148 / 187
魔王、紛争の収束を見届けて帰還する
しおりを挟む
「…… 一度、北門周辺から兵を引けと、そちらは市街に竜騎兵隊を残すのに?」
「ご理解いただきたい、ベイグラッド殿…… 此方も撤退時に背後から奇襲をうけては堪らないのだ」
フレスト殿の提案を要約すると、両軍の距離を物理的に開けて、撤退開始以後は此方の動きを監視するため、脚の早い航空戦力のみを暫く市街に残置したいという事だが……
「その竜騎兵達が去り際に火を放つ可能性もありますよ、クリストファ様」
「貴様ッ、誇り高き竜騎兵隊を愚弄するつもりか!」
「だからヴァルケ殿を煽るなよ、ジグル…… 言われずとも分かっている」
普通に考えればそれこそ無益で、リベルディア騎士国が自国の評判を落とす結果にしかならない。
ただ、実際に市街が火に包まれるとミザリア領兵は住民の救助活動を優先せざるを得ないため、追撃を防ぐ効果的な足止めになるのも事実だ。
「ふむ…… 魔王殿?」
「俺よりもスカーレットに聞いた方が良いんじゃないか」
視線を投げてきたクリストファの頼みを予測し、先回りして切り返す。
リベルディアの撤退時に城塞都市へ最後まで残留する竜騎兵隊に対して、ミザリア・ノースグランツ連合軍側も吸血飛兵を出したいとかだろう。
「彼女は貴方の言葉以外に耳を貸さないでしょうに……」
「えぇ、その通りですわ♪」
それもその通りだと納得しつつも暫時の思考を巡らせ、現状の流れでは自分達に特段の危険がない事、及び必要なプロセスである事を確認する。
「すまないが、頼らせてもらえるか?」
「はい、御随意のままに……」
吸血鬼達を束ねるスカーレットの了解を得て、此方の動向を静観していたリベルディア陣営に視線を向け直した。
「という事だ、フレスト殿。そちらが撤退に際して城塞都市に残留させる竜騎兵に対して、同数の吸血飛兵を我らも北門周辺に配置させてもらう」
「了承した…… すぐに帰り支度を始めて、それが済めば城塞都市南門から順次撤収を開始させていこう。貴殿らもそれで構わないな、クリストファ殿にジグル殿」
向けられた鋭い視線にベイグラッド家の次男坊と副官が頷き、大枠での事態収束に係る合意が形成され、以後も順当に細部が詰められていく。
なお、この交渉で取り決められた内容は速やかに実行に移され、数日後にはリベルディア騎士国の侵攻から始まったミザリア領南部を巡る一連の騒動は落着した。
その中で援軍の義理を果たした魔族兵達は事後処理に追われるクリストファ達の領軍主力を残し、手薄となっているミザリア領の中核都市ブレアードへ一足先に帰還して、密約通りに最後の仕上げを行う。
「ご理解いただきたい、ベイグラッド殿…… 此方も撤退時に背後から奇襲をうけては堪らないのだ」
フレスト殿の提案を要約すると、両軍の距離を物理的に開けて、撤退開始以後は此方の動きを監視するため、脚の早い航空戦力のみを暫く市街に残置したいという事だが……
「その竜騎兵達が去り際に火を放つ可能性もありますよ、クリストファ様」
「貴様ッ、誇り高き竜騎兵隊を愚弄するつもりか!」
「だからヴァルケ殿を煽るなよ、ジグル…… 言われずとも分かっている」
普通に考えればそれこそ無益で、リベルディア騎士国が自国の評判を落とす結果にしかならない。
ただ、実際に市街が火に包まれるとミザリア領兵は住民の救助活動を優先せざるを得ないため、追撃を防ぐ効果的な足止めになるのも事実だ。
「ふむ…… 魔王殿?」
「俺よりもスカーレットに聞いた方が良いんじゃないか」
視線を投げてきたクリストファの頼みを予測し、先回りして切り返す。
リベルディアの撤退時に城塞都市へ最後まで残留する竜騎兵隊に対して、ミザリア・ノースグランツ連合軍側も吸血飛兵を出したいとかだろう。
「彼女は貴方の言葉以外に耳を貸さないでしょうに……」
「えぇ、その通りですわ♪」
それもその通りだと納得しつつも暫時の思考を巡らせ、現状の流れでは自分達に特段の危険がない事、及び必要なプロセスである事を確認する。
「すまないが、頼らせてもらえるか?」
「はい、御随意のままに……」
吸血鬼達を束ねるスカーレットの了解を得て、此方の動向を静観していたリベルディア陣営に視線を向け直した。
「という事だ、フレスト殿。そちらが撤退に際して城塞都市に残留させる竜騎兵に対して、同数の吸血飛兵を我らも北門周辺に配置させてもらう」
「了承した…… すぐに帰り支度を始めて、それが済めば城塞都市南門から順次撤収を開始させていこう。貴殿らもそれで構わないな、クリストファ殿にジグル殿」
向けられた鋭い視線にベイグラッド家の次男坊と副官が頷き、大枠での事態収束に係る合意が形成され、以後も順当に細部が詰められていく。
なお、この交渉で取り決められた内容は速やかに実行に移され、数日後にはリベルディア騎士国の侵攻から始まったミザリア領南部を巡る一連の騒動は落着した。
その中で援軍の義理を果たした魔族兵達は事後処理に追われるクリストファ達の領軍主力を残し、手薄となっているミザリア領の中核都市ブレアードへ一足先に帰還して、密約通りに最後の仕上げを行う。
0
お気に入りに追加
579
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる