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第1章

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そしてまた次の日、今日はサラスヴァの日だ。

「おはようスティード君! 僕は昨日気付いてしまったよ! あれこそが青春だったんだ!
先生に叱られて廊下に立たされる! または校庭を走らされる!
あれが青春なんだよ! 青春って素晴らしいよね!」

「おはようカース君? ど、どうしたの? 青春? って何?」

「え!? スティード君、青春を知らないの?
青とは古来より未熟を表す色!
そして僕らは未熟な三年生!
しかも今の季節は春!
つまり僕らは青春の真っ只中にいるんだよ!?
この時期を無駄にしてはいけないんだよ!」

「カース君、朝からすごいね。よく分からないけど今日の体育は頑張ろうね。」

「うん! 熱く行こうよ! 青春万歳だよ!」

私はどうしたんだ?
昨日からおかしい。
青春という言葉を聞いてとてつもなくハイになっている。

「カース! 昨日は風邪ひかなかったでしょうね! 貴方は魔力が高いから大丈夫でしょうけど! だから心配なんかしてないんだから!」

「おはようアレックスちゃん。もちろん元気だよ。青春っていいよね。
夢を追い、夢に敗れ、夢から覚めた時それが夢と分かる、そしてまた夢を見る。
それが青春だよね。」

「ごめん……全く分からないわ。何が変な物でも食べたの? 今日のお昼はすごいわよ。
魔境産の素材があるわ。楽しみにしておきなさい。」

「ふっふっふ、アレックスちゃんでも分からないかー。僕等の青春時代はこれからさ。」

「だめだわ、カースが壊れた……
サンドラちゃん、助けて……」

「おはようアレックスちゃん。
私もこんなカース君初めて見るわ。さすがに心配になってきたわ。」

失礼な。
壊れているはずがないだろう。
ちょっとハイになってるだけだ。
それも仕方ないだろう、だって青春時代なんだから。
さあ一時間目だ、張り切っていこう!

「皆さんおはようございます。今日も楽しく勉強していきましょうね。
今日は昨日の続きです。『春暁』ですね。」

『春眠、暁を覚えず
処処断末魔を聞く
夜来風弾の声
砦落つること多少』

「ではアレクサンドルさん、この詩の作者は誰ですか?」

「はい、モウコ・ネーンです。」

「はい正解! お見事です!」

「ではアポリネール君、一行目の意味を答えてください。」

「は、はい、え、えーっと、そ、その、
春の眠りは暁を覚えてない。」

「うーん、残念、それは意味とは言いませんね。もう少し分かりやすく答えてくださいね。昨日やりましたよ。
ではデュボア君、答えてください。」

「はい。春の眠りは心地よくて夜が明けるのも気付かないほどだ、です。」

「お見事です! デュボア君に拍手ー!
では続けていきましょう。
二行目をバルテレモンさん、意味を答えてください。」

「はい、あちらこちらから断末魔が聞こえてくる、です。」

「正解です! が、バルテレモンさん?
断末魔って何ですか?それが分かるように答えると高得点ですよ。」

「えっ? いや、私はその……
おそらく断末っていう魔物の声じゃないかと……」

「残念。断末魔とは人間の死の間際の悲鳴、死にたくないと生に執着する悲鳴のことですね。
それが聞こえてきたわけです。
では三行目をメイヨール君。」

「はい、そう言えば夜通し風弾を唱える声がしていたぞ、だと思います。」

「バッチリです! ではさらにメイヨール君、このことからどんな状況を想定しますか?」

「はい、二行目の断末魔、そして一晩中風弾を撃ち続けていたということは、拠点を攻められていたのだと思います。例えば魔物とかに。」

「素晴らしい! 説明してないのによくそこまで考えました。
拠点を守らんと命を散らす騎士達の姿が見えてきますね。
では最後、四行目をミシャロン君。」

「うーん、はい。一体どれほどの砦が落ちたのか? ですか?」

「はい! 正解です。ミシャロン君に拍手ー!
皆さんよく復習してますね。いいですね。
では最後に、この詩から感じることを教えてください。じゃあマーティン君。」

「はい、僕が感じたのは、騎士が奮闘しようが魔物が攻めてこようが砦が落ちようが世の中には何の影響もないということです。
そして春はやっぱり青春だということです!」

「なるほど、深いですね。
確かに外で何が起こっても気付かなければいつまでも眠っていられますね。
そして今の季節は春、二度と戻らない青春……

私ももうすぐ三十、両親からは毎日毎日まだ結婚しないのか男はいないのかと言われ続けるばかり……
普通は十五、六で結婚するのに私はもうすぐ三十……
生徒達を正しく導くことに青春を捧げ早十余年……
でも私の青春は二度と戻らない……
いいですか皆さん、青春は二度と戻ってきません……
私のように三十前まで独身でいたくなければ……
二度とない青春をめいいっぱい楽しんでください……
そして若いうちに伴侶を見つけておきましょう……
特に平民の女の子……
高望みして貴族との結婚を夢見てはいけません……
遊ばれて終わりです……
君のためなら家を捨てる……
なんて言葉に騙されてはいけません……
イケメン貴族男はみんな嘘つきです……
男は腐れゴブリンなのです……」

やばい、私の不用意な発言がウネフォレト先生の敏感な部分に触れたのか。
何がブツブツ言っている。
後半はほとんど聞き取れない。
そうして国語の授業は終わった。
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