124 / 200
塔の戦い
魔法博士
しおりを挟む
冒険者ギルドの本来の目的は、冒険者の育成と支援、そして冒険者個人の生命と財産の保護である。それに付属してあらゆる業務を行っているのだが、クエストやミッションの管理や斡旋などもその業務の一つであった。
ルアッカは、クエスト発注の書類を記入していた。相変わらず紋次郎は文字が読み書きできない。本人も覚えないととは考えていて、たまにリンスに習ったりしているのだが、まだまだ実践で使えるレベルではなかった。
「紋次郎どの、報酬はおいくらに設定しますか?」
「あ・・そうだね、相場がわからないんだけど・・」
頭をかきながら紋次郎はゆるい笑顔でルアッカに伝える。
「そうですね・・今回の冒険の難易度ですと、英雄級冒険者以上の実力が求められますので、少なくとも2000万ゴルドくらいは必要かと・・」
「た・・高いね・・じゃあ、2000万でお願いします・・」
必要な内容を記入すると、冒険者ギルドの受付にそれを提出した。すると受付の猫族《キャットピル》の中年女性が、記入内容を見て話しかけてくる。
「お役様、申し訳ないですがこちらのご依頼を、今、お受けする冒険者いないと思います」
「ええ、まだ安いですか?」
「いえ、この難易度のクエストを受注できる冒険者が一人もいないのです」
それを聞いたルアッカが少し睨むようにその受付を見て、淡々と問いただす。
「もう少し詳しく話してもらえますか、いないとはどういう意味? 今この街に滞在していないってこと?」
「いえ・・今、この街には10人の英雄級冒険者と、1人の伝説級冒険者がいます。しかし、その全てが一つのクエストに参加していまして・・」
「なるほど・・先約があるのですね」
「はい・・残念ながら・・」
「紋次郎どの、どうしますか?」
俺は受付に、そのクエストの話をもう少し詳しく聞くことにした。
「そのクエストですが、どういったものですかね? もう出発しましたか?」
「クエストはエラスラの塔の攻略パーティーです。二日前に出発していますよ」
「そうですか、ありがとうございます」
俺は少し考えて、ルアッカに考えを話してみた。
「ルアッカさん、俺はそのパーティーに同行させてもらおうと思うのですが・・・」
「しかし、パーティーはもう出発していると言っていましたが・・・」
「だからすぐに追いかけていこうかと・・・」
「紋次郎どの、それは危険です、一人でエラスラの塔に入るなんて」
「二日だったらそんなに進んでないと思うし、どっちみち俺は行かないといけないから」
「・・・わかりました、でもすぐにはダメです。最低限の準備だけはしていってください」
「うん、わかった」
確かに何の準備もしないで、高難易度のダンジョンに突入するのは自殺行為である。俺はまずは魔法のリストを作ろうと、冒険者ギルドに紹介してもらった、魔法全般に詳しい魔法博士の元へ訪れていた。
「わしに何か用かな、これでも忙しいものでな、用があるなら簡単に頼むぞ」
魔法博士はカジムさんという方で、高レベルの賢者でもある。魔法に精通した彼に、使える魔法を教えてもらえるようにお願いした。
「使える魔法と言っても用途によって随分違うと思うが、どうなんじゃ」
「そうですね、色々なジャンルの魔法をそれぞれお聞きしたいと思います。例えば攻撃魔法、回復魔法、支援魔法、防御魔法などのジャンルで一番使えるものを一つずつ教えていただければ嬉しいです」
「ふむふむ、しかし、聞いたところで魔法には相性や消費魔力、必要キャパなど使用条件などもあるし、聞いただけでは意味がないと思うのじゃがな」
「ええと、とりあえずそういった条件などは無視して、一番強力なやつを教えてもらえますか」
ニャン太の話だと、無条件でほとんどの魔法が使えるってことだがら、そんな条件とかは無視して大丈夫だと思う。なので単純に強力な魔法を聞いておけば問題なさそうである。
「よかろう、そんな単純な話であれば、各、ジャンル毎に、わしが最強だと思う魔法をお教えしよう」
それから想像以上に長いカジムさんの話が始まった。どうやらこの人、こういった議論が大好きなようで、どうしてこの魔法が最強なのかと言った理屈っぽい話を長々と話してくれた。
「やはり万能属性の攻撃魔法は外せんぞ、あらゆる敵に効果がある上に、絶対的に防ぐ魔法や耐性が存在せんのじゃ、困った時にはこれを使うと良いじゃろう・・」
俺はその話を紙にメモしていき、一覧に書き留めた。と言っても余計な話はメモせずに、魔法名と簡単な効果を書いただけである。
「博士、ありがとうございます」
「まあ、また話を聞きたくなったらいつでもきなさい」
その後、食料や消費アイテム、冒険に役にたつマジックアイテムを幾つか購入して、宿屋へ向かうことになった。俺はそのまま出発するつもりでいたのだけど、ルアッカさんに激しく説得されて、今日は宿で泊まって明日の朝にエラスラの塔へと向くことになったのであった。
ルアッカは、クエスト発注の書類を記入していた。相変わらず紋次郎は文字が読み書きできない。本人も覚えないととは考えていて、たまにリンスに習ったりしているのだが、まだまだ実践で使えるレベルではなかった。
「紋次郎どの、報酬はおいくらに設定しますか?」
「あ・・そうだね、相場がわからないんだけど・・」
頭をかきながら紋次郎はゆるい笑顔でルアッカに伝える。
「そうですね・・今回の冒険の難易度ですと、英雄級冒険者以上の実力が求められますので、少なくとも2000万ゴルドくらいは必要かと・・」
「た・・高いね・・じゃあ、2000万でお願いします・・」
必要な内容を記入すると、冒険者ギルドの受付にそれを提出した。すると受付の猫族《キャットピル》の中年女性が、記入内容を見て話しかけてくる。
「お役様、申し訳ないですがこちらのご依頼を、今、お受けする冒険者いないと思います」
「ええ、まだ安いですか?」
「いえ、この難易度のクエストを受注できる冒険者が一人もいないのです」
それを聞いたルアッカが少し睨むようにその受付を見て、淡々と問いただす。
「もう少し詳しく話してもらえますか、いないとはどういう意味? 今この街に滞在していないってこと?」
「いえ・・今、この街には10人の英雄級冒険者と、1人の伝説級冒険者がいます。しかし、その全てが一つのクエストに参加していまして・・」
「なるほど・・先約があるのですね」
「はい・・残念ながら・・」
「紋次郎どの、どうしますか?」
俺は受付に、そのクエストの話をもう少し詳しく聞くことにした。
「そのクエストですが、どういったものですかね? もう出発しましたか?」
「クエストはエラスラの塔の攻略パーティーです。二日前に出発していますよ」
「そうですか、ありがとうございます」
俺は少し考えて、ルアッカに考えを話してみた。
「ルアッカさん、俺はそのパーティーに同行させてもらおうと思うのですが・・・」
「しかし、パーティーはもう出発していると言っていましたが・・・」
「だからすぐに追いかけていこうかと・・・」
「紋次郎どの、それは危険です、一人でエラスラの塔に入るなんて」
「二日だったらそんなに進んでないと思うし、どっちみち俺は行かないといけないから」
「・・・わかりました、でもすぐにはダメです。最低限の準備だけはしていってください」
「うん、わかった」
確かに何の準備もしないで、高難易度のダンジョンに突入するのは自殺行為である。俺はまずは魔法のリストを作ろうと、冒険者ギルドに紹介してもらった、魔法全般に詳しい魔法博士の元へ訪れていた。
「わしに何か用かな、これでも忙しいものでな、用があるなら簡単に頼むぞ」
魔法博士はカジムさんという方で、高レベルの賢者でもある。魔法に精通した彼に、使える魔法を教えてもらえるようにお願いした。
「使える魔法と言っても用途によって随分違うと思うが、どうなんじゃ」
「そうですね、色々なジャンルの魔法をそれぞれお聞きしたいと思います。例えば攻撃魔法、回復魔法、支援魔法、防御魔法などのジャンルで一番使えるものを一つずつ教えていただければ嬉しいです」
「ふむふむ、しかし、聞いたところで魔法には相性や消費魔力、必要キャパなど使用条件などもあるし、聞いただけでは意味がないと思うのじゃがな」
「ええと、とりあえずそういった条件などは無視して、一番強力なやつを教えてもらえますか」
ニャン太の話だと、無条件でほとんどの魔法が使えるってことだがら、そんな条件とかは無視して大丈夫だと思う。なので単純に強力な魔法を聞いておけば問題なさそうである。
「よかろう、そんな単純な話であれば、各、ジャンル毎に、わしが最強だと思う魔法をお教えしよう」
それから想像以上に長いカジムさんの話が始まった。どうやらこの人、こういった議論が大好きなようで、どうしてこの魔法が最強なのかと言った理屈っぽい話を長々と話してくれた。
「やはり万能属性の攻撃魔法は外せんぞ、あらゆる敵に効果がある上に、絶対的に防ぐ魔法や耐性が存在せんのじゃ、困った時にはこれを使うと良いじゃろう・・」
俺はその話を紙にメモしていき、一覧に書き留めた。と言っても余計な話はメモせずに、魔法名と簡単な効果を書いただけである。
「博士、ありがとうございます」
「まあ、また話を聞きたくなったらいつでもきなさい」
その後、食料や消費アイテム、冒険に役にたつマジックアイテムを幾つか購入して、宿屋へ向かうことになった。俺はそのまま出発するつもりでいたのだけど、ルアッカさんに激しく説得されて、今日は宿で泊まって明日の朝にエラスラの塔へと向くことになったのであった。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
バイクごと異世界に転移したので美人店主と宅配弁当屋はじめました
福山陽士
ファンタジー
弁当屋でバイトをしていた大鳳正義《おおほうまさよし》は、突然宅配バイクごと異世界に転移してしまった。
現代日本とは何もかも違う世界に途方に暮れていた、その時。
「君、どうしたの?」
親切な女性、カルディナに助けてもらう。
カルディナは立地が悪すぎて今にも潰れそうになっている、定食屋の店主だった。
正義は助けてもらったお礼に「宅配をすればどう?」と提案。
カルディナの親友、魔法使いのララーベリントと共に店の再建に励むこととなったのだった。
『温かい料理を運ぶ』という概念がない世界で、みんなに美味しい料理を届けていく話。
※のんびり進行です
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる