上 下
32 / 174
辺境の王

初めてのガチャ

しおりを挟む
夢子から送られたオリハルコン硬貨は全部で300枚入っていた。お礼を言うために、通話チャンネルを開いて、夢子に連絡する。

「夢子、オリハルコン硬貨届いたよ、ありがとな。国が大きくなって稼げるようになったら、必ず返すから」
「だから、返さなくていいって。それより、どうなの調子は。辺境ってどんなとこなの、すっごい田舎なんでしょ、街とかなくて、家は全部藁で出来てるって本当?」
「バカにするなよ、街くらいはあるぞ。ちゃんと木造や石造りもある・・どこの情報だよそれ」
「そうなんだ。住んでいる種族もいっぱいあるって話も嘘なのかな、こっちだと人間以外だと、エルフかドワーフくらいしか見ないから」

これは本当かもしれない。街に行くと、チラホラとレアな種族を見かける。竜人族も珍しい種族みたいだし、アースレインがある辺境西側と違って、辺境の東側は、さらに多くの種族が住んでいるって聞くし・・

「種族は多いかもしれないな」
「やっぱり、そうなんだ。行ってみたいな辺境」
「くればいいじゃん」
「簡単には行けないよ・・やることはいっぱいあるし・・ここから辺境は遠すぎるよ」
「まあ、そのうち、俺の国がそっちに近づくと思うけどな」
「なになに、どうしてそんなことになるの」
「大きくするんだよ、北方全てを統一するくらいに、そうすれば、中央なんて目と鼻の先だろ」
俺がそんな大きなことを言うと、決まって夢子が言ってくる言葉が返ってきた。
「ゆーちゃんってたまにすごいこと言うよね」

それがなぜだか可笑しくって、笑っていると、夢子が呆れてチャンネルを切ろうとした。
「何が可笑しいのよ・・まあ、いいけど。それじゃ、私も仕事が一杯あるから」
「あっ、夢子・・本当にありがとな」
「・・・いいけどね」

夢子がそう言うと、チャンネルが切れた。

さて・・とりあえず、オリハルコン硬貨だが・・ガチャだな。300枚あるから三回できるけど、さすがにそれは調子に乗りすぎだ。国が大きくなってお金がすごくかかるから、とりあえず一回だけにしておこうかな。

しかし・・ガチャのやり方がわからん・・・みんな当たり前のようにやってるけど、どうやってるのかな・・仕方ない、奴を呼ぶか・・

「おい神! ちょっと出てこい!」
少し間を置いてから、神のあの声が頭に響いてきた。
「なんじゃお主か・・今日は何の用じゃ」

「ガチャのやり方がわからん。どうすればいいんだ?」
「ガチャ・・・ああ、召喚のやり方か、そんなのステータス画面に書いとるだろうが」

なんか聞きなれない言葉に、聞き返す。
「何だよそのステータス画面って・・」
「目をつぶって自己集中すれば出てくる画面じゃ、どうしてそんなことも知らんのじゃ、ちゃんと最初の記憶に入れておいたはずじゃが・・・あっ! ・・・」
「何だ神! その『あっ!』て何だよ・・またお前やらかしたな・・・」
「すまん・・お主の、都合の悪い記憶を消した時に、間違ってその辺の記憶も消してしまってたようじゃ・・」
「おいおい・・・どれだけ俺に恨みがあるんだよ・・」
「すまんすまん・・お詫びに一度だけ召喚を無料にしてやるから許せ」
「・・仕方ねえな」
「物分りがよいのはよいことじゃ。それじゃ、また何かあれば呼ぶがよい」

そう言って神の声は聞こえなくなった。

さて、ステータス画面だな、目をつぶって、自己集中・・・すると目の前に、ゲーム画面のような映像が浮かびあがってきた。どうもあの神は、人間の作ったゲームに、感覚的なところでかなり影響を受けてるようだ。所々で、その片鱗が見え隠れする。

ステータス画面には幾つかの項目が表示されている。その中の、【ヘルプ】を選択すると、【よくある質問の項目】があった。そこを見ると、【召喚ができなくって困ってます】とリンクがあったので、そこを選択してみる。すると画面にこう書かれていた。

オリハルコン硬貨はあるかな。召喚一回で、オリハルコン硬貨が100枚必要になるよ。あなたの目の前に、オリハルコン硬貨を置くんだぞ。一枚でも足りないと召喚できないので、ちゃんと数えてね。オリハルコン硬貨を置いたら、召喚のイメージを思い浮かべるんだ。それはどんな形でもいいけど、プレイしたことのあるソジャゲのガチャを参考にイメージすると、より具体的でかっこいい召喚ができるぞ。さて、いよいよ召喚だ。君の目の前には大小二つのレバーがないか。それが召喚の合図になるよ。小さなレバーで単発召喚。大きなレバーは10連召喚だぞ。レバーを引くともう引き返せないからな、あとは良い召喚ができるように、神に祈るんだ。

・・・・とりあえず引いてみるか。

俺はヘルプに書いている通りに、オリハルコン硬貨を目の前に置いて、頭に、ガチャのイメージを浮かべる。ソシャゲは幾つかプレイしていたので、その辺は問題なかった。裕太の前に、巨大な門が出現する。その門の前には、紋様のある石に、大きなレバーと小さなレバーがあった。ここは悩むことなく、小さなレバーを引いた。すると巨大な門が開かれて、そこから一つの影が飛び出してきた。

虹色のオーラに包まれた、その魔物の名は、夜の女神リリス、レアリティはUR+EXと表記されていた。豪華なエフェクトとUR+EXと言うレアリティから、裕太は当たりを確信した。

「マジか・・一発ツモじゃないか・・」

召喚された、夜の女神リリスは、周りをキョロキョロと見渡すと、裕太に話しかけてきた。
「どうやらお主が私を召喚したようじゃな、私はリリスじゃ、今後ともよろしく」

うわ・・喋った・・召喚した魔物って喋るんだ。それにしても露出が多いな・・背中に黒い羽がある以外は、普通に綺麗な金髪のべっぴんさんだし・・目のやり場に困る。
「え・・と・・俺はエイメル・アースレイン。よろしくお願いします・・」

露出の多い大人の女性であるリリスに、中身は初《うぶ》な高校生の裕太は緊張で固まってしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...