53 / 62
私の主人、この経緯については生涯知り得る機会はない(お伝えする事もない)
しおりを挟む
「フォジュロン!私たち命で償わなくても良いかも!!」
「本当か!」
ペルソンはそう叫ぶと、侯爵達が話している中に割って入って行きました。
「ちょっとちょっと、悲観的になるのはまだ早いかもしれないです!」
「どういう事?」
諦めるようにさめざめと涙を流している侯爵夫人はハンカチで鼻をかみながらで聞き返されました。
「さっきのガスピアージェの息子さん、エノーム君の案を採用しましょう」
「純血のエルフ様、それは、私の息子に死ねと仰っているのですか?」
「本人は死ぬつもりはないみたいだよ。それにね、貴方を見て気がついたんだけど、貴方よりも息子さんの方が僕らに近いんだ!」
「「「は?」」」
はしゃぐように放った言葉に、ペルソン以外の全員が声を揃えました。
冗談でも止めていただきたい。
貴方に近いなんてこれ以上ない侮辱です。
「フォジュロン、ペルソンは何を言ってるんだ?」
「侯爵様、申し訳ねぇですがワシにも分からんです」
「私の息子が貴方に近いと?どういうことでしょうか?確かに息子は魔術が得意ではありますが……」
「だーかーらぁ、ガスピアージェの家の初代って僕らと同族なんだよね。息子さんには子爵よりも祖先の血が強く残ってるように視える」
「ーー隔世遺伝でしょうか?」
「それかも!いや、今まで君しか見ていなかったからガスピアージェ家はみんなそうなのかと思ってたんだけどさ、子爵を見たらフッツーの人間なんだもん」
「私は人間ではないと仰るのでしょうか?」
「ほとんど人間だけど、純粋な人間に比べれば魔力が大分強い。それに寿命も長い。今まで視てても長いなーとは思ってたんだけど、家系的にそうなのかなって思ってたんだよね☆ で、その親が禁じてるんならそれ相応のリスクと思ってたんだけどさ、子爵の定規と息子さんの定規は違うみたい」
その言葉にようやく合点がいったとフォジュロンが付け足し始めました。
「つまり、今まではガスピアージェの坊ちゃんしか見てなかったから『ガスピアージェ家の普通』は『人間の普通』とは違うと思っとって、命を削る事に問題があると思ってたが、子爵を見たら他の人間と変わりなく、ガスピアージェの坊ちゃんだけが俺たちに近い状態なのが分かったってことか」
「そう!さっすがフォジュロン!」
「普通の人間でありゃ命をかけねぇと出来ないレベルの事が、ガスピアージェの坊ちゃんなら」
「そうそう!人より多い分で賄えるはず!」
それからペルソンは私の方を振り返りました。
「人と同じだけ生きられれば結構です。長く生きられるとしても、1人で生きる時間が増えるなんて願い下げです」
「ん?私なら君よりもずっと長い寿命だから全然一緒に楽しんであげるよ?」
「素晴らしい提案ですね」
私の返答にペルソンは肩をすくめると、そのまま侯爵へ話を続けました。
「ということで、君たちが心配していたエノーム君の命問題は解決って思って良いんじゃないでしょうか」
「エノームよ、お前自身はそれで良いのか?サーヴィユも、嫌なら断って良いのだ。寿命は金では買えないものだ。せっかくの長寿をわざわざーー」
「侯爵、今も申し上げましたが、人と同じだけ生きられれば私は十分です。何よりもシニフェ様やプラン、父上や皆さんと同じ時を過ごせれば私は幸せなのです。今までの人生はずっとシニフェ様とプランと一緒だったのです。シニフェ様が居ない孤独な人生も長寿はいりません。父上、私は自分の意志で自分の命を使いたいのです」
「そうか。……それがエノームの選択なら、私からはもう何も言わないよ。思う通りにしなさい」
父上の答えを聞くとペルソンはすぐに移動する為になにやら魔法陣のような物を書き始めました。
侯爵家の絨毯の上に直接、という点は彼には全く問題ではないのでしょう。
そして当然のように私とプランにそこの陣の中に入るように手招きをして、侯爵達には入らないように告げました。
「侯爵には残って、してもらいたい事がふたつあるんだ」
「なんだ。私に出来る事があれば何でもしよう」
「まず一つめは、グロワ家の息子さんに手伝ってもらうように向こうの家に使いを送って欲しい。あの子じゃなきゃ槍が使えないから」
これ、と空中に手を突っ込むような動きをしますと、どこからともなく赤い槍が現れました。
「できればな、その子には報償みてェなもんをあげてくれネェか?」
フォジュロン氏の補足に侯爵が聞き返しました。
「本来でありゃ、その子は英雄になれる力があんだが、おそらくアルダーズを還すことで力がなくなっちまう。キツイ言い方をすりゃ、グランメションの坊ちゃんを助ける為に、才能を開花させる前に消化しちまうようなもんだ」
侯爵はその言葉を聞いて力強く頷きました。
「勿論だ。ふたつめはなんだ」
その問いかけにペルソンが侯爵夫人の方へ視線むけると、侯爵夫人は扇を広げて顔を背け私は何も聞いていないと言う顔を浮かべノワールを連れて部屋の外へ出て行きました。
「王族や隣国にはこの件を知られないようにしたい」
「ほう。なぜだ?」
「侯爵家のためってとこかな」
「わかった。努力しよう」
と侯爵が答えて頷くのとほぼ同時に、ペルソンは指を鳴らしました。
つまり、ペルソンは侯爵の返事は求めておらず、彼が口にした時点で侯爵が実施するのは確定事項という意識なのでしょう。
この対応一つとっても、侯爵家はペルソンとの雇用関係を契約満了とすべきと思います。
「本当か!」
ペルソンはそう叫ぶと、侯爵達が話している中に割って入って行きました。
「ちょっとちょっと、悲観的になるのはまだ早いかもしれないです!」
「どういう事?」
諦めるようにさめざめと涙を流している侯爵夫人はハンカチで鼻をかみながらで聞き返されました。
「さっきのガスピアージェの息子さん、エノーム君の案を採用しましょう」
「純血のエルフ様、それは、私の息子に死ねと仰っているのですか?」
「本人は死ぬつもりはないみたいだよ。それにね、貴方を見て気がついたんだけど、貴方よりも息子さんの方が僕らに近いんだ!」
「「「は?」」」
はしゃぐように放った言葉に、ペルソン以外の全員が声を揃えました。
冗談でも止めていただきたい。
貴方に近いなんてこれ以上ない侮辱です。
「フォジュロン、ペルソンは何を言ってるんだ?」
「侯爵様、申し訳ねぇですがワシにも分からんです」
「私の息子が貴方に近いと?どういうことでしょうか?確かに息子は魔術が得意ではありますが……」
「だーかーらぁ、ガスピアージェの家の初代って僕らと同族なんだよね。息子さんには子爵よりも祖先の血が強く残ってるように視える」
「ーー隔世遺伝でしょうか?」
「それかも!いや、今まで君しか見ていなかったからガスピアージェ家はみんなそうなのかと思ってたんだけどさ、子爵を見たらフッツーの人間なんだもん」
「私は人間ではないと仰るのでしょうか?」
「ほとんど人間だけど、純粋な人間に比べれば魔力が大分強い。それに寿命も長い。今まで視てても長いなーとは思ってたんだけど、家系的にそうなのかなって思ってたんだよね☆ で、その親が禁じてるんならそれ相応のリスクと思ってたんだけどさ、子爵の定規と息子さんの定規は違うみたい」
その言葉にようやく合点がいったとフォジュロンが付け足し始めました。
「つまり、今まではガスピアージェの坊ちゃんしか見てなかったから『ガスピアージェ家の普通』は『人間の普通』とは違うと思っとって、命を削る事に問題があると思ってたが、子爵を見たら他の人間と変わりなく、ガスピアージェの坊ちゃんだけが俺たちに近い状態なのが分かったってことか」
「そう!さっすがフォジュロン!」
「普通の人間でありゃ命をかけねぇと出来ないレベルの事が、ガスピアージェの坊ちゃんなら」
「そうそう!人より多い分で賄えるはず!」
それからペルソンは私の方を振り返りました。
「人と同じだけ生きられれば結構です。長く生きられるとしても、1人で生きる時間が増えるなんて願い下げです」
「ん?私なら君よりもずっと長い寿命だから全然一緒に楽しんであげるよ?」
「素晴らしい提案ですね」
私の返答にペルソンは肩をすくめると、そのまま侯爵へ話を続けました。
「ということで、君たちが心配していたエノーム君の命問題は解決って思って良いんじゃないでしょうか」
「エノームよ、お前自身はそれで良いのか?サーヴィユも、嫌なら断って良いのだ。寿命は金では買えないものだ。せっかくの長寿をわざわざーー」
「侯爵、今も申し上げましたが、人と同じだけ生きられれば私は十分です。何よりもシニフェ様やプラン、父上や皆さんと同じ時を過ごせれば私は幸せなのです。今までの人生はずっとシニフェ様とプランと一緒だったのです。シニフェ様が居ない孤独な人生も長寿はいりません。父上、私は自分の意志で自分の命を使いたいのです」
「そうか。……それがエノームの選択なら、私からはもう何も言わないよ。思う通りにしなさい」
父上の答えを聞くとペルソンはすぐに移動する為になにやら魔法陣のような物を書き始めました。
侯爵家の絨毯の上に直接、という点は彼には全く問題ではないのでしょう。
そして当然のように私とプランにそこの陣の中に入るように手招きをして、侯爵達には入らないように告げました。
「侯爵には残って、してもらいたい事がふたつあるんだ」
「なんだ。私に出来る事があれば何でもしよう」
「まず一つめは、グロワ家の息子さんに手伝ってもらうように向こうの家に使いを送って欲しい。あの子じゃなきゃ槍が使えないから」
これ、と空中に手を突っ込むような動きをしますと、どこからともなく赤い槍が現れました。
「できればな、その子には報償みてェなもんをあげてくれネェか?」
フォジュロン氏の補足に侯爵が聞き返しました。
「本来でありゃ、その子は英雄になれる力があんだが、おそらくアルダーズを還すことで力がなくなっちまう。キツイ言い方をすりゃ、グランメションの坊ちゃんを助ける為に、才能を開花させる前に消化しちまうようなもんだ」
侯爵はその言葉を聞いて力強く頷きました。
「勿論だ。ふたつめはなんだ」
その問いかけにペルソンが侯爵夫人の方へ視線むけると、侯爵夫人は扇を広げて顔を背け私は何も聞いていないと言う顔を浮かべノワールを連れて部屋の外へ出て行きました。
「王族や隣国にはこの件を知られないようにしたい」
「ほう。なぜだ?」
「侯爵家のためってとこかな」
「わかった。努力しよう」
と侯爵が答えて頷くのとほぼ同時に、ペルソンは指を鳴らしました。
つまり、ペルソンは侯爵の返事は求めておらず、彼が口にした時点で侯爵が実施するのは確定事項という意識なのでしょう。
この対応一つとっても、侯爵家はペルソンとの雇用関係を契約満了とすべきと思います。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
死に戻り悪役令息は二人の恋を応援…するはずだった…。
ましろ
BL
タイトルの通り悪役令息が主人公です。
悪役令息(主人公)…トワ。少しお馬鹿な子(予定)
ヒロイン…リュカ。ギャップのある子(予定)
攻め…レオンハルト。ヤンデレ
攻めのことが大好きでヤンデレだったトワが死に戻りをして、突然前世の記憶を思い出します。
そこから、段々とレオンハルトとの関係が変わっていきます。
感想くれたら作者は大喜びします(笑)
文章が拙く、処女作なのですが、暖かく見守ってください。(作者学生なので多めにみて欲しいです…)
乙女ゲーの隠しキャラに転生したからメインストーリーとは関係なく平和に過ごそうと思う
ゆん
BL
乙女ゲーム「あなただけの光になる」は剣と魔法のファンタジー世界で舞台は貴族たちが主に通う魔法学園
魔法で男でも妊娠できるようになるので同性婚も一般的
生まれ持った属性の魔法しか使えない
その中でも光、闇属性は珍しい世界__
そんなところに車に轢かれて今流行りの異世界転生しちゃったごく普通の男子高校生、佐倉真央。
そしてその転生先はすべてのエンドを回収しないと出てこず、攻略も激ムズな隠しキャラ、サフィラス・ローウェルだった!!
サフィラスは間違った攻略をしてしまうと死亡エンドや闇堕ちエンドなど最悪なシナリオも多いという情報があるがサフィラスが攻略対象だとわかるまではただのモブだからメインストーリーとは関係なく平和に生きていこうと思う。
__________________
誰と結ばれるかはまだ未定ですが、主人公受けは固定です!
初投稿で拙い文章ですが読んでもらえると嬉しいです。
誤字脱字など多いと思いますがコメントで教えて下さると大変助かります…!
王太子殿下は悪役令息のいいなり
白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」
そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。
しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!?
スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。
ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。
書き終わっているので完結保証です。
異世界転移したら豊穣の神でした ~イケメン王子たちが僕の夫の座を奪い合っています~
奈織
BL
勉強も運動もまるでダメなポンコツの僕が階段で足を滑らせると、そこは異世界でした。
どうやら僕は数十年に一度降臨する豊穣の神様らしくて、僕が幸せだと恵みの雨が降るらしい。
しかも豊穣神は男でも妊娠できて、生まれた子が次代の王になるってマジですか…?
才色兼備な3人の王子様が僕の夫候補らしい。
あの手この手でアプローチされても、ポンコツの僕が誰かを選ぶなんて出来ないです…。
そんな呑気で天然な豊穣神(受け)と、色々な事情を抱えながら豊穣神の夫になりたい3人の王子様(攻め)の物語。
ハーレムものです。
血迷わないでください義兄さん!悪役令息の弟に転生したので、兄と一緒に冒険者になります
さえ
BL
BLです。
トラック転生を果たした僕。気がついたら前世でプレイしていた乙女ゲームに!?
僕は作品中でもモブ中のモブ、悪役令息の弟なのか。
そうだ。悪役令息役である兄を連れて冒険者になろう。そしたら学校に通わないからゲームは始まらなくて断罪イベントにならなくて済むじゃん。
に、兄さん!?僕は弟でしかも男です!血迷わないでください!!
ひょっとして兄さんはツンデレですか?
え!兄さんじゃなくて義兄なの!?なら、、、
、、、なんで、、、、なんで学校に通うことになってるの!?世界の強制力ってやつか!?
気楽に読めるを目指してます。
※R-18シーンは☆マークつけます
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる