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第1章

203 カース、五年生

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今日から新学期。私達は五年生になった。
どんな一年になることだろう。

「あ、セルジュ君おはよー。昨日は楽しかったね!」

「おはよう。またやりたいよね! さすがにゴースト退治ハントは無理だけど。」

好きだねぇ。でもあんな場所じゃあ身を隠す所がないもんね。

ちなみに今日は珍しく馬車に乗って来た。
母上から、『初日ぐらい貴族らしくしなさい』と言われてしまったのだ。
服装だって兄上から貰った新しいウエストコートでバッチリおしゃれだ。

「おはようカース。いい服着てるじゃない。新作ね。」

「おはよ。分かるの? さすがアレク! 例によって兄上のお土産なんだよね。」

こんな話をしているとスティード君もサンドラちゃんもやって来た。全員集合だ。


先生もやって来て一時間目、国語だ。
もちろん担任はウネフォレト先生。

「みなさんおはようございます。今日から卒業まで頑張っていきましょうね。
私ごとですが春休みに結婚しました。苗字が変わりましたが、訂正するのも覚えるのも面倒でしょうから今年度はウネフォレトでいきます。」

全員から拍手が起こる。こんな時は拍手でいいのか?
それにしてもいいことだ。先生の青春はこれからに違いない。

「では新しいお友達を紹介します。入って自己紹介をしてくださいね。」

「カリツォーニ・ド・アジャーニである。冬の終わり頃王都からやって来た。良しなに頼む。」

「ハンドラー・ド・チャリオスだ。カリツォーニ様のご学友であり護衛も兼ねている。よろしく頼む。」

「シフナート・ド・バックミロウです。カリツォーニ様の学友であり護衛も兼ねています。よろしくお願いします。」

上級貴族が一人に護衛が二人。全員男か。つまらん。それにしても代官の関係者か? 子供に子供の護衛をつけるとは。将来のポストを見越しているのか?
それにしても自分で『ご学友』か、関わりたくないタイプだな。

「では授業を始めます。まずはいつものように一緒に読んでみましょうね。」

『花の香りは 移りにけりぬ  いたづらに わが身世にふる ながめせしまに』

こんな短い歌の中に深い意味がある。
これはもはや芸術だ。

二時間目、算数。
小数が出てきた。これを一年間かけて四則計算ができるまで仕上げるらしい。

三時間目、魔法。
毎度お馴染み魔力測定だ。今回は四千まで測れる。
私達はいつも通り全員四千かと思ったら、スティード君が三千二百だった。
さては剣術の稽古ばかりで魔法を疎かにしたな?
他はエルネスト君が二千五百だったぐらいで大した数字は出なかった。やはり差は広がる一方なのだろう。
ちなみに転校生三人組は二千前後だった。

そして昼休み。
私達はいつも通りだが、周りは少し変化がある。最大派閥のバルテレモンちゃん達が十人ぐらいしかいない。見たところ平民が減っているようだ。
そしてエルネスト君とイボンヌちゃん。
イボンヌちゃんはいつも通りに見えるがエルネスト君がやたら浮かない顔をしている。

そして上級貴族アジャーニ君達は三人で食べるのかと思えば、こちらに近づいて来て、

「アレックス、こっちで一緒に食べないか?」

そう言った。
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