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猛牛、危機一髪!

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「うぉ!! なんじゃこりゃああああッ!」

思わずダロスが叫ぶ。
地下14階層に上がって直ぐに異常は起こった。

やや広めの迷宮構造を持つ通路の向こう側から、大型のネズミの魔物であるウェアラットと洞穴に棲むケイブリザードという爬虫類の魔物が押し寄せてくる。

脅威度は低めだが、数がやたらと多い。

「前列、ガンランス構え、撃てッ!」

ダロスの号令で前列のミノタウロス兵がガンランスから口径の大きい銃弾を放つ。ドォオオンッと銃声が響き、数匹のウェアラットやケイブリザードが弾け飛ぶ。しかし、単発式のガンランスは面制圧には向かない。

対応を考える暇もなく、下級の魔物達が突っ込でくる。

「くそッ!盾構えッ!!」
「うぉおおおッ!?」

屈強なミノタウロス兵であっても次々とぶち当たってくる魔物達の勢いを止める事ができない。

「スクラムを組めッ!!」
「うおりゃあッ!!」

最前列のミノタウロス兵の後ろに次々にミノタウロス兵が集まり、互いに支え合いスクラムを組んで行く。

「魔人達、魔物の制御はどうなってやがるッ!」
「だめだッ!興奮状態のせいで制御が効かないッ!!」

ダロスの怒鳴りに随伴する魔人達が応えるが、何も事態は好転しない。

「ちッ、後退だッ!前列は態勢を維持しつつ後退する。幸い、下層への階段は近い。後衛の人狼兵とコボルト兵から下がれッ!」

命令は後方へと伝達されていき、下層への撤退が始まる。
が、それには時間が必要だ。

「っていうか、ボス、持ちませんぜッ!?早くしてくださいッ!!」

スクラムを組むミノタウロス兵が泣き言をいう。

「気張れ、飲み込まれた終わりだぞッ!!」

理不尽な事にいきなりのピンチであった。
しかし、間一髪で魔人達が間に合う。

「高密度のグランドスピアの魔法を使います。前列、注意してくださいッ!!」

魔人兵12名による共鳴魔法により、必死に魔物を食い止めるミノタウロス兵の前方の地面が爆ぜ、無数の土塊の槍が生じる。

「「ギュァッ!!」」
「「ギィッ!」」
「「……ッ」」

幾多のウェアラットやケイブリザードを刺し貫いて、無数の土塊の槍が天へと延び、通路を塞ぐ。

「ッ、前列後退しろッ!魔人兵ッ、多重結界いけるかッ!!」
「もとより、そのつもりですッ」

すでに準備を整えていた魔人兵が先ほどと同様に12名による共鳴魔法として、強力な多重結界を展開し、土塊による封鎖が破られる前に通路をさらに封じた。

「ッ、我々も何度も同じことはできませんよッ!今のうちに退きましょうッ!!」

そうして、ダロス率いる先遣部隊は命からがら後続の部隊が待機する地下15階層へ逃げる事ができたのだ。

「雑魚に数で圧殺されるとか、洒落にならねぇぞ……」

とダロスはぼやくのだった……
その彼は地下15階層に着くなり、大声を張り上げる。

「階段を封鎖するッ!待機組の魔人兵は土魔法で上階への階段を塞いでくれッ!!」

ダロスの指示に従い、安全区域である地下15階層に待機していた魔人兵が上層への階段を塞いだことで、誘引された魔物達は地下14~13階層に閉じ込められる事になった。

その後、魔人兵が開いた転移ゲートを経由したコボルト伝令兵により、事態は最下層の中枢部に伝わる。
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