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第1章
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今日は私の六歳の誕生日だ。
この世界に転生して六年、ぼんやりと物心ついて四年と少し。前世の四年より濃い時間を過ごしている気がする。
木刀もいつのまにか錬魔循環できるようになり、すっかり体の一部と化している。
みんなはおしゃれな杖だったり、高級そうな杖を使っているが、さすがに木刀を杖代わりにしているのは私だけだ。
ちなみにエビルヒュージトレントの木刀であることは内緒にしている。
自慢をしたい気持ちもあるが、自分しか知らない優越感を味わいたいのだ。
オディ兄も言ってないらしい、理由は知らないが。
まあオディ兄の場合、木刀ではなく棒にしか見えないところが面白い。
小回りが利いて重宝しているようだ。
「カース、誕生日おめでとう。六歳になったわね。大きくなってくれて嬉しいわ。もうすっかり魔力量では抜かれちゃったわね。
悔しいけど嬉しいわ。」
おお、この歳で母上の魔力を超えたのか。
これは嬉しい、努力の成果だ。
「そうなの? でも量だけ多くてもだめだよね。」
「えらいわ。その通り。やはりカースは天才ね! 魔法使いは、魔力総量、発動速度、精密制御の三拍子揃ってないとだめなの。
それに比べたら使える魔法の種類なんて少なくても構わないぐらいよ。
オディロンの掃除魔法を参考にするのもいいわね。」
「へーさすがオディ兄、すごいんだね。僕にもできるかなぁ。」
「カースならできるさ。水と風と火の魔法を組み合わせてるだけだからさ。」
本当か? ハイレベルなことをしてるんじゃないか?
でもウリエン兄上もそうだが、兄が優秀だと誇らしくていい気分だ。
「ちなみにマリーも掃除魔法は使えるの?」
「いや、これは僕しか使えないよ。今のところね。だから『汚れを落とす』ことにかけては僕はマリーよりすごいんだよ。」
「すごーい! オディ兄かっこいい!」
「えへへ、そうかな。ちなみに服を洗濯した後の魔法もあるんだよ。
乾燥魔法と圧縮魔法さ。
乾燥魔法はカースでも難しいと思うよ。
何せ服の傷みを気にしないといけないからね。」
圧縮魔法の方が気になるんだが。
乾燥魔法の方が難しいのか。
多分、制御の領域なんだろうな。
制御なら負けないぞ。
最近はなるべく離れた所に水で輪を作り、その中心を土や鉄を風で操って通す修行をやっている。
始めは三種類同時制御なんて可能なはずもなかったが、今は余裕だ。
段々輪も小さくしているし、距離も離している。速度も上げている。
離れた場所の制御ができるようになれば火の魔法も鍛えることができる。
ようやくマッチの火から先に行けそうだ。
「そういえばカース、コンスタンタン君は学校に来ているか?」
いきなり父上が妙な質問をしてきた。
「いや、そういえば見てないよ。」
忘れてた。全然学校に来てない。
不登校か? あれだけ好き勝手に振る舞えるのに休むことなんかないだろうに。
「そうか。それならいいんだ。」
父上は何か知ってるのかな?
まあ興味ないからどうでもいいけど。
「オディロン、カース。よく聞きなさい。私達は下級とは言え貴族なの。
貴族の役目はただ一つ、領地を守ることなの。それが王を守ることに繋がるし、国を守ることにも繋がるの。
厳密に言えば私達の領地なんてこの家しかないわ。でも実際はこのクタナツの街が領地とも言える。
だから私達はクタナツの平和を脅かす輩は排除しなければならないの。
その一つに平民があるわ。平民は国にとって大事な資源なの。そんな大事な平民を蔑ろにするような者に貴族の資格はないわ。
貴族の資格を失うということは、命を失うことと同じ場合もあるわ。
コンスタンタン君の軽挙な振る舞い、それを掣肘しようともしない親、貴族はそんなことで簡単に命を失うこともあるの。
無知な平民であれば『知らなかった』で済むことも、貴族には許されないのよ。分かったわね?」
「「押忍、母上!」」
「やっぱり貴方達はえらいわね。私の自慢の息子よ。」
「ついでだから言っておくぞ。
俺はそもそも騎士やら貴族やらになる気はなかった。しかしイザベルと結婚するためにはなるしかなかったんだ。
お前達が立派な大人になったら俺はわざわざ騎士なんかやる必要がなくなる。貴族として生きる必要もなくなるわけだ。
しかしそこで、同じ問題が出てくる。お前達に結婚したい相手ができたとしよう。
それがもしイザベルのような上級貴族の娘だったらどうする?
その時に俺が騎士を辞めて平民になっていたら、お前達は自力で出世し貴族にならなければいけなくなる。
どうするオディロン?」
「えー、いきなり難しいよ。
結婚とかそんな話をするなら僕はマリーしか見えてないよ?」
いきなり重い話をブッ込んできた父上も相当だが、オディ兄もブレない。
うちの兄弟はみんなブレないのか?
「本当にマリーが欲しいなら金を積め。金を積んで俺から買え。
ただしマリーが了解すればの話だがな。
マリーは奴隷だが、今や金で買える程度の奴隷ではない。本当に欲しいなら金貨で百枚持ってこい。」
何言ってんだこの親父!
息子に奴隷を売るだと!?
原価はいくらなんだ?
「そしてカース! もしお前がアレックスちゃんと結婚したいと思ったらどうする?」
「ええー難しいよー。アレックスちゃんは騎士長の子供なんだよね?
だったら最低でも騎士にならないといけないのかな?
でも僕は騎士にはなりたくないんだよね。だったら拐って逃げるしかないよ。」
「まあ。カースったら男らしい答えね。その時は私達に言うのよ? 助言ぐらいしてあげるから。」
「いやいや、そもそもアレックスちゃんみたいな面倒そうな女の子は嫌だよー。」
「なんだカース、女の子にはガンガン行かないとだめだぞ。どんなタイプでも落とせて一人前だ。
そうしてこそ、本当の魅力を持った女性と巡り会えるんだぞ、イザベルのような最高の女とな。」
「まあアナタったら。最高の女だなんて……//」
「お前は年々綺麗になるよ。」
「貴方こそ渋味がたまりませんわ。」
「イザベル……」「アナタ……」
結局これかよ。
重い話から今後の忠告かと思ったらこれかよ。
マジでこの親父は好色騎士なんだろうな。
さすがにこの歳で結婚なんか考えたくないな。貴族は大変だ。
この世界に転生して六年、ぼんやりと物心ついて四年と少し。前世の四年より濃い時間を過ごしている気がする。
木刀もいつのまにか錬魔循環できるようになり、すっかり体の一部と化している。
みんなはおしゃれな杖だったり、高級そうな杖を使っているが、さすがに木刀を杖代わりにしているのは私だけだ。
ちなみにエビルヒュージトレントの木刀であることは内緒にしている。
自慢をしたい気持ちもあるが、自分しか知らない優越感を味わいたいのだ。
オディ兄も言ってないらしい、理由は知らないが。
まあオディ兄の場合、木刀ではなく棒にしか見えないところが面白い。
小回りが利いて重宝しているようだ。
「カース、誕生日おめでとう。六歳になったわね。大きくなってくれて嬉しいわ。もうすっかり魔力量では抜かれちゃったわね。
悔しいけど嬉しいわ。」
おお、この歳で母上の魔力を超えたのか。
これは嬉しい、努力の成果だ。
「そうなの? でも量だけ多くてもだめだよね。」
「えらいわ。その通り。やはりカースは天才ね! 魔法使いは、魔力総量、発動速度、精密制御の三拍子揃ってないとだめなの。
それに比べたら使える魔法の種類なんて少なくても構わないぐらいよ。
オディロンの掃除魔法を参考にするのもいいわね。」
「へーさすがオディ兄、すごいんだね。僕にもできるかなぁ。」
「カースならできるさ。水と風と火の魔法を組み合わせてるだけだからさ。」
本当か? ハイレベルなことをしてるんじゃないか?
でもウリエン兄上もそうだが、兄が優秀だと誇らしくていい気分だ。
「ちなみにマリーも掃除魔法は使えるの?」
「いや、これは僕しか使えないよ。今のところね。だから『汚れを落とす』ことにかけては僕はマリーよりすごいんだよ。」
「すごーい! オディ兄かっこいい!」
「えへへ、そうかな。ちなみに服を洗濯した後の魔法もあるんだよ。
乾燥魔法と圧縮魔法さ。
乾燥魔法はカースでも難しいと思うよ。
何せ服の傷みを気にしないといけないからね。」
圧縮魔法の方が気になるんだが。
乾燥魔法の方が難しいのか。
多分、制御の領域なんだろうな。
制御なら負けないぞ。
最近はなるべく離れた所に水で輪を作り、その中心を土や鉄を風で操って通す修行をやっている。
始めは三種類同時制御なんて可能なはずもなかったが、今は余裕だ。
段々輪も小さくしているし、距離も離している。速度も上げている。
離れた場所の制御ができるようになれば火の魔法も鍛えることができる。
ようやくマッチの火から先に行けそうだ。
「そういえばカース、コンスタンタン君は学校に来ているか?」
いきなり父上が妙な質問をしてきた。
「いや、そういえば見てないよ。」
忘れてた。全然学校に来てない。
不登校か? あれだけ好き勝手に振る舞えるのに休むことなんかないだろうに。
「そうか。それならいいんだ。」
父上は何か知ってるのかな?
まあ興味ないからどうでもいいけど。
「オディロン、カース。よく聞きなさい。私達は下級とは言え貴族なの。
貴族の役目はただ一つ、領地を守ることなの。それが王を守ることに繋がるし、国を守ることにも繋がるの。
厳密に言えば私達の領地なんてこの家しかないわ。でも実際はこのクタナツの街が領地とも言える。
だから私達はクタナツの平和を脅かす輩は排除しなければならないの。
その一つに平民があるわ。平民は国にとって大事な資源なの。そんな大事な平民を蔑ろにするような者に貴族の資格はないわ。
貴族の資格を失うということは、命を失うことと同じ場合もあるわ。
コンスタンタン君の軽挙な振る舞い、それを掣肘しようともしない親、貴族はそんなことで簡単に命を失うこともあるの。
無知な平民であれば『知らなかった』で済むことも、貴族には許されないのよ。分かったわね?」
「「押忍、母上!」」
「やっぱり貴方達はえらいわね。私の自慢の息子よ。」
「ついでだから言っておくぞ。
俺はそもそも騎士やら貴族やらになる気はなかった。しかしイザベルと結婚するためにはなるしかなかったんだ。
お前達が立派な大人になったら俺はわざわざ騎士なんかやる必要がなくなる。貴族として生きる必要もなくなるわけだ。
しかしそこで、同じ問題が出てくる。お前達に結婚したい相手ができたとしよう。
それがもしイザベルのような上級貴族の娘だったらどうする?
その時に俺が騎士を辞めて平民になっていたら、お前達は自力で出世し貴族にならなければいけなくなる。
どうするオディロン?」
「えー、いきなり難しいよ。
結婚とかそんな話をするなら僕はマリーしか見えてないよ?」
いきなり重い話をブッ込んできた父上も相当だが、オディ兄もブレない。
うちの兄弟はみんなブレないのか?
「本当にマリーが欲しいなら金を積め。金を積んで俺から買え。
ただしマリーが了解すればの話だがな。
マリーは奴隷だが、今や金で買える程度の奴隷ではない。本当に欲しいなら金貨で百枚持ってこい。」
何言ってんだこの親父!
息子に奴隷を売るだと!?
原価はいくらなんだ?
「そしてカース! もしお前がアレックスちゃんと結婚したいと思ったらどうする?」
「ええー難しいよー。アレックスちゃんは騎士長の子供なんだよね?
だったら最低でも騎士にならないといけないのかな?
でも僕は騎士にはなりたくないんだよね。だったら拐って逃げるしかないよ。」
「まあ。カースったら男らしい答えね。その時は私達に言うのよ? 助言ぐらいしてあげるから。」
「いやいや、そもそもアレックスちゃんみたいな面倒そうな女の子は嫌だよー。」
「なんだカース、女の子にはガンガン行かないとだめだぞ。どんなタイプでも落とせて一人前だ。
そうしてこそ、本当の魅力を持った女性と巡り会えるんだぞ、イザベルのような最高の女とな。」
「まあアナタったら。最高の女だなんて……//」
「お前は年々綺麗になるよ。」
「貴方こそ渋味がたまりませんわ。」
「イザベル……」「アナタ……」
結局これかよ。
重い話から今後の忠告かと思ったらこれかよ。
マジでこの親父は好色騎士なんだろうな。
さすがにこの歳で結婚なんか考えたくないな。貴族は大変だ。
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