128 / 240
第1章
128 十月十二日、深夜
しおりを挟む
一方フェルナンドは日没から現在に至るまで剣を振り続けている。まさか、グリーディアントが現れたのか?
だが見たところ相手はいない。しかし何かを切っている雰囲気はある。
よく見ると、彼は虫を切っていた。星明かりしかない夜の魔境で火を焚くと、虫たちはいくらでも集まってくる。
掌サイズの虫もいれば、小指より小さい虫もいる。もっと小さい虫も大きい虫もいるだろう。
そんな虫をひたすら切り続けていた。
しかもハチマキのような物で目隠しをしている。つまり音と気配だけで虫を切り続けている。
彼がグリードグラス草原に残った本当の理由はこれなのだ。虫を相手に稽古がしたかったからなのだ。
しかしアランに『少し稽古をしてから帰る』と言うのが気恥ずかしかったため、一晩の確認を買って出たのだ。
ちなみに彼らの師匠である、コペン・アッカーマンは今でも目隠しで魔物を倒すことができる。しかし音も気配も小さい虫を切ることはできない。
そう、フェルナンドはこの『心眼』において師を超えているのだ。
だいたい半径一、二メイルぐらいまで察知できる。恐ろしいのはほとんど察知した瞬間に切っていることだ。
無尽流においてこの『心眼』を使いこなせる者はアッカーマンとフェルナンドと数人の高弟だけである。アランは使えない。
時刻は真夜中過ぎ、心眼の調子をじっくり確認できたフェルナンドは、少し休むかと考えていた。目隠しを取り、焚き火から離れる。
例のグリーディアントは昼からずっと触らずに放置している。少しずつ虫に食われつつあるようだ。
この世界では蟻のフェロモンについては知られていないし、グリーディアントがどうやって奪われた獲物を追跡するのかなど解明されていない。
ただ冒険者達は経験則として、匂いなどで追ってくるのだろうと考えている。
そこでフェルナンドは考える。
オディロンの右腕はまだグリーディアントの獲物なのかと。ここら一帯のグリーディアントは全滅したとしても、他の地域のグリーディアントの標的になることはあるのかと。
結論など出るはずはないが、夜の魔境ではグリーディアントなど珍しくないので気が向いたら実験してやろうかともぼんやり考えていた。
三十分ぐらい休憩をして、フェルナンドは再び焚き火に近寄る。このまま日の出まで虫を切り続けることだろう。
朝になったら少し寝て、のんびり歩いてクタナツに帰ろうと考えるのだった。
だが見たところ相手はいない。しかし何かを切っている雰囲気はある。
よく見ると、彼は虫を切っていた。星明かりしかない夜の魔境で火を焚くと、虫たちはいくらでも集まってくる。
掌サイズの虫もいれば、小指より小さい虫もいる。もっと小さい虫も大きい虫もいるだろう。
そんな虫をひたすら切り続けていた。
しかもハチマキのような物で目隠しをしている。つまり音と気配だけで虫を切り続けている。
彼がグリードグラス草原に残った本当の理由はこれなのだ。虫を相手に稽古がしたかったからなのだ。
しかしアランに『少し稽古をしてから帰る』と言うのが気恥ずかしかったため、一晩の確認を買って出たのだ。
ちなみに彼らの師匠である、コペン・アッカーマンは今でも目隠しで魔物を倒すことができる。しかし音も気配も小さい虫を切ることはできない。
そう、フェルナンドはこの『心眼』において師を超えているのだ。
だいたい半径一、二メイルぐらいまで察知できる。恐ろしいのはほとんど察知した瞬間に切っていることだ。
無尽流においてこの『心眼』を使いこなせる者はアッカーマンとフェルナンドと数人の高弟だけである。アランは使えない。
時刻は真夜中過ぎ、心眼の調子をじっくり確認できたフェルナンドは、少し休むかと考えていた。目隠しを取り、焚き火から離れる。
例のグリーディアントは昼からずっと触らずに放置している。少しずつ虫に食われつつあるようだ。
この世界では蟻のフェロモンについては知られていないし、グリーディアントがどうやって奪われた獲物を追跡するのかなど解明されていない。
ただ冒険者達は経験則として、匂いなどで追ってくるのだろうと考えている。
そこでフェルナンドは考える。
オディロンの右腕はまだグリーディアントの獲物なのかと。ここら一帯のグリーディアントは全滅したとしても、他の地域のグリーディアントの標的になることはあるのかと。
結論など出るはずはないが、夜の魔境ではグリーディアントなど珍しくないので気が向いたら実験してやろうかともぼんやり考えていた。
三十分ぐらい休憩をして、フェルナンドは再び焚き火に近寄る。このまま日の出まで虫を切り続けることだろう。
朝になったら少し寝て、のんびり歩いてクタナツに帰ろうと考えるのだった。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる