27 / 111
遡った時間
26:無計画と言う名の計画
しおりを挟む
「とは言いましても、はっきり申し上げまして計画と言える程のものはないのです」
「あれ、そうなの?ーーそうなのですかな?」
「手紙に書かせた頂きました通り、幽閉されているフルクトス様へ王位継承者としても教育をしていただきたい、あなたが過去に教えて来た名だたる王達に匹敵する教育を与えて欲しい、それ以外いま出来る事がないのです」
「ほう。わざわざ王位継承者の教育をさせるというもんじゃから、ペルラ側に都合の良い王にすげ替えようと思っているのかと思ったのじゃが…違うみたいだねぇ」
「ペルラに都合が良いかは分からないけど、オケアノスに対する最大の復讐になると思うのよ。フルクトス様に直接お会いした事がないからどうなるか見当もついていないわ」
「くくっ。面白いのぅ…皇女様は。こーんな面白いことに小生を呼んでいただけて光栄だ」
「あのさぁ、アケロン様」
アケロンが体を振るわせて笑っているとトゥットが声をかけている。
「なんじゃ小僧」
「小僧じゃないですよ。トゥットと申します。一個聞いて良いですか?」
「小生への質問は高いぞ?くだらない事ならトゥットをペルラの海の底に送ってしまうよ」
「ちょっとした疑問なんだけど、なんで無理してそんな変に長老みたいな口調してるんですか?」
と、私も気になっていたことをスルッと言葉にすると、アケロンの動きがピシッと固まる。
なにやらマズい事を聞いたようだけど、アガタ達の方を見ると2人も気になっていたようでウンウンと頷いている。
「……トゥットは小生のこの話し方は変だと言うのかの?」
「うん。統一出来てなくて、所々で素が出ちゃってるし、なによりアケロン様の見かけに似合ってないよ」
「似合ってない…」
だめ押しのような言葉にアケロンは絶句している。これはフォローしないと本当にペルラの海に連れて行かれてしまうかもしれない。
「アッ、アケロン?あれですわよ、多分長く生きているから色々混ざってしまっているだけ」
「変か~。じゃあ止める!だって、結構頑張ってこの口調にしてたのに変って言われるなら無駄だし」
怒るかと思えば、そんな風に簡単に言い放つではないか。あまりにすぐに切り替えるので驚いていると、コラーロが質問を重ねた。
「頑張っていたと仰るということは、何か意図があっての事なのではないのですか?」
「いや?小生ってちょっと若く見えるらしくて、『300年以上生きてまーす』って信じてもらえないんだよね。だから言葉遣いだけでも長生きしてる人っぽくしてみたんだけど」
「似合ってないから止めた方が良いですよ!僕はそう思いました!」
「って、トゥットが言うから止めることにする」
「さようでございますか。…皇女様からは250年って聞きましたが、300年以上生きていらっしゃるんですか?」
「多分?150超えた辺りで数えるの止めちゃったから、確かじゃないけど。そんくらい」
「50年程度は誤差でございますね」
いやいや、結構長いでしょう。
「皆さん、本題に入ってもよろしいでしょうか?」
パンパンと手を叩いて皆の視線を向ける。
「良いよ~皇女様はただフルクトス様に後継者としての知識を与えたいってことでしょう?それなら構わないよ。ゼロから何かを教えられるって始めてだし」
「ゼロどころか、完全に獣のようかもしれません。赤子の頃から牢獄に入れられ仮面を付けるように強要されて生きているのですから。それに居場所は分かりますが、アケロンが会いに行けるようになるにはどれほどかかるのかもわかりません」
そう言うと、アケロンは不思議そうに首を傾げている。
私なにか変な事を言ったかしら。
「皇女様、小生が今ここにどうやって来たのか覚えている?」
「あ…」
気がついたらいらっしゃっていましたね。
つまり、アケロンには塀も壁も門番も関係ない。場所さえ分かれば入って行けてしまうのだ。
「問題なのは見張りが多いかどうかくらいかな。見張りが沢山いたら小生が言って勉強なんてし始めたら即対策されるだろうしね」
「それは避けていただきたいですね」
「だから皇女様にはどうにかして牢屋の状況を知ってもらいたい。もし見張りが手薄であればそのまま小生が入って状況を確認するなり、誰か連れて行くなりするからさ」
「連れて行く事もできるのですか!?」
考えてもいなかったことに思わず声を張り上げてしまえば、アケロン含めその場の全員が目を丸くしているが、このまま話を進めてしまいましょう。
「連れて行っていただけると言う事は、私をここから出していただくことも」
「ああそう言う事ね。出来るよ。行き先さえ決めてくれればかんたーん!」
「ありがとうございます!アガタ、やはりその枕を私の姿に見えるようにして、コラーロはこの部屋に入ったら私の声が聞こえるようにしておいて」
「「かしこまりました」」
よし、顔を見せないという理由もある事ですし2~3日くらい外に出て動き回ってみましょう。
「あれ、そうなの?ーーそうなのですかな?」
「手紙に書かせた頂きました通り、幽閉されているフルクトス様へ王位継承者としても教育をしていただきたい、あなたが過去に教えて来た名だたる王達に匹敵する教育を与えて欲しい、それ以外いま出来る事がないのです」
「ほう。わざわざ王位継承者の教育をさせるというもんじゃから、ペルラ側に都合の良い王にすげ替えようと思っているのかと思ったのじゃが…違うみたいだねぇ」
「ペルラに都合が良いかは分からないけど、オケアノスに対する最大の復讐になると思うのよ。フルクトス様に直接お会いした事がないからどうなるか見当もついていないわ」
「くくっ。面白いのぅ…皇女様は。こーんな面白いことに小生を呼んでいただけて光栄だ」
「あのさぁ、アケロン様」
アケロンが体を振るわせて笑っているとトゥットが声をかけている。
「なんじゃ小僧」
「小僧じゃないですよ。トゥットと申します。一個聞いて良いですか?」
「小生への質問は高いぞ?くだらない事ならトゥットをペルラの海の底に送ってしまうよ」
「ちょっとした疑問なんだけど、なんで無理してそんな変に長老みたいな口調してるんですか?」
と、私も気になっていたことをスルッと言葉にすると、アケロンの動きがピシッと固まる。
なにやらマズい事を聞いたようだけど、アガタ達の方を見ると2人も気になっていたようでウンウンと頷いている。
「……トゥットは小生のこの話し方は変だと言うのかの?」
「うん。統一出来てなくて、所々で素が出ちゃってるし、なによりアケロン様の見かけに似合ってないよ」
「似合ってない…」
だめ押しのような言葉にアケロンは絶句している。これはフォローしないと本当にペルラの海に連れて行かれてしまうかもしれない。
「アッ、アケロン?あれですわよ、多分長く生きているから色々混ざってしまっているだけ」
「変か~。じゃあ止める!だって、結構頑張ってこの口調にしてたのに変って言われるなら無駄だし」
怒るかと思えば、そんな風に簡単に言い放つではないか。あまりにすぐに切り替えるので驚いていると、コラーロが質問を重ねた。
「頑張っていたと仰るということは、何か意図があっての事なのではないのですか?」
「いや?小生ってちょっと若く見えるらしくて、『300年以上生きてまーす』って信じてもらえないんだよね。だから言葉遣いだけでも長生きしてる人っぽくしてみたんだけど」
「似合ってないから止めた方が良いですよ!僕はそう思いました!」
「って、トゥットが言うから止めることにする」
「さようでございますか。…皇女様からは250年って聞きましたが、300年以上生きていらっしゃるんですか?」
「多分?150超えた辺りで数えるの止めちゃったから、確かじゃないけど。そんくらい」
「50年程度は誤差でございますね」
いやいや、結構長いでしょう。
「皆さん、本題に入ってもよろしいでしょうか?」
パンパンと手を叩いて皆の視線を向ける。
「良いよ~皇女様はただフルクトス様に後継者としての知識を与えたいってことでしょう?それなら構わないよ。ゼロから何かを教えられるって始めてだし」
「ゼロどころか、完全に獣のようかもしれません。赤子の頃から牢獄に入れられ仮面を付けるように強要されて生きているのですから。それに居場所は分かりますが、アケロンが会いに行けるようになるにはどれほどかかるのかもわかりません」
そう言うと、アケロンは不思議そうに首を傾げている。
私なにか変な事を言ったかしら。
「皇女様、小生が今ここにどうやって来たのか覚えている?」
「あ…」
気がついたらいらっしゃっていましたね。
つまり、アケロンには塀も壁も門番も関係ない。場所さえ分かれば入って行けてしまうのだ。
「問題なのは見張りが多いかどうかくらいかな。見張りが沢山いたら小生が言って勉強なんてし始めたら即対策されるだろうしね」
「それは避けていただきたいですね」
「だから皇女様にはどうにかして牢屋の状況を知ってもらいたい。もし見張りが手薄であればそのまま小生が入って状況を確認するなり、誰か連れて行くなりするからさ」
「連れて行く事もできるのですか!?」
考えてもいなかったことに思わず声を張り上げてしまえば、アケロン含めその場の全員が目を丸くしているが、このまま話を進めてしまいましょう。
「連れて行っていただけると言う事は、私をここから出していただくことも」
「ああそう言う事ね。出来るよ。行き先さえ決めてくれればかんたーん!」
「ありがとうございます!アガタ、やはりその枕を私の姿に見えるようにして、コラーロはこの部屋に入ったら私の声が聞こえるようにしておいて」
「「かしこまりました」」
よし、顔を見せないという理由もある事ですし2~3日くらい外に出て動き回ってみましょう。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
転生悪役王女は平民希望です!
くしゃみ。
恋愛
――あ。わたし王女じゃない。
そう気付いたのは三歳の時初めて鏡で自分の顔を見た時だった。
少女漫画の世界。
そしてわたしは取り違いで王女になってしまい、いつか本当の王女が城に帰ってきたときに最終的に処刑されてしまうことを知っているので平民に戻ろうと決意した。…したのに何故かいろんな人が止めてくるんですけど?
平民になりたいので邪魔しないでください!
2018.11.10 ホットランキングで1位でした。ありがとうございます。
婚約者を陥れ処刑した王子が、自らの言葉によって永遠をループすることになる物語
刹那玻璃
恋愛
『世界を救って下さい。
シチュエーション:
世界はタイムリープのループにハマっていた。その周期、たったの5秒。そう、世界は同じ5秒を延々と繰り返していたのである。これだけ周期が短いと、結構な人数が気付いているのだが、たったの5秒では何も出来ずにいた』
を見て考えたものです。
悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢と、罪もない公爵令嬢を陥れた王子とその恋人の受けた報いです。
第12回恋愛小説大賞エントリー中です。
本当にありがとうございます。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
妻とは死別する予定ですので、悪しからず。
砂山一座
恋愛
我儘な姫として軽んじられるクララベルと、いわくつきのバロッキー家のミスティ。
仲の悪い婚約者たちはお互いに利害だけで結ばれた婚約者を演じる。
――と思っているのはクララベルだけで、ミスティは初恋のクララベルが可愛くて仕方がない。
偽装結婚は、ミスティを亡命させることを条件として結ばれた契約なのに、徐々に別れがたくなっていく二人。愛の名のもとにすれ違っていく二人が、互いの幸福のために最善を尽くす愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる