閉じたまぶたの裏側で

櫻井音衣

文字の大きさ
上 下
12 / 52
男友達の裏の顔

しおりを挟む
「……芙佳、目ぇ開けろ」
「え……?」

ゆっくりとまぶたを開くと、應汰が私をじっと見つめていた。

「目ぇ閉じて他の男の事なんか考えてんな。今芙佳に触ってんのは俺だ」

何も言わなくても應汰には見透かされているんだ。
私が迷っていることも、流されようとしても思いきれないことも。
こんな中途半端な気持ちで應汰と抱き合うことなんてできない。

「ごめん……やっぱり私……」
「結婚したいくらい芙佳が好きだって言ってる俺より、どんなに一緒にいても先のない男の方がいいのか?」
「……わかんないよ……。ちゃんと考える時間が欲しいの。應汰とはいい加減な気持ちでしたくない」

應汰は私の顔をじっと見つめたあと、ため息をついて私から手を離した。
私の気持ちをわかってくれたようだと、ホッと胸を撫で下ろす。

「俺はいい加減な気持ちなんかじゃないよ。芙佳が俺と結婚したいって言うなら、今すぐにだってできる」

低い声でそう言ってシャツを羽織った應汰は、ベッドの上にうずくまっている私のそばに座り頬にキスをした。

「芙佳……先のないようなつまんねぇ男なんかやめて、潔く俺の嫁になれ。そうすれば一生芙佳だけ愛してやる」
「だから……いきなり過ぎるでしょ……」
「本心だからしょうがないじゃん。言っとくけど、俺しつこいよ?芙佳がいいって言うまで食い下がるからな」

この真剣な目を見れば、冗談で言っているのではないということはわかる。
それにしても、しつこいとか食い下がるって……一体何をするつもりなんだろう?

「本気で言ってる……?」
「本気だから芙佳が俺の事好きになるまで、全部食うのは待ってやる」

かなり肉食系俺様な気もするけど、寝込みを襲わないとか無理やりしないとか、こういうところはいいやつだ。

「もうただの友達のふりはやめだ。これからは遠慮なくガンガン行くから覚悟してろ」
「うーん……。会社ではわきまえてよ」
「大丈夫だ。なんかあったら俺が責任持って芙佳を嫁にもらうから」

かなりグイグイ来るな……。
ちょっと心配だけど、好きだと言う気持ちを正面からぶつけられるのは、不思議とイヤな気がしない。

「とりあえず明日デートしよう。まずはそこからだ」
「デートって……」
「焦ってがっついて芙佳に嫌われたくないからな。ちゃんと手順踏んでく事にする」

いやいや、既にかなり手順バラバラだと思うんだけどな。
付き合ってもないのにいきなりプロポーズするし、強引にキスして食っちゃおうとするし、その後にデートの申し込みって……。
それでも應汰が私を本気で想ってくれていることと、應汰なりに私の気持ちを考えてくれているんだということだけはわかる。

「俺の事、ちゃんと知りもしないうちに断るなよ」

應汰はなかなか返事をしない私を後ろからギュッと抱きしめて、耳元でボソッと切なげに呟いた。

「……わかった、受けてたつ」
「絶対惚れさせてみせるからな」
「のぞむところだ」
「言ったな、こいつ」

應汰は軽口を叩きながら、じゃれるように私を抱きしめた。
應汰が真剣に私を想ってくれているのなら、私も真剣に考えよう。
いくら好きでも先のない勲との不毛な関係を断ち切るのは、私しかいない。
私だけを一生愛してくれると言った應汰の気持ちに応えられるのも、私しかいない。
私にだって幸せを求める権利くらいはあるはずだ。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...