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27 和馬視点
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和馬は緊張する心をどうにか落ち着かせながら、紘一を最初に案内した部屋に連れて行った。
何が起こるのか分からない紘一は少し不安そうな顔をしていたので、ソファーに座らせ、リラックス効果のあるお茶を出す。
和馬を回復させる役は紘一に決まった。佑平が半ば強引に決め、何故だと食い下がる和馬に「お前たちが、一番相性が良いからだ」と言われれば、反対する要素はない。
この部屋まで付いてきた佑平に、ごめん、と謝ると、お前を見ていれば分かる、となんとも申し訳ない言葉が返ってきた。和馬はこの先も彼を選ぶことはないことにもう一度謝ると、優しく頭を撫でられる。
「何かあったらすぐに呼べ」
そう言って、部屋のドアを閉めた。
後ろから紘一の視線を感じる。
勘違いしてはダメだ、この人は、自分の力に惹かれているだけ。
和馬はそう言い聞かせ、振り返る。
「落ちつきましたか」
紘一は困ったように笑った。
「俺、ちゃんと役に立てるかな」
いくら力が強いからと言って、彼は人間。何をどうするのか分からないのでは、不安がるのも仕方がない。
「無理だと思ったらすぐに言ってください。あと、途中で気分が悪くなった時も」
天使族は人間にとって、本来の姿は呼吸ができなくなるほどの「毒」なのだ。血に触れれば発狂する。限られたごく少数の人間には害がないけれど、大抵は紘一のように桁外れの力の持ち主だったりする。
和馬は自分のために入れたお茶を飲んだ。温かい液体は喉を通り、お腹が温まってホッとする。
「では、始めましょうか」
そう言って紘一の隣に座ると、彼は分かりやすく体を硬直させる。彼を取り巻く春の風が遠のいてしまい、これでは上手くできない。
「怖がらなくても大丈夫です。あなたは何もせず、リラックスしていてください」
和馬は紘一の手を握った。自分の力に触れれば、彼は次第に落ち着いてくる、そう思って黙ったまま握った手を見つめた。
案の定紘一の力は引き寄せられるように戻ってきて、彼の精神状態が戻ったことを知らせる。
そのまま両手を取り、体を反転させると肩から腕を回すように持っていった。紘一が和馬に後ろから抱きつくような形になり、より体が近くなったことで、彼の風を多く取り入れることができるのだ。
後ろの彼が呟く。
「てっきりキスをするものだと……」
和馬は苦笑した。
「柳さんにそこまでしてもらう訳にはいきませんよ。……しばらくこのままで。僕に変化があっても、見ないふりでお願いします」
正面ではなく、背面から抱きつく形にしたのは、その変化を考えてのことだ。すでにその兆しがあり、和馬は落ち着け、と深呼吸する。
相手は人間、しかも訓練されたわけじゃないから、できるだけ負担をかけないようにしたい。ゆっくり、少しずつ、彼からの力を分けてもらうのだ。
和馬の瞳が金色に変わる。途端に紘一の風がより温かくなり、若草の香りも濃くなった。
(ああ、やっぱり心地いい)
優しい風に包まれて、和馬はもう一度深呼吸する。さわさわと流れる彼の風が、和馬の力によって、操られているのだ。
和馬は下腹に両手をあてた。ここから和馬の力の源と、紘一の力を繋ぐのだ。
「……っ」
紘一の力が体の中へと入ってくる。自分とは違うものが体の中に入ってくる苦痛。そして心地よい風に満たされる快感。
特に最奥にある力の源というのは、触れれば人間でいう性的興奮を引き起こす。必要とはいえ、何だか自慰を見られているような気になっていたたまれない。
「和馬?」
耳元で紘一の声がした。その声には何の変化もなく、自分の配慮は上手くきいていることを示している。
「喋らないでください。あと、動くのもやめてくださいね。じゃないと、集中できなくなってしまうので」
「わ、分かった……」
特に紘一の力に対しては、和馬は敏感に反応してしまう。慎重にならないと、彼の力を一気に引き抜きかねない。
(ゆっくり、ゆっくり……)
紘一の風が、和馬の手を通して中に入ってくる。中で温かく広がり、甘い痺れを残して自分と混ざり合っていく。
何が起こるのか分からない紘一は少し不安そうな顔をしていたので、ソファーに座らせ、リラックス効果のあるお茶を出す。
和馬を回復させる役は紘一に決まった。佑平が半ば強引に決め、何故だと食い下がる和馬に「お前たちが、一番相性が良いからだ」と言われれば、反対する要素はない。
この部屋まで付いてきた佑平に、ごめん、と謝ると、お前を見ていれば分かる、となんとも申し訳ない言葉が返ってきた。和馬はこの先も彼を選ぶことはないことにもう一度謝ると、優しく頭を撫でられる。
「何かあったらすぐに呼べ」
そう言って、部屋のドアを閉めた。
後ろから紘一の視線を感じる。
勘違いしてはダメだ、この人は、自分の力に惹かれているだけ。
和馬はそう言い聞かせ、振り返る。
「落ちつきましたか」
紘一は困ったように笑った。
「俺、ちゃんと役に立てるかな」
いくら力が強いからと言って、彼は人間。何をどうするのか分からないのでは、不安がるのも仕方がない。
「無理だと思ったらすぐに言ってください。あと、途中で気分が悪くなった時も」
天使族は人間にとって、本来の姿は呼吸ができなくなるほどの「毒」なのだ。血に触れれば発狂する。限られたごく少数の人間には害がないけれど、大抵は紘一のように桁外れの力の持ち主だったりする。
和馬は自分のために入れたお茶を飲んだ。温かい液体は喉を通り、お腹が温まってホッとする。
「では、始めましょうか」
そう言って紘一の隣に座ると、彼は分かりやすく体を硬直させる。彼を取り巻く春の風が遠のいてしまい、これでは上手くできない。
「怖がらなくても大丈夫です。あなたは何もせず、リラックスしていてください」
和馬は紘一の手を握った。自分の力に触れれば、彼は次第に落ち着いてくる、そう思って黙ったまま握った手を見つめた。
案の定紘一の力は引き寄せられるように戻ってきて、彼の精神状態が戻ったことを知らせる。
そのまま両手を取り、体を反転させると肩から腕を回すように持っていった。紘一が和馬に後ろから抱きつくような形になり、より体が近くなったことで、彼の風を多く取り入れることができるのだ。
後ろの彼が呟く。
「てっきりキスをするものだと……」
和馬は苦笑した。
「柳さんにそこまでしてもらう訳にはいきませんよ。……しばらくこのままで。僕に変化があっても、見ないふりでお願いします」
正面ではなく、背面から抱きつく形にしたのは、その変化を考えてのことだ。すでにその兆しがあり、和馬は落ち着け、と深呼吸する。
相手は人間、しかも訓練されたわけじゃないから、できるだけ負担をかけないようにしたい。ゆっくり、少しずつ、彼からの力を分けてもらうのだ。
和馬の瞳が金色に変わる。途端に紘一の風がより温かくなり、若草の香りも濃くなった。
(ああ、やっぱり心地いい)
優しい風に包まれて、和馬はもう一度深呼吸する。さわさわと流れる彼の風が、和馬の力によって、操られているのだ。
和馬は下腹に両手をあてた。ここから和馬の力の源と、紘一の力を繋ぐのだ。
「……っ」
紘一の力が体の中へと入ってくる。自分とは違うものが体の中に入ってくる苦痛。そして心地よい風に満たされる快感。
特に最奥にある力の源というのは、触れれば人間でいう性的興奮を引き起こす。必要とはいえ、何だか自慰を見られているような気になっていたたまれない。
「和馬?」
耳元で紘一の声がした。その声には何の変化もなく、自分の配慮は上手くきいていることを示している。
「喋らないでください。あと、動くのもやめてくださいね。じゃないと、集中できなくなってしまうので」
「わ、分かった……」
特に紘一の力に対しては、和馬は敏感に反応してしまう。慎重にならないと、彼の力を一気に引き抜きかねない。
(ゆっくり、ゆっくり……)
紘一の風が、和馬の手を通して中に入ってくる。中で温かく広がり、甘い痺れを残して自分と混ざり合っていく。
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