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取り急ぎ結婚した私たちですが、病めるときも健やかなるときも幾久しく全力で愛し合うことを誓います
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「明日は一日中モモとイチャイチャしようと思ってたけど、これからいくらでもできるし……やっぱ明日はデートしようか」
「どこに行くの?」
「二人が楽しいと思うところならどこでも」
「二人が楽しいと思うところと言えば……」
私たちは少し考えてから顔を見合わせ、同時に口を開く。
「フルモト!」
まったく同じタイミングで声を合わせて叫んだのが、よりによってマンションの目の前の『リサイクル古本』だったことがあまりにもおかしくて、二人して吹き出してしまった。
二人が同じことを考えているのは嬉しい気もしたけれど、それはデートと呼べるのか?
デートの場所にフルモトを選ぶところがヲタクな私たちらしいと言えば私たちらしい。
「たしかにフルモトは楽しいけど……それってデートじゃなくない?」
「フルモト以外のとこも行けばいいじゃん。ゲーセンとか、コミランとか?」
『コミラン』と言うのは駅前にある漫画専門店『コミックランド』のことで、フルモトと並ぶ私の行き付けの店だ。
そういえば最近忙しかったので『コミラン』にはしばらく行っていないし、漫画を読んだりゲームをしたりする余裕もなかった。
そうか、何も無理して遠出したり、オシャレなデートをしようとしなくても、私たちなりの楽しみ方をすればいいんだ。
「近所ばっかりだね。だったら田沢屋の蜂蜜饅頭とポパイミートのじゃがバタコロッケも久々に食べたいな」
「俺も!買って帰って、食べながらゲームする?」
「する!」
二人で抱き合って過ごす甘い時間も幸せだけど、ヲタクの私たちにとって好きなことを思いきり楽しむ時間は、それと同じくらい大切だ。
できれば今までと同じようにお互いの趣味は尊重したいし、これまで以上に楽しさを共有できればいいなと思う。
「じゃあ明日はその方向で決まりな。今日は疲れただろうし、時間ももう遅いからそろそろ寝るか」
「そうだね」
ビールの空き缶やおつまみの残りを二人で片付けて一緒にベッドに横になると、尚史は私の手を握り指を絡めた。
繋いだ手からぬくもりが伝わって、すぐ隣に尚史がいることが嬉しくて、胸の奥がキュンと甘い音をたてる。
「告白とか付き合ったりとか、恋愛するよりさきに結婚したけど……その分これからはデートとか旅行なんかもしてさ、二人で楽しい思い出いっぱい作っていこうね」
「もちろん。でも俺はモモと一緒にいられるだけで嬉しいし楽しいよ。モモが俺の隣で安心して笑ってくれるのが一番幸せだから。ここまで長い道のりだったけど……あきらめなくて良かった。これからずっとモモと一緒にいられるんだもんな」
尚史は私の頬にそっとキスをして幸せそうに笑った。
少し前までは『現実の恋愛や結婚なんてめんどくさいから、そんなのは二次元だけでじゅうぶん!』と思っていた。
漫画のヒーローは本気で私を好きになってはくれないし、優しく抱きしめてもくれないけれど、今私には心から愛しいと想う人がいて、一緒に笑ったり些細なことで喧嘩したり、抱きしめ合って気持ちを伝えたりできることは、本当に幸せだと思う。
取り急ぎ結婚した幼馴染みの私たちは、互いを想う気持ちを大切にして、どんな困難も二人で乗り越え、健やかなるときも病めるときも、幾久しく全力で愛し合うことをここに誓います。
尚史へ。
私を誰よりも愛してくれて、宇宙一幸せなお嫁さんにしてくれてありがとう。
共に歳を重ねた数十年後にも、いつか生まれ変わっても、『愛してる』と言って一緒に笑おうね。
モモより。
─END─
「どこに行くの?」
「二人が楽しいと思うところならどこでも」
「二人が楽しいと思うところと言えば……」
私たちは少し考えてから顔を見合わせ、同時に口を開く。
「フルモト!」
まったく同じタイミングで声を合わせて叫んだのが、よりによってマンションの目の前の『リサイクル古本』だったことがあまりにもおかしくて、二人して吹き出してしまった。
二人が同じことを考えているのは嬉しい気もしたけれど、それはデートと呼べるのか?
デートの場所にフルモトを選ぶところがヲタクな私たちらしいと言えば私たちらしい。
「たしかにフルモトは楽しいけど……それってデートじゃなくない?」
「フルモト以外のとこも行けばいいじゃん。ゲーセンとか、コミランとか?」
『コミラン』と言うのは駅前にある漫画専門店『コミックランド』のことで、フルモトと並ぶ私の行き付けの店だ。
そういえば最近忙しかったので『コミラン』にはしばらく行っていないし、漫画を読んだりゲームをしたりする余裕もなかった。
そうか、何も無理して遠出したり、オシャレなデートをしようとしなくても、私たちなりの楽しみ方をすればいいんだ。
「近所ばっかりだね。だったら田沢屋の蜂蜜饅頭とポパイミートのじゃがバタコロッケも久々に食べたいな」
「俺も!買って帰って、食べながらゲームする?」
「する!」
二人で抱き合って過ごす甘い時間も幸せだけど、ヲタクの私たちにとって好きなことを思いきり楽しむ時間は、それと同じくらい大切だ。
できれば今までと同じようにお互いの趣味は尊重したいし、これまで以上に楽しさを共有できればいいなと思う。
「じゃあ明日はその方向で決まりな。今日は疲れただろうし、時間ももう遅いからそろそろ寝るか」
「そうだね」
ビールの空き缶やおつまみの残りを二人で片付けて一緒にベッドに横になると、尚史は私の手を握り指を絡めた。
繋いだ手からぬくもりが伝わって、すぐ隣に尚史がいることが嬉しくて、胸の奥がキュンと甘い音をたてる。
「告白とか付き合ったりとか、恋愛するよりさきに結婚したけど……その分これからはデートとか旅行なんかもしてさ、二人で楽しい思い出いっぱい作っていこうね」
「もちろん。でも俺はモモと一緒にいられるだけで嬉しいし楽しいよ。モモが俺の隣で安心して笑ってくれるのが一番幸せだから。ここまで長い道のりだったけど……あきらめなくて良かった。これからずっとモモと一緒にいられるんだもんな」
尚史は私の頬にそっとキスをして幸せそうに笑った。
少し前までは『現実の恋愛や結婚なんてめんどくさいから、そんなのは二次元だけでじゅうぶん!』と思っていた。
漫画のヒーローは本気で私を好きになってはくれないし、優しく抱きしめてもくれないけれど、今私には心から愛しいと想う人がいて、一緒に笑ったり些細なことで喧嘩したり、抱きしめ合って気持ちを伝えたりできることは、本当に幸せだと思う。
取り急ぎ結婚した幼馴染みの私たちは、互いを想う気持ちを大切にして、どんな困難も二人で乗り越え、健やかなるときも病めるときも、幾久しく全力で愛し合うことをここに誓います。
尚史へ。
私を誰よりも愛してくれて、宇宙一幸せなお嫁さんにしてくれてありがとう。
共に歳を重ねた数十年後にも、いつか生まれ変わっても、『愛してる』と言って一緒に笑おうね。
モモより。
─END─
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なかしん様
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけて嬉しいです☺️
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