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青銅娘、ウッドチッパーの製造に取り組む

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若くして20万を超える領民を導き、ありふれた日々の幸せを皆が享受できるように導く、近代的に言えば善管注意義務のある御令嬢が鬱々うつうつとしていたにもかかわらず……

彼女の膝元である中核都市エベル、その魔族区画にある多目的工場では学問のらが和気藹々わきあいあいと言葉を交わしながら、愉しげに手作業を進めていた。

「班長、破砕刃40枚の接合が終わりました! 確認をお願いします」
「ちょっと待つのです、レド君。先に動力の準備をしますから」

笹穂耳をピコつかせたエルミアはノースグランツ領に留学している某辺境伯ゲオルグの三男坊を待たせつつ、小型の蒸気機関に備えられたピストンの往復運動を変換して回転運動にするため、クランクシャフトや円板を取り付けていく。

しっかりとボルトを締めた後、手漉てすの原料を量産するための木材粉砕機ウッドチッパーに固定された鋼軸付き旋盤せんばんと、円板の外周部にある双方の溝に弾性の高いゴムベルトも掛けた。

「これで良し… 取り敢えず、軽く動かしてみるのです」

小柄な青肌エルフの娘が蒸気機関のボイラーに手を当てて、日緋色金オリハルコンの伝導板経由で底面に仕込まれた赤熱の魔石へ魔力を流し込むと、やかましい駆動音を鳴らしてピストンが動き出す。

連鎖的にクランクで接続された円板も廻り、持ち運び可能なコンパクト設計であれども、ベルトによって伝わる動力で粉砕機の旋盤せんばんを力強く回転させた。

「ふっふ~、蒸気自動車に載せられるサイズの小型機関で私の右に出るエルフはいないのです。多分、リーゼロッテ様よりも一日の長があるのですよぅ」

伊達に中東のテロリストから押収したト〇タ製のピックアップトラックを分解していた訳でなく、自慢げに胸を張った彼女の設計技量は確かなものとなっているが… 負けず嫌いと思しき本人に聞かれたら、ひと悶着ありそうだとミルダは苦笑する。

「やっぱり、本職といった感じだね。十分な馬力がありそうだ」
「もっと褒めるのです♪」

ずずいと身を寄せて、エルミアは蒸気バイクがらみで仲良くなった不良令嬢に藍色髪の頭をポフらせようと差し出すも、手持ち無沙汰になっていた技師見習いの少年が “こほん” と咳払いして二人を留めた。

「そろそろ、こっちの仕上がりを見て貰って良いですか?」
「ん、分かったのです。肝心要の部分だから念入りに点検するのですよ」

簡素な作業台の上に “でん” と置かれているのは、二箇所ほど欠けたような部分のある円盤状の刃が鋼軸で何枚も繋がったものであり、夫々それぞれの間に僅かな間隔を持たせるためのスペーサーが嚙まされている。

その上でネジ切りされた鋼軸の両端から丈夫なナットでカシメてあり、スパナ片手に締まり具合や刃先のそろいなどを確かめた青肌エルフは満足そうに頷いた。
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