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辺境大戦

時を待つ者

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決定的なダメージを受けたミュジ軍は、その場から逃げようとしていた。バラバラに分散されながらも、クフール将軍は、兵を集めて逃走を図る。だが、そんな猛将を、ガゼン兄弟が追い詰める。周りの兵を打ち散らしながら、敗走の将軍に攻撃を仕掛けた。

ダグサスの戦斧が、グフール将軍の兜を弾き飛ばす。バランスを崩したとこに、ウェルダのハンマーが、馬上から叩き落とした。
「ぐっ、貴様らごときに!」

起き上がって、そう叫んだグフール将軍の首を、ダグサスの戦斧が跳ね飛ばした。

アースレインは、侵攻してきた五つの国のうち、二つの国を撃破した。残り三つの国であるが、ここからが正念場であった。
「ここまでは問題なんだけどね・・」

残りの三国は、おそらく連携して動いてくる。分散して戦いたいが、そんな隙は見せてくれないであろう。そうなると、数倍する敵にまともにぶつかることになる。


クリシュナの部隊と、ルドヒキ軍の睨み合いの続く中、戦況は動く。東側より、大軍の影が、その戦場へと向かってきていた。それはグルガナとラルタの軍勢であった、

ルドヒキ軍のマックラス将軍は、待っていたその時が来たのを見て、動き出した。ゆっくりと、軍をアースレイン軍に向けて進軍させる。

「いよいよ、時間稼ぎも佳境へと突入するな」
クリシュナは、グルガナとラルタの軍勢を見て、そう呟いた。敵軍はルドヒキ軍12,000、グルガナ軍20,000、ラルタ軍6,000と総数38,000、クリシュナの部隊2,000で戦うには多すぎる数であった。

クリシュナは密集陣形を維持するように指示すると、竜人族の屈強な兵を10人を連れて、自らの軍を離れ、別働隊として動き始めた。クリシュナ不在の間、クリシュナ部隊の指揮は副官である、竜人族の隻眼のアポリスと呼ばれる、クリシュナから信頼される男が引き継いだ。

巨人族の戦士ジャルジャは、敵の数の多さを見て、巨人族同士の連携を強めるように指示する。巨人族の戦士たちは、縦の長さが5メートルはある盾を一斉に構えて、敵の攻撃に備える。その巨人族を補佐する為に、竜人族の魔法兵士は仲間の巨人の足元で、魔法の詠唱を開始した。

グルガナ軍のジュスラン大将軍は、アースレインの数を見て、早期に戦闘は終わると思っていた。だが、実際戦いが始まると、その考えは甘いものだと反省した。二千ほどのアースレイン軍は、密集隊形で防衛に周り、全方位に強力な防御力を見せていたのだ。あれを突破するのは容易ではない、そう感じていた。

「巨人族が厄介だ、魔法兵団を前に出せ!」

それはグルガナが誇る、攻撃魔法部隊であった。遠距離から強力な魔法攻撃を放つことができる部隊で、その攻撃魔法も、炎、爆裂、風、氷結と4種に及び、状況によって使い分けることができた。巨人族の鉄壁の防御を打ち破るには、炎の魔法が適していると、ジュスランは指示した。それは巨人族の弱点で、それを彼は熟知していたのである。

グルガナの魔法兵団から、炎の魔法が放たれた。それは前衛の巨人族の一部に降り注ぐ。炎への恐怖に、盾を持って固まってしまう巨人族の戦士たち。竜人族の魔法兵が、魔法で炎を消化するが、次々と炎が襲いかかる。

その状況を見て、指をくわえて見てるほど、ルドヒキ軍のマックラス将軍は無能ではなかった。すぐに、グルガナの魔法兵団の攻撃で、陣形の崩れそうな箇所に対して、ルドヒキ軍の虎の子である、鉄騎兵団を突撃させた。

炎の恐怖と戦いながらも、防御に徹していた巨人族の戦士は、自分たちの元へ近づいてくる、黒い騎兵の集団に気がつく。危険を感じた、巨人族のドラブラと言う名の戦士が、炎の恐怖を感じながらも、その黒い騎兵の前と飛び出した。人の体の10人分くらいの大きさの巨大な槍を振り回し、その黒い騎兵を蹴散らしていく。

さすがのルドヒキの鉄騎兵団でも、巨人族の怪力無双の攻撃を受けては一溜まりもなく、次々に蹴散らされる。だが、その時、グルガナの魔法兵団の攻撃が、陣形から飛び出したその巨人族の戦士に集中した。ドラブラは、まともに炎の攻撃魔法を受けて、その場に跪く。そこへ、鉄騎兵団の数十本のランスの攻撃が、ドラブラの体を貫いた。

それは、アースレイン軍の巨人族の初めての戦死者であった。仲間の死を目にした巨人族の戦士たちは、ドラブラの元へ向かおうとした、だが、ジャルジャがそれを止める。

グルガナの魔法兵団は、さらに炎の攻撃を強めようとした、だが、それは無数の爆発によって阻止される。

別働隊で動いていたクリシュナは、敵陣の中を疾走して、その敵部隊の中に、強力な魔法爆弾をばら撒いていた。クリシュナの別働隊は、10人ほどで、数万の敵中の中ではあまりにも少数である、なので、敵は動き回るクリシュナに気がつくことができずに、思う存分にその行動を許してしまっていた。

クリシュナは状況を見て、グルガナの魔法兵団が厄介だと見抜いたので、残りの魔法爆弾の全てを、その魔法兵団の中へとばら撒いた。それが先ほど一斉に爆発したのである。

まさか、自らの周りに爆弾がばら撒かれているとは考えもしなかった魔法兵団は、無防備のまま、それを受けて、その連爆によって崩壊した。

ジュスランはそれを見て、呆然とする。これまでの戦闘経験を否定するかのような状況に、自らの未熟さを痛感していた。
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