216 / 240
第1章
216 カースの尾行
しおりを挟む
カースの通報を受けた騎士団は三区に向かっておりアジャーニ家の者と思しき二人を拘束していた。
アジャーニ家の名を出し散々暴れたが、確認の手間が省けたとばかりに騎士団に叩きのめされた。
カースは仲介役らしき者を空から追跡していた。この男かなり警戒心が強いらしく時々立ち止まっては後ろを確認したり、いきなり右に曲がったり引き返したり尾行泣かせだった。
しかしさすがに上空にまで警戒はしてなかったようでカースが気付かれることはなかった。
そのまま街の端まで着いたと思ったら城壁の石を取り外し始めた。クタナツの城壁の厚さはおよそ五メイル、穴を開けようにも一晩中かけても済みはしないだろう。
驚くことに石を二つ三つ外しただけで中は空洞になっている。
そいつは外した石を魔力庫に収納し空洞に入っていった。そして内側から城壁を元に戻している。長い時間をかけて穴を掘っていたのだろうか。
そして外側も同様の手法で城壁をすり抜けたのだった。上空から見られているとも知らずに。
そのまま西に進む。二十分ぐらい歩くと今度は南、田園地帯を目指しているようだ。
そして十分は歩いただろうか。ぽつんと掘建て小屋があった。農具小屋や納屋といった雰囲気だ。
中に入って五分で出てきた。
つまり打ち合わせなどをしたわけではなく、手紙か何かを置いただけ、または何か簡単なやり取りをしただけなのだろう。
そして来た道と違うルートで帰ろうとしているようだ。ここでカースは悩んだ。こいつがクタナツ城壁内に戻る頃には騎士団がこいつの家に殺到しているだろう。
それを遠目にでも見られればきっと逃げられる。ならば……
こいつは来た時と同様に城壁の石を外して中に入ろうとしている。
そしてこれまた同じ手順で城壁内に入り込んだ。そして外した石を戻そうとする前にカースの『落雷』が命中した。
かなり威力を抑えたので死ぬことはないだろう。そうして気絶した男を騎士団詰所に運ぶのだった。関所破りの現行犯として。
カースは田園の小屋について報告していない。
どうせこの男は殺し屋との関連を疑われて洗いざらい自白するのだ。小屋で何をしたかを隠せるはずもない。
いつ誰が小屋に来るかも吐かされることだろう。後は騎士団が上手くやるに違いない。
やったぜ! 揺さぶり作戦大成功。まさかここまで上手く回るとは。
せっかく殺し屋組織は頑張って証拠を消していただろうに。ふふ、可哀想にねぇ。
それもこれも金をケチって最低レベルの殺し屋で妥協したせいだろうか。それとも短絡的に殺しを選んだ愚かさ故か。
イジメと見せかけて殺しに来る思い切りの良さは評価できるのだろうか。
結局馬車は陽動だったのか?
それにしてもプロが来なくてよかったな。
アジャーニ家の名を出し散々暴れたが、確認の手間が省けたとばかりに騎士団に叩きのめされた。
カースは仲介役らしき者を空から追跡していた。この男かなり警戒心が強いらしく時々立ち止まっては後ろを確認したり、いきなり右に曲がったり引き返したり尾行泣かせだった。
しかしさすがに上空にまで警戒はしてなかったようでカースが気付かれることはなかった。
そのまま街の端まで着いたと思ったら城壁の石を取り外し始めた。クタナツの城壁の厚さはおよそ五メイル、穴を開けようにも一晩中かけても済みはしないだろう。
驚くことに石を二つ三つ外しただけで中は空洞になっている。
そいつは外した石を魔力庫に収納し空洞に入っていった。そして内側から城壁を元に戻している。長い時間をかけて穴を掘っていたのだろうか。
そして外側も同様の手法で城壁をすり抜けたのだった。上空から見られているとも知らずに。
そのまま西に進む。二十分ぐらい歩くと今度は南、田園地帯を目指しているようだ。
そして十分は歩いただろうか。ぽつんと掘建て小屋があった。農具小屋や納屋といった雰囲気だ。
中に入って五分で出てきた。
つまり打ち合わせなどをしたわけではなく、手紙か何かを置いただけ、または何か簡単なやり取りをしただけなのだろう。
そして来た道と違うルートで帰ろうとしているようだ。ここでカースは悩んだ。こいつがクタナツ城壁内に戻る頃には騎士団がこいつの家に殺到しているだろう。
それを遠目にでも見られればきっと逃げられる。ならば……
こいつは来た時と同様に城壁の石を外して中に入ろうとしている。
そしてこれまた同じ手順で城壁内に入り込んだ。そして外した石を戻そうとする前にカースの『落雷』が命中した。
かなり威力を抑えたので死ぬことはないだろう。そうして気絶した男を騎士団詰所に運ぶのだった。関所破りの現行犯として。
カースは田園の小屋について報告していない。
どうせこの男は殺し屋との関連を疑われて洗いざらい自白するのだ。小屋で何をしたかを隠せるはずもない。
いつ誰が小屋に来るかも吐かされることだろう。後は騎士団が上手くやるに違いない。
やったぜ! 揺さぶり作戦大成功。まさかここまで上手く回るとは。
せっかく殺し屋組織は頑張って証拠を消していただろうに。ふふ、可哀想にねぇ。
それもこれも金をケチって最低レベルの殺し屋で妥協したせいだろうか。それとも短絡的に殺しを選んだ愚かさ故か。
イジメと見せかけて殺しに来る思い切りの良さは評価できるのだろうか。
結局馬車は陽動だったのか?
それにしてもプロが来なくてよかったな。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜
歩く、歩く。
ファンタジー
※第12回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。応援ありがとうございました!
勇者に裏切られ、剣士ディックは魔王軍に捕まった。
勇者パーティで劣悪な環境にて酷使された挙句、勇者の保身のために切り捨てられたのだ。
そんな彼の前に現れたのは、亡き母に瓜二つの魔王四天王、炎を操るサキュバス、シラヌイだった。
ディックは母親から深い愛情を受けて育った男である。彼にとって母親は全てであり、一目見た時からシラヌイに母親の影を重ねていた。
シラヌイは愛情を知らないサキュバスである。落ちこぼれ淫魔だった彼女は、死に物狂いの努力によって四天王になったが、反動で自分を傷つける事でしか存在を示せなくなっていた。
スカウトを受け魔王軍に入ったディックは、シラヌイの副官として働く事に。
魔王軍は人間関係良好、福利厚生の整ったホワイトであり、ディックは暖かく迎えられた。
そんな中で彼に支えられ、少しずつ愛情を知るシラヌイ。やがて2人は種族を超えた恋人同士になる。
ただ、一つ問題があるとすれば……
サキュバスなのに、シラヌイは手を触れただけでも狼狽える、ウブな恋愛初心者である事だった。
連載状況
【第一部】いちゃいちゃラブコメ編 完結
【第二部】結ばれる恋人編 完結
【第三部】二人の休息編 完結
【第四部】愛のエルフと力のドラゴン編 完結
【第五部】魔女の監獄編 完結
【第六部】最終章 完結
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる