったらしく、サラはすぐさま私に上目遣いをしてそんな甘いことを言い始める。ここまで大騒ぎしておいて、それで済むと思えるその思考回路、大分ショートしているんじゃない。
「さすーー「勿論許すだろう!皇女はサラに対してこの間の失態がある。許し合う関係を築くことが大事ではないか?」
私の声を遮ったオケアノスが、私を睨みつけながらそう言ってくるので、微笑みで返した。
ここで反論でもすれば、また時間を無駄にするでしょう。今回の一連の出来事は私にプラスの出来事だったし。
「…当然ですわ。ーー交換条件のようで嫌ですが、先日の私の過ちも水に流して下さればここは水に流しましょう」
「勿論よ!私とルサルカ様の仲ではないですか!」
嬉しそうにそう言ってサラは私に抱きついて、それから、連れて来たメンツを連れてオケアノスと供に帰って行った。
残された私とコラーロが苦笑いをしていると、ドゥ伯爵夫人が大きなため息を吐き出している。
「はぁ~~~。カエオレウムの未来は暗いですわね。皇女様も呆れたでしょう?」
「全く、とは言いませんが…いえ、まあ。それよりも、先ほどは助け舟を出していただきありがとうございました。私やアガタが何を言っても水掛け論になってしまっていたでしょう」
「それこそ、私の私怨での発言ですよ。勝手なことを申し上げてしまい申し訳ございませんでした」
「私怨?ですか」
「ええ。身内のことでお恥ずかしいですが、私には姪がおりますの。その姪が、最近テンペスタス子爵令嬢とそのご友人のグループに入れてもらったそうなのですが…あまり良い扱いをされていないのです。どう見てもおかしなドレスを着ていたり、間抜けに見えるような化粧をしたり…。まるで、一時期のエッセ侯爵令嬢と同じです」
過去にもそのようなことはあったのかしら。もしかしたら私がセールビエンスをグループから抜け出させたのが、未来を変えてしまったのかしら。
セールビエンスの代わりにドゥ伯爵夫人の姪の方が、セールビエンスの過去の立ち位置に着いたと考えると、私のせいなのかもしれない。でもまだそんなことをやってるなんて、サラ達のグループは何をしたいのかしら。
「ああ、失礼いたしました。こんな愚痴を言う為にここに来たのではないのです。別の用件があり、皇女様のお部屋にお伺いしたかったのです」
「別の用件?」
「はい。あのような話があった手前お部屋に入れていただくのは避けた方がよろしいかと思いますので、こちらで申し上げさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ勿論よ」
この時期に過去の私には大きな出来事は何もなかった。やはり、未来が変わってきているのかもしれない。
「どうかなさいましたか」
「いいや、そのぅ…儂みたいなもんがお声がけをするのは申し訳ないんじゃが」
「構いませんよ。ただの雑談をしているだけですので」
ニックス!雑談って言ってしまうのね…。
私はその雑談で危うく陥れられそうになったのに……。以前の私なら絶対にカメオがある部屋に入れていたでしょうねぇ。
「それなら失礼いたします。庭にこのような物が落ちとってのぅ、お姫樣方の物かと思いまして…。メイドのどなたかにお渡ししようと思っておったのじゃ」
「これは…。貴方のお陰で雑談が無事終わりそうです。ーーちなみにこれはどちらで?」
「王宮の門すぐ側の茂み、ポップブッシュの側に落ちとったんでの」
「そうだったのですか。私に持ち主の心当たりがございますのでお渡ししておきましょう」
「ありがたい!儂みたいなもんはさっさとここから立ち去らせていただきますゆえ、お許しください」
「アールトス何を言ってるのです。皇女様はいつだっていらっしゃいって仰ってるのに!」
「おや、アガタ様いらしたのですかの」
「居りましたよ。すぐに声をかけてくだされば良いのに」
「いやいや、カエオレウムでは本来平民は王宮に入ってはならんのでな」
ははは、とアールトスは頭を掻きながらニックスの方を見て、口元に一本指を立ててに黙っておいてくれと伝えている。それを見たニックスは頷くと、足早にこちらの方へ歩きはじめた。そして口を開けば開く程に失言を繰り返しているオケアノスの前に立って、言葉を遮るのだった。
「殿下、お話中失礼いたします」
「なんだニックス、今は取り込み中だ。後にしろ」
「ですが、サラに関係しますし、今最も重要な話題かと思いますよ」
「ーー手短に言え」
「かしこまりました」
ニックスは仰々しいくらいのお辞儀をしてからサラの方へ向き直った。
「サラ、失くしたカメオはこれじゃないか?」
「まぁ!!凄いわニックス!!いつの間に皇女様のお部屋から取り返してくれたの?」
「とんでもないことを言うね。これは庭に落ちていたそうだよ。それも王宮の正門にね。ーーこれがどういう意味かわかるかい」
王宮の入り口・・・私は一応王妃候補としてここ、離れの宮殿に部屋を持っているから正門なんてここに来た日以来行っていないわね。つまりニックスの今の言葉は、暗に『皇女が対応することは出来ない』と皆の前で伝えてくれたのね。ちょっとまって、確か記憶が正しければ、正門って陛下の呼んだ招待客以外は使用しないはずじゃないかしら。晩餐会やエッセ侯爵のような寵臣とか親密な者しか使わない場所よね。
「まぁそうなのね!!先日はお父様と一緒に来ましたのでその時に落としたのかと思いますわ」
「なるほど!テンペスタス子爵なら父上の重臣であるから正門を使うだろうな!ニックスお手柄だな」
「…サラ、先日着けて王宮に着たのなら、何故皇女様が関係していると思ったのかい?それにメイド云々の下りは?」
「そう聞いた気がしたのですが…ルサルカ様、申し訳ございません。私の早とちりでしたわ…許して下さる?」
分が悪いと思ったらしく、サラはすぐさま私に上目遣いをしてそんな甘いことを言い始める。ここまで大騒ぎしておいて、それで済むと思えるその思考回路、大分ショートしているんじゃない。
「さすーー「勿論許すだろう!皇女はサラに対してこの間の失態がある。許し合う関係を築くことが大事ではないか?」
私の声を遮ったオケアノスが、私を睨みつけながらそう言ってくるので、微笑みで返した。
ここで反論でもすれば、また時間を無駄にするでしょう。今回の一連の出来事は私にプラスの出来事だったし。
「…当然ですわ。ーー交換条件のようで嫌ですが、先日の私の過ちも水に流して下さればここは水に流しましょう」
「勿論よ!私とルサルカ様の仲ではないですか!」
嬉しそうにそう言ってサラは私に抱きついて、それから、連れて来たメンツを連れてオケアノスと供に帰って行った。
残された私とコラーロが苦笑いをしていると、ドゥ伯爵夫人が大きなため息を吐き出している。
「はぁ~~~。カエオレウムの未来は暗いですわね。皇女様も呆れたでしょう?」
「全く、とは言いませんが…いえ、まあ。それよりも、先ほどは助け舟を出していただきありがとうございました。私やアガタが何を言っても水掛け論になってしまっていたでしょう」
「それこそ、私の私怨での発言ですよ。勝手なことを申し上げてしまい申し訳ございませんでした」
「私怨?ですか」
「ええ。身内のことでお恥ずかしいですが、私には姪がおりますの。その姪が、最近テンペスタス子爵令嬢とそのご友人のグループに入れてもらったそうなのですが…あまり良い扱いをされていないのです。どう見てもおかしなドレスを着ていたり、間抜けに見えるような化粧をしたり…。まるで、一時期のエッセ侯爵令嬢と同じです」
過去にもそのようなことはあったのかしら。もしかしたら私がセールビエンスをグループから抜け出させたのが、未来を変えてしまったのかしら。
セールビエンスの代わりにドゥ伯爵夫人の姪の方が、セールビエンスの過去の立ち位置に着いたと考えると、私のせいなのかもしれない。でもまだそんなことをやってるなんて、サラ達のグループは何をしたいのかしら。
「ああ、失礼いたしました。こんな愚痴を言う為にここに来たのではないのです。別の用件があり、皇女様のお部屋にお伺いしたかったのです」
「別の用件?」
「はい。あのような話があった手前お部屋に入れていただくのは避けた方がよろしいかと思いますので、こちらで申し上げさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ勿論よ」
この時期に過去の私には大きな出来事は何もなかった。やはり、未来が変わってきているのかもしれない。
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