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塔の戦い

魔法博士

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冒険者ギルドの本来の目的は、冒険者の育成と支援、そして冒険者個人の生命と財産の保護である。それに付属してあらゆる業務を行っているのだが、クエストやミッションの管理や斡旋などもその業務の一つであった。

ルアッカは、クエスト発注の書類を記入していた。相変わらず紋次郎は文字が読み書きできない。本人も覚えないととは考えていて、たまにリンスに習ったりしているのだが、まだまだ実践で使えるレベルではなかった。

「紋次郎どの、報酬はおいくらに設定しますか?」
「あ・・そうだね、相場がわからないんだけど・・」
頭をかきながら紋次郎はゆるい笑顔でルアッカに伝える。

「そうですね・・今回の冒険の難易度ですと、英雄級冒険者以上の実力が求められますので、少なくとも2000万ゴルドくらいは必要かと・・」

「た・・高いね・・じゃあ、2000万でお願いします・・」

必要な内容を記入すると、冒険者ギルドの受付にそれを提出した。すると受付の猫族《キャットピル》の中年女性が、記入内容を見て話しかけてくる。

「お役様、申し訳ないですがこちらのご依頼を、今、お受けする冒険者いないと思います」
「ええ、まだ安いですか?」
「いえ、この難易度のクエストを受注できる冒険者が一人もいないのです」
それを聞いたルアッカが少し睨むようにその受付を見て、淡々と問いただす。
「もう少し詳しく話してもらえますか、いないとはどういう意味? 今この街に滞在していないってこと?」
「いえ・・今、この街には10人の英雄級冒険者と、1人の伝説級冒険者がいます。しかし、その全てが一つのクエストに参加していまして・・」

「なるほど・・先約があるのですね」
「はい・・残念ながら・・」

「紋次郎どの、どうしますか?」
俺は受付に、そのクエストの話をもう少し詳しく聞くことにした。
「そのクエストですが、どういったものですかね? もう出発しましたか?」
「クエストはエラスラの塔の攻略パーティーです。二日前に出発していますよ」

「そうですか、ありがとうございます」

俺は少し考えて、ルアッカに考えを話してみた。
「ルアッカさん、俺はそのパーティーに同行させてもらおうと思うのですが・・・」
「しかし、パーティーはもう出発していると言っていましたが・・・」
「だからすぐに追いかけていこうかと・・・」
「紋次郎どの、それは危険です、一人でエラスラの塔に入るなんて」

「二日だったらそんなに進んでないと思うし、どっちみち俺は行かないといけないから」
「・・・わかりました、でもすぐにはダメです。最低限の準備だけはしていってください」
「うん、わかった」

確かに何の準備もしないで、高難易度のダンジョンに突入するのは自殺行為である。俺はまずは魔法のリストを作ろうと、冒険者ギルドに紹介してもらった、魔法全般に詳しい魔法博士の元へ訪れていた。

「わしに何か用かな、これでも忙しいものでな、用があるなら簡単に頼むぞ」
魔法博士はカジムさんという方で、高レベルの賢者でもある。魔法に精通した彼に、使える魔法を教えてもらえるようにお願いした。

「使える魔法と言っても用途によって随分違うと思うが、どうなんじゃ」
「そうですね、色々なジャンルの魔法をそれぞれお聞きしたいと思います。例えば攻撃魔法、回復魔法、支援魔法、防御魔法などのジャンルで一番使えるものを一つずつ教えていただければ嬉しいです」
「ふむふむ、しかし、聞いたところで魔法には相性や消費魔力、必要キャパなど使用条件などもあるし、聞いただけでは意味がないと思うのじゃがな」

「ええと、とりあえずそういった条件などは無視して、一番強力なやつを教えてもらえますか」
ニャン太の話だと、無条件でほとんどの魔法が使えるってことだがら、そんな条件とかは無視して大丈夫だと思う。なので単純に強力な魔法を聞いておけば問題なさそうである。

「よかろう、そんな単純な話であれば、各、ジャンル毎に、わしが最強だと思う魔法をお教えしよう」

それから想像以上に長いカジムさんの話が始まった。どうやらこの人、こういった議論が大好きなようで、どうしてこの魔法が最強なのかと言った理屈っぽい話を長々と話してくれた。
「やはり万能属性の攻撃魔法は外せんぞ、あらゆる敵に効果がある上に、絶対的に防ぐ魔法や耐性が存在せんのじゃ、困った時にはこれを使うと良いじゃろう・・」

俺はその話を紙にメモしていき、一覧に書き留めた。と言っても余計な話はメモせずに、魔法名と簡単な効果を書いただけである。
「博士、ありがとうございます」
「まあ、また話を聞きたくなったらいつでもきなさい」

その後、食料や消費アイテム、冒険に役にたつマジックアイテムを幾つか購入して、宿屋へ向かうことになった。俺はそのまま出発するつもりでいたのだけど、ルアッカさんに激しく説得されて、今日は宿で泊まって明日の朝にエラスラの塔へと向くことになったのであった。

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