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北の列国

北の王

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エルサフィの降伏によって、北方最大規模の戦いは終わりを迎えた……戦いが終わり、一番最初にアースレインで起こった事件は、軍師フィルナに王であるエイメルがマジ説教を受けたことであろう……

「バカ君主! どうしてそう勝手ばっかりするんだ! さすがの僕も今回は怒ってるからね!」
「……ごめん……フィルナ……」
「そもそもだな……最初に僕の忠告を……」

こうして軍師の説教は半日続き……裕太が解放された時はゲッソリと項垂れ、疲れ果てていた……


それから戦後処理の話が急速に始まった……今回の戦いで戦死した上位将軍のルソとランザックは、大将軍へと昇格され、二人の家族には、十分に生活できるだけの遺族年金が支払われることになった……さらに全ての戦死者の家族に対しても、王室予算から十分な額の保証がおこなわれた……これは裕太からの提案で、王室予算からの出金なのは彼の今回の戦いへの謝罪が含まれていた。

クルセイダは戦いが終わるとアースレインの傘下を申し入れてきた……ラグマーンとワグディアはほとんどの兵を失い、アースレインの圧力に屈して国家が消滅……全面降伏したエルサフィはアースレインに吸収されることになった……残る北方の国家はアジュラ王朝だが……話は想像もしていない方向へと向かった……

「アジュラ王朝はアジュラ領としてアースレインに従属しよう……それで良いかアースレイン王……」

その提案をしてきたのは、戦後の話し合いで裕太の元へやってきていたアジュラ王朝のサフェルリダ女王であった……

「それはこちらとしては是非もないが……いいのか?」
「あの戦場でアースレインの二体のドラゴンを見た……我が国の七竜が完全にビビっておってな……もし、アースレインと戦っても勝ち目がないと判断した……それならば国を完全に無くすより、別の形で生き残る方が良いと、全ての王族の意見が一致した」

「そうか……ならばアジュラはアジュラ領として存続を約束するよ、それとサフェルリダ……君はかなりの軍才があると聞く、よかればアースレインの大将軍に就任して欲しいんだけど……」

「面白い王だな……この私が大将軍…………ハハハッ……いや本当に面白い……
よかろう、その話のってやろう……」


こうして、北方はアースレインによって統一された……

傘下に入った阿波瑠花も、クルセイダ王国をクルセイダ領として従属して、大将軍に就任……そして宇喜多歩華は……

「さて……私の首を切っても恨まないわよ」
「いや、阿波との約束もあるし、君は殺さない……」
「だったらどうするの……」
「アースレインの大将軍に就任しないか」
「面白いこと言うわね……私はアースレインに大損害を与えた張本人よ、それをそんな待遇で向かい入れてどうするのよ……」
「それだけの力があるってことだろ、問題ない」
「また裏切るかもしれないわよ……」
「そんなことをしないって信じている……」
「……本当に馬鹿な人ね……いいわ、どっちみ敗者に選択権はないわ……なってあげましょう、アースレインの大将軍に……」


北方の全ての国家がアースレインによって統一されたことによって、この先、裕太は北の王と呼ばれ、その存在感を大陸全土に示すことになる……


しかし、今の北の王は人生で一、二を争うほどの危機に瀕していた……

「エイメル……アズキを王妃に迎えるってどう言うことよ……」
アズキとの婚姻の話を聞いたリュジャナな凄い形相で尋ねてきた……

「いや……戦場で約束したんだよ……貰ってやるって……」
「……それじゃ私との約束はどうなるのよ! 忘れたとは言わせないわよ……子供のころ……妃にしてやるって言ったでしょ!」
「こ……子供のころ……そ……そうなの?」
「そうよ! 私はず~~~っと待ってたんですからね!」

子供の頃の記憶はないんだけどな……でも……リュジャナのこと嫌いじゃないし……裕太はそう考え、こう返事をした。
「え~と……アズキにも相談しないとダメだけど……リュジャナも王妃になるか? 確か王様って何人と結婚してもいいんだよな」

裕太がそう言うと……しばしの沈黙の後、リュジャナが

「…………うっ……うっ……うわっ~ん……やっと……エイメルの妃になれるのね……」

いつも怒ってばっかりでリュジャナであったが……この時は女の嬉し涙を流した……それを見て単純な裕太はドキドキと気持ちを昂らせた……
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