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辺境大戦
チルドアの決戦
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ジュスランは態勢を立て直す為に、全軍を一度引かせた。それは敵に休息を与えることになるが、それでもそれを優先することを選択する。マックラスも、グルガナ軍に歩調を揃えて、軍を一度引いた。それは一斉攻撃に備えての再編成の為であった。
敵軍が一度引いたのを見て、フィルナは、すべての兵に休息を取ることを命じた。兵たちは携帯食を食して、水を飲み、体を休める。
嵐の前の静けさだろうか、戦場は少しの静寂に包まれる。その静けさを終わらしたのは、一列に並んだ重装歩兵の行進の音であった。ドスドスと重量感のある音を響かせ、アースレイン軍に向けて、一歩ずつ歩みを進める。
重装歩兵に、矢での攻撃は効果的ではないので、接近するまで攻撃ができない。アースレイン軍は、重装歩兵に合わせて兵を横並びに整列させた。敵の重装歩兵に対して、アースレインは普通の歩兵である、そのままぶつかれば、圧倒的にアースレインが不利のように見えた。
重装歩兵とアースレインがぶつかる寸前で、アースレインが少し後退した。その後退した距離は10メートルほどで、何かしらの意図は感じられなかった。
しかし、改めて、重装歩兵がアースレインの前列にぶつかろうとした時、その異変が起こった。次々と重装歩兵が崩れていったのである。よく見ると、重装歩兵の足元に穴が掘られていた。その穴に落ちて転ぶと、自分を守っている重い鎧に押しつぶされて、立ち上がることができないみたいだ。身動きできない重装歩兵の、鎧の隙間を狙って、アースレインの歩兵は、細身の剣で攻撃を加える。
ジュスランは、重装歩兵で前列を固めて、アースレインの動きを止めることを考えていたが、重装歩兵隊が崩れるのを見て、作戦の失敗を悟った。
「アースレインには曲者がいるな・・」
そう言うと、ジュスランは、軍を二手に分散させた。圧倒的な戦力の差を使って、包囲作戦と行くようであった。
フィルナは、円形に陣を敷いて、全方位の攻撃に備える。これなら、三倍近い敵に包囲されても、簡単には陣を崩されそうにはなかった。グルガナとルドヒキの両軍は、円形の陣のアースレインに激しい攻撃を加える。
「ここは踏ん張るぞ!」
裕太の声で、兵たちは奮起する。勢いのある敵の攻撃を跳ね返す。包囲され、兵の不安があるアースレインの方が不利のはずであるが、押しているのはアースレイン軍であった。攻撃してくる敵を次々と打ち倒していく。
苦戦するグルガナ、ルドヒキの両軍であった。しかし、ジュスランには、戦いが始まる前に用意していた秘策がある。
戦場の北に、無数のグルガナの旗が立ち上がった。それは、用意していた伏兵であった。その数は20,000。この戦いに参加していたグルガナ軍の半分が伏兵として隠されていたのである。もはや隠している必要もないので、包囲戦に参加させることにしたのであった。
20,000の伏兵が参戦したことによって、勢いは完全にジュスランの方に傾いた。アースレインの陣こそ崩せはしなかったが、その疲労を蓄積させていく。
「どうする、フィルナ。敵が増えて押され始めた。このままじゃ、被害は出てしまう」
裕太のそんな言葉を聞いたフィルナは、笑顔で答える。
「大丈夫だよ、エイメル。そろそろ約束の時間だ」
そう言われて裕太も微笑む。
ジュスランは勝ちを確信していた。敵は強力で、このままでも簡単に勝つことはできないだろう。だが、じきに疲労して、陣も崩れていくはずである。彼らに逃げ道はないので、それで終わりだ。そう考えていた。
だが、最初に策を用意していたのはジュスランだけではなかった。アースレインの軍師も、大軍と戦う策をちゃんと用意していたのである。
戦場の南側に、無数の集団が現れた。それは軍と呼ぶにはバラバラで、統制のとれたようには見えなかった。だが、それでもその数は膨大で、黒い波として、包囲しているグルガナ、ルドヒキの両軍に迫っていた。
「ジュスラン様! 大変です! 辺境の亜人どもが攻めてきました!」
「何! それはどういうことだ!」
様々な種族の亜人たちは、群れとなって襲いかかる。その総数は50,000、包囲しているグルガナ、ルドヒキの両軍と同数の大群であった。さらに一人一人の戦闘力は比べ物にならないくらいに高く、敵兵を次々と捻り潰していく。
亜人の軍勢は、軍としての機能は弱い、なので難しい作戦には参加できないとフィルナは考えた。そこで単純な作戦で一番効果的なもの・・動かない敵に、突っ込んで倒すという状況を作り出したのであった。
グルガナ、ルドヒキの両軍は、アースレイン軍を包囲することによって、完全に動きを止められたのである。フィルナは自軍を囮に、敵の足を止めたのであった。
「ジュスラン様・・どうしますか・・このままでは・・・」
「・・・・撤退だ・・このままでは全滅する」
やはりジュスランは無能ではなかった。この状況に無理に反撃することを考えずに、すぐに撤退の指示を出した。だが、それは無敗の英雄の、初めての敗北を意味していた。
敵軍が一度引いたのを見て、フィルナは、すべての兵に休息を取ることを命じた。兵たちは携帯食を食して、水を飲み、体を休める。
嵐の前の静けさだろうか、戦場は少しの静寂に包まれる。その静けさを終わらしたのは、一列に並んだ重装歩兵の行進の音であった。ドスドスと重量感のある音を響かせ、アースレイン軍に向けて、一歩ずつ歩みを進める。
重装歩兵に、矢での攻撃は効果的ではないので、接近するまで攻撃ができない。アースレイン軍は、重装歩兵に合わせて兵を横並びに整列させた。敵の重装歩兵に対して、アースレインは普通の歩兵である、そのままぶつかれば、圧倒的にアースレインが不利のように見えた。
重装歩兵とアースレインがぶつかる寸前で、アースレインが少し後退した。その後退した距離は10メートルほどで、何かしらの意図は感じられなかった。
しかし、改めて、重装歩兵がアースレインの前列にぶつかろうとした時、その異変が起こった。次々と重装歩兵が崩れていったのである。よく見ると、重装歩兵の足元に穴が掘られていた。その穴に落ちて転ぶと、自分を守っている重い鎧に押しつぶされて、立ち上がることができないみたいだ。身動きできない重装歩兵の、鎧の隙間を狙って、アースレインの歩兵は、細身の剣で攻撃を加える。
ジュスランは、重装歩兵で前列を固めて、アースレインの動きを止めることを考えていたが、重装歩兵隊が崩れるのを見て、作戦の失敗を悟った。
「アースレインには曲者がいるな・・」
そう言うと、ジュスランは、軍を二手に分散させた。圧倒的な戦力の差を使って、包囲作戦と行くようであった。
フィルナは、円形に陣を敷いて、全方位の攻撃に備える。これなら、三倍近い敵に包囲されても、簡単には陣を崩されそうにはなかった。グルガナとルドヒキの両軍は、円形の陣のアースレインに激しい攻撃を加える。
「ここは踏ん張るぞ!」
裕太の声で、兵たちは奮起する。勢いのある敵の攻撃を跳ね返す。包囲され、兵の不安があるアースレインの方が不利のはずであるが、押しているのはアースレイン軍であった。攻撃してくる敵を次々と打ち倒していく。
苦戦するグルガナ、ルドヒキの両軍であった。しかし、ジュスランには、戦いが始まる前に用意していた秘策がある。
戦場の北に、無数のグルガナの旗が立ち上がった。それは、用意していた伏兵であった。その数は20,000。この戦いに参加していたグルガナ軍の半分が伏兵として隠されていたのである。もはや隠している必要もないので、包囲戦に参加させることにしたのであった。
20,000の伏兵が参戦したことによって、勢いは完全にジュスランの方に傾いた。アースレインの陣こそ崩せはしなかったが、その疲労を蓄積させていく。
「どうする、フィルナ。敵が増えて押され始めた。このままじゃ、被害は出てしまう」
裕太のそんな言葉を聞いたフィルナは、笑顔で答える。
「大丈夫だよ、エイメル。そろそろ約束の時間だ」
そう言われて裕太も微笑む。
ジュスランは勝ちを確信していた。敵は強力で、このままでも簡単に勝つことはできないだろう。だが、じきに疲労して、陣も崩れていくはずである。彼らに逃げ道はないので、それで終わりだ。そう考えていた。
だが、最初に策を用意していたのはジュスランだけではなかった。アースレインの軍師も、大軍と戦う策をちゃんと用意していたのである。
戦場の南側に、無数の集団が現れた。それは軍と呼ぶにはバラバラで、統制のとれたようには見えなかった。だが、それでもその数は膨大で、黒い波として、包囲しているグルガナ、ルドヒキの両軍に迫っていた。
「ジュスラン様! 大変です! 辺境の亜人どもが攻めてきました!」
「何! それはどういうことだ!」
様々な種族の亜人たちは、群れとなって襲いかかる。その総数は50,000、包囲しているグルガナ、ルドヒキの両軍と同数の大群であった。さらに一人一人の戦闘力は比べ物にならないくらいに高く、敵兵を次々と捻り潰していく。
亜人の軍勢は、軍としての機能は弱い、なので難しい作戦には参加できないとフィルナは考えた。そこで単純な作戦で一番効果的なもの・・動かない敵に、突っ込んで倒すという状況を作り出したのであった。
グルガナ、ルドヒキの両軍は、アースレイン軍を包囲することによって、完全に動きを止められたのである。フィルナは自軍を囮に、敵の足を止めたのであった。
「ジュスラン様・・どうしますか・・このままでは・・・」
「・・・・撤退だ・・このままでは全滅する」
やはりジュスランは無能ではなかった。この状況に無理に反撃することを考えずに、すぐに撤退の指示を出した。だが、それは無敗の英雄の、初めての敗北を意味していた。
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