上 下
70 / 240
第1章

70

しおりを挟む
四時間目、社会だ。
再びエロー校長先生がやってきた。

「さあさあ社会のお勉強をしましょうね。
実は今日何をするか聞く前にウネフォレト先生が帰ってしまいましてね、そこで今日は質問タイムといきましょう。
勉強のことから魔法のことまで、何でも聞いてくださいね。」

「はい!」

「いい声ですね! はい、アレクサンドルさん。」

「校長先生は魔境のどのぐらいまで行かれたことがありますか?」

「いい質問ですね。
あれは私がまだ若い頃でした。仲間達と魔境を攻略しようと準備を整え挑戦しました。
その結果、ノワールフォレストの森のさらに北、山岳地帯まで到達いたしました。」

「え、そんなにですか! すごい!
まだ誰も行ってないんじゃないですか!?」

「ふふふ、そうなのです。あれ以来誰も到達してないらしいですよ。
つまりここ、二十年ぐらい未踏というわけです。」

教室が騒つく、みんなその凄さが分かるのだろう。草原、砂漠、森、この三つの難所を越えて到達できるわけなのだから。

「しかし皆さん、実はこれは私達の実力ではなかったりします。通常は歩きか馬車で陸路を行くわけですが、サヌミチアニの北から大型船で海路を進んだのです。
このルートだとグリードグラス草原やヘルデザ砂漠をスルーできるわけですね。
そうして海岸線から離れすぎないよう海路を進みました。
ちなみに本当はもっと北まで海路を進むつもりでしたが、この辺りで大型の海の魔物に襲われましてね、何とか逃げることができまして、ノワールフォレストの森の北西部に上陸したわけです。
そこからは海岸線沿いを歩いて北上し、山岳地帯に到着、そんな旅でした。」

そう言って校長は白板に地図を描き、海の魔物に襲われたポイント、上陸したポイントに印を付けた。

「通常ローランド王国の北部に大型船が来ることなどまずありません。
南の国々との交易にしか使わないためです。
その時はたまたま物好きな方がおられましてね。サヌミチアニまで来られて、そこで乗船者を募集していたわけです。
そこに私達パーティーが立候補し乗り込めたというわけです。
このようなタイミングで都合がよいことが起こることを古い言葉で『渡りに船』と言います。そのまんまですね。」

こうして社会の時間は校長の話で全て終わった。質問は一つだけだったけど、とても有意義だった。これもきっと青春の一場面なのだろう。


五時間目、体育。

「よーし、昨日の続きをするからなー。
メイヨール君とマーティン君、今日はしっかりやるよな?」

「「押忍!」」

そして私達は昨日と同じ隅に行き、真面目に剣を振るのだった。

「スティード君、先生に叱られるのも青春だけど、こうやって一心不乱に汗を流すのも青春だよね。」

私は手を止めずに口を動かした。
スティード君も同様だ。

「そうだね。もう青春がどうとかよく分からないけど、きっと青春なんだろうね。」

スティード君は諦めたような表情で答える。
まだまだだな。

「それよりもカース君、この水壁ってだいぶ頑丈じゃない? さっきから全然剣が地面に着かないよ。」

「そう? 確かに僕も腰より下に木刀が行かないね。じゃあ少し薄くしようか。」

元々の奥行きが半メイルなのでさらに半分にしてみる。

「これならなんとか下まで着くよ。カース君の魔力はやっぱりすごいんだね!
そんなに魔力を込めたわけじゃないんだよね?」

「うん、先生の水壁みたいにしようとしただけだよ。でもまあこれなら僕ももう少し下まで行けそうだよ。」

こうして会話を挟みつつも真面目に体育の授業を終えた。
しっかり汗をかいたので、早く帰って露天風呂だな。
冬の夜もいいけど、春の夕方に露天風呂に入るのも風流なものだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

処理中です...