上 下
27 / 187

天狼、ガンランスを気に入る

しおりを挟む
おじ様が帰ってしまわれました……
それを見送った後、私室に戻った私は昨夜の事を思い出してしまいます。

「はぅ……」

ひとりで思わず赤面していると、部屋の扉がノックされました。

「スカーレット様、イリアです。入って宜しいでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」

自分の顔をペタペタと触り、問題がない事を確認しておきます。

「……どうぞ、いらしてください」

「おはよう御座います、スカーレット様。昨日はあれからどうでしたか?」

いきなり核心を突いてきましたね……

「ん、貴女にはお礼を言わなければなりませんね、ありがとう御座います」

「いえいえ、さっきゼルギウスさんにお礼を言われましたので、察しはついていました。おめでとう御座います」

「こほん……、さて、お仕事の話もしなければなりませんね」

わざとらしく咳払いをして、話を切り替えました。

「はい、賃貸契約の話ですね。ヤスダもテラサキも昼は仕事がありますので、予定通りに午後に向こう側に赴きます。向こうとの時間差を考えれば夜頃かと……」

「連絡手段はどう確保しているのですか?」

彼女は見慣れない長方形の何かを懐から取り出してテーブルに置きます。

「これは“すまぁとふぉん”という通信機器です、ご存知ですよね?」
「えぇ、おじ様からいただいた知識の中にありますものね……」

「ヤスダを眷属化した翌日、彼に資金を預けて契約して貰いました。なので、これは彼の名義になっています。ここに先日の滞在期間中に得た協力者達の連絡先を登録しましたので、特に問題はありません」

「分かりました、何も心配はないようですね」

「それと、ヤスダのマンションは最初に確認して合鍵も預かっておりますから、彼に関しては連絡が取れずとも合流できます。他の者は滞在時間の都合で住居を実際に訪れる事まではしておりませんけど……」

「構いません、報告書に記載されていた個人情報で十分です。それと、おじ様から向こうに滞在させる魔人を一人選ぶ様に言われています。誰か思いつくものはいますか?」

「う~ん、そうですね……」

他にも幾つかの確認を済ませた後、イリアは午後の出立までにすべき事があると言って部屋から去っていったのでしした……


スカーレットの居住区から謁見の間の奥にある俺の私室に戻ったあと、暫しくつろいでから一つ上の階層の訓練区画に向かう。この階層は中央部の吹き抜け付近に環状の工房区画があるため、その外側を囲むように訓練施設が設けられている。

その中の一つに入ると、ヴィレダの姿がある。
彼女は楽しそうにガンランスをぶっ放していた。

「あ、イチロー」
「よう、ヴィレダ、そのガンランスはどうだ?」

「あたし、コレ好きかもしれない。AK‐47と違って”どすん”ってなる!」

第2工房区画の青銅のエルフ達はミノタウロス族を想定してガンランスを作ったようだが、よくよく考えれば、速度と突撃力を持つ人狼族にも向いているかも知れないな。

「何本か人狼族にも回してもらうか?」
「いいの?」

「あぁ、構わないさ、人狼族用にもう少し取り回しをしやすい様に改良してもらおう。気づいた点があれば、第2工房にレポートを上げてやってくれ」

「皆、コレあたし達も貰えるよ!」
「「「おぉ!!」」」

後に彼らの希望を全て反映し、第2工房が心血を注いだガンランスは極端に短くなり、相手に突き刺して、口径の大きい弾丸を撃ちこむ銃短剣ガンナイフとなるのだった……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...