クラス群雄伝 異世界でクラスメートと覇権を争うことになりました──

辺境の王

小国の初戦

「リュジャナ・アルビオンをアースレイン王国、財務大臣に任命する」
狭い執務室に、俺の声が響く。リュジャナはその辞令を受け取ると、早速、現在の国の財政を確認し始めた。

「何よこれ。よくこんな財政状態で国家なんて名乗れるわね」
「仕方ないだろ、少し前まで、山賊に国家予算の半分を取られてたんだから」
「何よそれ・・。まあ、いいわ、それより、こんな状態で私のとこに、よく借金なんてしに来れたわね。どこに返却の余裕があるのよ」

「まあ、それは別のアレで、その何とかなるんだよ」
「何よそれ・・ちゃんと返してよね」

リュジャナと、そんな情けない話をしている時、執務室に兵士長のグローサーが飛び込んでくる。
「エイメル様、大変です。隣国のドブール王国が、３００の軍勢で攻めてまいりました」

よし、待ってました。俺は思わずラッキーと叫んでしまう。それほどこの時を待っていた。
「すぐにアズキとガゼン兄弟を呼んでくれ。それと兵にはすぐに出撃できるように準備させてくれ」
「はっ！」

とりあえず周りの国なんかの世間体とかあるので、自分からは積極的には侵略するのは気が引けていた。しかし、攻めてこられれば、こちらが遠慮することはない。攻めてきた軍を蹴散らし。さらに敵の城まで攻め入る気でいた。

「エイメル。敵が来たって？」
アズキが寝ぼけた顔でやってきた。その後ろにはラスキーもついてきている。
「エイメル様、出陣するのですか？」
ラスキーの問いに、俺は微笑みながら答える。
「そうだよ。敵が攻めてきたからね」
それを聞いたラスキーが意外な言葉を言ってきた」
「私も連れて行ってくれませんか？」
「え。ダメだよ。戦争になると思うし、危険だから・・」
「戦争は慣れています・・多少役に立つと思うので・・」
俺が困ってると、アズキが妹の口添えをする。
「ラスキーはこう見えてもエレメンタラー精霊使いなんだ、精霊を使っていろんなことができるから便利だぞ」
「そうなんだ・・わかった、それじゃ、俺の側から離れないって約束できるか？」
「はい。もちろん永遠に離れません」
「いや・・永遠は困るけど・・」

前の国では、エラメンタラーって職種で、戦争にも参加していたラスキーも参戦することになった。

ドブールは、城から２キロほど西にある、ルソー平原に陣を構えたとの報告が来た。相手としては攻城戦は避け、野戦で決着したい考えがみえみえである。しかし、俺たちはその誘いに乗ることにした。ルソー平原でドブールの軍を撃破して、その勢いのまま、ドブール王国の主城を攻め落とす予定である。

敵の陣から少し離れた場所に、俺たちは布陣する。どう攻めようかとみんなで話し合う。
「そんなの真正面から攻めればいいだろうに」
アズキの単純な作戦に、ラスキーが意を唱える。
「お姉ちゃんは単純すぎ、あの軍を倒した後に、すぐ、敵城に攻め入る予定なのよ、そんな被害甚大な戦術取れるわけないでしょ」

これはラスキーの方が正しい。なるべき兵に被害は出したくない。ここはやはりあの作戦かな。

「よし、ガゼン兄弟。兵を率いて、敵を引きつけてくれるか」
「それは引きつけるだけでいいってことですかい？」
「そう。なるべく戦闘はしないで、引きつけるだけでいいよ」
「わかりやした。任せてください」
「で、俺とアズキはあの辺の茂みに隠れて、敵の後方に回り込む。そして隙を見て、敵の大将首を取ろう」

「隠れんのかよ面倒くさいな。私とエイメルが突っ込めば済む話じゃねえか？」
「できれば敵兵にも損害を出したくないんだ。敵の国を滅ぼした後には、そのままうちへ従属してもらおうと思ってるからね」

その意見に、アズキは渋々了解する。
「へいへい。わかりましたよ」

こうして作戦は実行される。ガゼン兄弟は、元々将軍をやっていただけあって、兵の運用がうまい。敵の動きを見て、兵を動かし、俺とアズキが潜んでいる茂みが、敵軍の後方に来るようにうまく誘導してくれた。

すぐ目の前に、敵の大将と思われる人物を確認すると、ラスキーがよく分からない言葉をぶつぶつ言いだした。彼女は城での約束で、絶対に俺の側から離れないと約束したのをいいことに、俺とアズキと一緒に、茂みで隠れていたのだが・・ラスキーの言葉で、周りに濃い霧のようなものが現れる・・
「風の精霊にお願いして霧を出しました。今なら隙をつけるでしょ」

確かにこれは助かる。俺とアズキはすぐに飛び出した。敵大将の近くの兵たちがその動きに気がつき、すぐに大将を守ろうと俺たちに斬りかかる。俺とアズキはなるべく敵兵を殺さないように倒して、敵大将に接近する。俺より一歩早く、敵の大将に接近したアズキが、剣を鋭く振り抜き、大将首を一瞬で切り飛ばした。

霧が晴れたその場所には、敵の大将が、首を飛ばされ倒れている。それを見た敵兵たちが、その場に崩れ落ちるように座り込む。すでに戦意は消失しており、戦いは短い時間で終わりを迎えた。