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握れば拳、開けば掌
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対魔法防御に廻した個体数の不足で相殺し切れず、都市の南門付近へ陣取った岩人形達の一部にも属性弾が当たって、胸元で交差させた太い両腕に嵌めた天然鉱物製のガントレットなどを破砕する。
腰回りや脚部にも着弾して装甲を撒き散らす姿が散見される中で、俺の視界に収まる全基が似たような動きを見せたのもあり、“人型を模した手前、核は心臓と同位になるのです” という双子エルフの指摘に間違いは無さそうだ。
『やっぱり、弱点はそこなんだね』
『だろうな… 吶喊する! 射撃に注意しろ!!』
ぼそりと呟いた後部座席のレヴィアに応える傍ら、核を破壊するまで止まらない相手と撃ち合うのは不利だと瞬断して、白兵戦に持ち込むための指揮を執れば自然と喊声が沸き起こる。
『後れを取るなッ、我らも征くぞ!!』
『『うおぉおおぉお―――ッ!!』』
何やら意図的に被らせてきたアインストの発破を受けて、ゼファルスの騎士達も雄叫びを上げ、此方と足並み揃えて乗騎を駆けさせた。
なお、未だ大型種の異形らとは多少の距離があり、事前の魔法斉射で防御態勢を取らせて、次なる術式の発動を阻害したとは謂え… 悲しいかな、もう一度くらいは土属性の投石魔法をやり過ごす必要がある。
されども、機先を制したのは楔型陣形の右端から琴乃のスヴェルS型一番騎が放った軽硬化錬金の弓矢で、ストーン・バレットの再構築に腐心していた巨大ゴーレムの一基目掛けて飛翔し、遠くとも両掌の間で形成されつつあるように見えた岩塊を穿った。
閾値を超えた衝撃で鏃に籠められている魔導士イリアの得意魔法 “フレイム・ボム” が炸裂して、急所を射抜くには邪魔な位置に浮かんでいた障害を砕き、露となった胸郭に僅差で射出されていた二の矢が的中して爆散する。
『良しッ、撃破!』
「ウ…ゥ…」
運動性と消費魔力の都合もあり、過剰に厚くできない装甲ごと核を欠損させられたようで、自重を支えられなくなった天然鉱物の巨躯が崩壊していった。
それを気に留める事なく、敵前衛のゴーレム達は程良い大きさにまで形成した岩塊を撃ち出そうと、射線を外しながら蛇行する此方の軍勢に対して、意外にも細やかな照準の補正をしてくる。
追加でもう一本、琴乃は乗騎に弓矢を速射させていたが、行動を妨害できるのは単基に過ぎず、殆どの個体が秒速200m前後に及ぶ岩の弾丸を飛ばしてきた。
着弾までの一秒強、自身も含めた各騎は足を止めずに詰めの補正など行い、苛烈な攻撃を銘々の体裁きで躱す。
『危なッ!? 紙一重じゃないの、ディノ君!!』
『大丈夫だ、掠ったところで小破に留まる』
例え被弾しても最低限の損傷に留まるよう考慮済みだと、死なば諸共のリーゼに嘯いた藍髪の騎士や、新鋭騎のスヴェルF型を任せたザックスとレインらは上手く避けたものの、全騎無傷という訳にもいかない。
『うぁああ、脚が!!』
『ッ、感覚共有って、こんなに痛いの!?』
『左腕破損… まだ、やれる!』
『… 蛮勇ね、大人しく支援に廻るわよ』
俄かに交わされる準騎士と準魔導士らの発言を拾い、彼らに預けている鹵獲騎の大まかな破損状況を理解した上で、省みる余裕も無いままに近接戦闘の間合いまで距離を縮めた。
その時点で既に陣形は乱されていた事から、気侭に斬り込んだ双剣仕様のベガルタを後追いする形で、前面へ出した左肩に顎を引き付けて隠し、脇腹から胸部は右腕で庇う独特な構えを取った岩人形に一言突っ込みながら仕掛ける。
『ボクサーかよ……』
『クロード、集中する!!』
尤もなレヴィアの警鐘に気を引き締め、エルフという種族に抱く心象がまたも少し崩れたのは棚上げしておき、巨大ゴーレムが半歩詰めて繰り出した左ジャブをダッキングで斜め下に掻い潜った。
無骨な拳が騎体左肩の上を抜けるのに合わせて、次撃の右ボディブローが放たれる前にベルフェゴールの左掌底で胸郭を砕けば、その接触状態より赤毛の魔導士が発動段階で維持していた炸裂風弾の魔法を解き放つ。
「オォ… オオォ……」
何処から鳴らしているのか判別し難い空虚な音を零して、核を潰された相手は徐に頽れていく。
巻き込まれないように下がりつつ、横目に見流した月ヶ瀬兄妹の騎体も経緯はさておき、長剣の片手平突きで一基の心臓部を貫いていた。
『ん、何とか押し切れ…ッ』
唐突なレヴィアの危機感が纏わりつく人工筋肉の神経節を通じて伝わり、咄嗟に飛び退けば斜角の付いた金属鉱の小槍が数本ほど地面から生じる。
恐らく術師型ゴーレムの土属性魔法であり、近場では中途半端に躱し損ねた麾下のグラディウスが脚部を小破させられている姿も窺えた。
『ぐぅうッ!?』
『ッ、あぁ…』
苦鳴で外部拡声器を振るわせた操縦者達の隙に付け込み、疾く踏み入った対面の格闘型がジョルトブローを胸部装甲へ叩き込むも、間一髪で左腕盾の防御が間に合って致命傷を避ける。
その様子を一瞥してから、厄介な術師型や敵騎体に迫るため撃破した岩人形の残骸を乗り越えようとした瞬間、都市南門の裏側に潜んでいた “機械仕掛けの魔人” が主副四枚の翼を羽搏かせて飛び立った。
腰回りや脚部にも着弾して装甲を撒き散らす姿が散見される中で、俺の視界に収まる全基が似たような動きを見せたのもあり、“人型を模した手前、核は心臓と同位になるのです” という双子エルフの指摘に間違いは無さそうだ。
『やっぱり、弱点はそこなんだね』
『だろうな… 吶喊する! 射撃に注意しろ!!』
ぼそりと呟いた後部座席のレヴィアに応える傍ら、核を破壊するまで止まらない相手と撃ち合うのは不利だと瞬断して、白兵戦に持ち込むための指揮を執れば自然と喊声が沸き起こる。
『後れを取るなッ、我らも征くぞ!!』
『『うおぉおおぉお―――ッ!!』』
何やら意図的に被らせてきたアインストの発破を受けて、ゼファルスの騎士達も雄叫びを上げ、此方と足並み揃えて乗騎を駆けさせた。
なお、未だ大型種の異形らとは多少の距離があり、事前の魔法斉射で防御態勢を取らせて、次なる術式の発動を阻害したとは謂え… 悲しいかな、もう一度くらいは土属性の投石魔法をやり過ごす必要がある。
されども、機先を制したのは楔型陣形の右端から琴乃のスヴェルS型一番騎が放った軽硬化錬金の弓矢で、ストーン・バレットの再構築に腐心していた巨大ゴーレムの一基目掛けて飛翔し、遠くとも両掌の間で形成されつつあるように見えた岩塊を穿った。
閾値を超えた衝撃で鏃に籠められている魔導士イリアの得意魔法 “フレイム・ボム” が炸裂して、急所を射抜くには邪魔な位置に浮かんでいた障害を砕き、露となった胸郭に僅差で射出されていた二の矢が的中して爆散する。
『良しッ、撃破!』
「ウ…ゥ…」
運動性と消費魔力の都合もあり、過剰に厚くできない装甲ごと核を欠損させられたようで、自重を支えられなくなった天然鉱物の巨躯が崩壊していった。
それを気に留める事なく、敵前衛のゴーレム達は程良い大きさにまで形成した岩塊を撃ち出そうと、射線を外しながら蛇行する此方の軍勢に対して、意外にも細やかな照準の補正をしてくる。
追加でもう一本、琴乃は乗騎に弓矢を速射させていたが、行動を妨害できるのは単基に過ぎず、殆どの個体が秒速200m前後に及ぶ岩の弾丸を飛ばしてきた。
着弾までの一秒強、自身も含めた各騎は足を止めずに詰めの補正など行い、苛烈な攻撃を銘々の体裁きで躱す。
『危なッ!? 紙一重じゃないの、ディノ君!!』
『大丈夫だ、掠ったところで小破に留まる』
例え被弾しても最低限の損傷に留まるよう考慮済みだと、死なば諸共のリーゼに嘯いた藍髪の騎士や、新鋭騎のスヴェルF型を任せたザックスとレインらは上手く避けたものの、全騎無傷という訳にもいかない。
『うぁああ、脚が!!』
『ッ、感覚共有って、こんなに痛いの!?』
『左腕破損… まだ、やれる!』
『… 蛮勇ね、大人しく支援に廻るわよ』
俄かに交わされる準騎士と準魔導士らの発言を拾い、彼らに預けている鹵獲騎の大まかな破損状況を理解した上で、省みる余裕も無いままに近接戦闘の間合いまで距離を縮めた。
その時点で既に陣形は乱されていた事から、気侭に斬り込んだ双剣仕様のベガルタを後追いする形で、前面へ出した左肩に顎を引き付けて隠し、脇腹から胸部は右腕で庇う独特な構えを取った岩人形に一言突っ込みながら仕掛ける。
『ボクサーかよ……』
『クロード、集中する!!』
尤もなレヴィアの警鐘に気を引き締め、エルフという種族に抱く心象がまたも少し崩れたのは棚上げしておき、巨大ゴーレムが半歩詰めて繰り出した左ジャブをダッキングで斜め下に掻い潜った。
無骨な拳が騎体左肩の上を抜けるのに合わせて、次撃の右ボディブローが放たれる前にベルフェゴールの左掌底で胸郭を砕けば、その接触状態より赤毛の魔導士が発動段階で維持していた炸裂風弾の魔法を解き放つ。
「オォ… オオォ……」
何処から鳴らしているのか判別し難い空虚な音を零して、核を潰された相手は徐に頽れていく。
巻き込まれないように下がりつつ、横目に見流した月ヶ瀬兄妹の騎体も経緯はさておき、長剣の片手平突きで一基の心臓部を貫いていた。
『ん、何とか押し切れ…ッ』
唐突なレヴィアの危機感が纏わりつく人工筋肉の神経節を通じて伝わり、咄嗟に飛び退けば斜角の付いた金属鉱の小槍が数本ほど地面から生じる。
恐らく術師型ゴーレムの土属性魔法であり、近場では中途半端に躱し損ねた麾下のグラディウスが脚部を小破させられている姿も窺えた。
『ぐぅうッ!?』
『ッ、あぁ…』
苦鳴で外部拡声器を振るわせた操縦者達の隙に付け込み、疾く踏み入った対面の格闘型がジョルトブローを胸部装甲へ叩き込むも、間一髪で左腕盾の防御が間に合って致命傷を避ける。
その様子を一瞥してから、厄介な術師型や敵騎体に迫るため撃破した岩人形の残骸を乗り越えようとした瞬間、都市南門の裏側に潜んでいた “機械仕掛けの魔人” が主副四枚の翼を羽搏かせて飛び立った。
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