閉じたまぶたの裏側で

櫻井音衣

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恋の返り血

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「飲みに行くか?それとも家飲み?」
「酔ってもいいように家飲みにしよう。それからケーキもたこ焼きもポテチも食べたい」
「よし、任せとけ!今日はなんでも好きな物奢ってやる!!買い出し行こう!」
「うん!」

なくした恋はもう戻らない。
私は勲とは幸せにはなれなかったけど、お互いにこれ以上不幸せにならないように、そしてこれ以上誰かを傷付けないように、この恋に終止符を打った事は、後悔していない。
そう思えたのは、應汰のおかげかも知れない。
これは應汰なりに慰めてくれているのか、それとも應汰自身が飲まなきゃやっていられなかったのかはわからない。
だけど應汰の胸で思いきり泣いて、ほんの少し心が軽くなったような気がした。

應汰は約束通り、たくさんのお酒とおつまみ、それからケーキもたこ焼きもポテチも買ってくれた。
私の部屋で始めた飲み会を、應汰は『失恋パーティー』と言った。
夕方から飲み始め、どうでもいい話をして笑い、テレビのお笑い番組を観ながら大笑いして、またお酒を飲んだ。
夜になり買ってきたお酒がもうすぐなくなるという頃には、二人とも相当酔っていた。
私は應汰の肩に体の重みを預けながら、目を閉じて酔った頭でぼんやりと勲の事を考える。

「ねぇ應汰……。私ね……いつも、帰らないでって言えなかったんだ」
「うん……」
「帰らないでって言いたいのに……いつも、帰ってって言ってた」

あんなに泣いてもう枯れたかと思ったのに、涙がまた溢れて頬を伝った。
應汰は何も言わず私の肩を抱き寄せ頭を撫でる。

「私以外にあの人の帰るべき場所ができて……普通の恋人同士だった頃はなんのためらいもなく言えた事が、言えなくなっちゃったんだ」
「……言いたいのか?帰らないで、って」
「うん……」
「あの人に言えなかった代わりに言うの?……俺に」
「……やっぱりやめとく」

少し笑ってため息をつくと、應汰は私を抱きしめて、涙で濡れた私の頬に口付けた。

「言えよ。代わりじゃなくて、俺に言え。芙佳が望むなら、俺が朝まで抱いてやる」

耳元で囁く應汰の熱い吐息と甘い言葉に、私の満たされなかった心と渇いた体の奥がゾクリと疼いた。
その瞬間、私の中では理性が音をたてて崩れ落ち、友達の境界線を一瞬で消し去ってしまう。

「應汰……帰らないで……。一緒にいて……」

その言葉はいとも簡単に私の口からこぼれ落ちた。
應汰は私を膝の上に横抱きにして、唇に軽くキスをして笑った。

「いい子だ。いくらでも一緒にいてやるから、好きなだけ俺に甘えろ」

横抱きのまま私をベッドに運ぶと、應汰はシャツを脱ぎ捨てて私に覆い被さった。

「今日は最後まで残さず食うからな。覚悟しろよ」

應汰は肉食獣みたいな言葉を吐きながら私の服を脱がせて、優しいキスをした。
私たちはベッドの上で何度も甘いキスをして、寂しさを埋めるように、飽きる事なくお互いの温もりを求め合った。
應汰は温かく大きな手で私の肌を撫で、柔らかい舌と唇で愛しそうに全身に触れて、何度も私の名前を呼びながら、柔らかい部分に口付け長い指で私の中を探った。
私は應汰に与えられる快感に息を荒くして甘い声をあげ、何も考えられなくなるほど乱されて、頭が真っ白になる。
私が何度果てても、應汰はそれをやめようとしない。

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