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取り急ぎ結婚した私たちですが、病めるときも健やかなるときも幾久しく全力で愛し合うことを誓います
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「どうしたの?忘れ物?」
「あっぶねぇ……めちゃくちゃ大事なもん忘れるとこだった」
「めちゃくちゃ大事なもん?」
「結婚指輪だよ。これ忘れたらシャレにならん、指輪の交換ができないからな」
そうだ、結婚指輪は結婚式での指輪の交換までは大事に取っておこうとしまっていたんだった。
「尚史が気付いてくれて良かったよ……。私は指輪のことなんてまったく頭になかった」
「だろうな。俺もさっきまでは完全に忘れ去ってた」
そう言って尚史は結婚指輪の入った箱を私のバッグに押し込んだ。
「やっと結婚指輪はめられるな」
「やっとって……そんなに待ち遠しかった?」
「早くモモと同じ指輪つけたいってのもあるけど、会社で俺が結婚したって言っても、あんまり信じてもらえないんだ。左の薬指に指輪してたら、結婚してるって一目でわかるだろ?」
それは尚史に群がる女子をあしらうための、虫除け的なアレか?
尚史が結婚していても関係なく誘って来る女子はいるだろうけど、尚史は結婚指輪を見せつけて誘いを断るつもりなのだな?
「モテるのも大変なんだね」
「大変って言うか、適当にあしらうのもめんどくさいから。俺はモモ以外の女には興味ないしな」
尚史は玄関の鍵を掛けながら当たり前のようにそう言ったけれど、モテるイケメンを夫にするのはそれなりの覚悟がいるのだと私は思う。
これは私もうかうかしていられない。
尚史がずっと『モモ以外の女には興味ない』と言ってくれるように自分磨きをしなくては。
「あ……もう一個忘れ物」
そう言って尚史は今掛けたばかりの鍵を開ける。
「また?」
今度はハンカチでも忘れたのかと思っていると、尚史はドアを開けて私を玄関に引っ張り込んだ。
「今日は寝過ごしておはようのキスも忘れてた」
尚史はドアを閉めて私の唇に軽く口付ける。
「俺がキスしたいのも好きなのも一生モモだけだから、心配しなくていいよ」
「ホントかなぁ……」
「ホントに。俺は一生モモだけを愛し続けるって今日神様に誓うから、『行ってきます』と『行ってらっしゃい』のキスもさせてくれる?」
「尚史がそこまで言うなら」
私たちは軽く触れ合うだけのキスを二度繰り返し、ギュッと抱きしめ合った。
どんなときも尚史の頭の中は私でいっぱいらしい。
それは私にとってとても幸せなことだから、これからもずっとそうあって欲しいと思う。
「それじゃあ……今度こそ行こうか、奥さん?」
「うん……」
そうか、私は尚史の奥さんになったんだ。
改めて『奥さん』なんて言われると、ちょっと照れくさくてくすぐったい気持ちになる。
玄関を出て鍵を掛け、エレベーターに乗り込むと、尚史は私の手を握った。
「なんか……やっぱちょっと、緊張するな」
「尚史でも緊張するの?」
「当たり前だろ。ほとんどあきらめてた昔からの夢が、今日は現実になるんだから」
昔からって……一体いつ頃から尚史はそんな夢を見ていたんだ?
『君と結婚するのが夢だった』とか、そんな風に思ってもらえるほどのいい女でもないのに、なんだか申し訳ない。
尚史はそんな私の思いなど知るよしもなく、嬉しそうな顔をして笑っている。
「楽しみだなぁ……モモの花嫁姿……」
「あんまりハードル上げないで……。尚史、前に言ってたよ。何着たってモモはモモだって」
「ああ……あれは何着てたってモモは可愛いって意味なんだけどな。今日ばっかりは特別だろ?可愛くないわけがない」
ここまでくると完全な『モモヲタ』だ。
よく『恋は盲目』と言うけれど、尚史の目は完全にイカれているらしい。
そのイカれた目で、生涯私だけを見ていてくれたらいいなと思う。
エレベーターが1階に到着してドアが開くと、尚史は握っていた私の手をそっと離した。
「ホントはずっと繋いでたいけど、やっぱ親の前では照れくさいよな」
「それな」
ずっと幼馴染みで仲良くしていたとは言え、親の前で手を繋いでいたのなんか小学校に上がってすぐの頃までだ。
だけど結婚して一緒に暮らしている時点で、それなりに夫婦らしいことをしているのは、親たちもわかっているんだろう。
そう考えるとなんだか妙に恥ずかしい。
「あっぶねぇ……めちゃくちゃ大事なもん忘れるとこだった」
「めちゃくちゃ大事なもん?」
「結婚指輪だよ。これ忘れたらシャレにならん、指輪の交換ができないからな」
そうだ、結婚指輪は結婚式での指輪の交換までは大事に取っておこうとしまっていたんだった。
「尚史が気付いてくれて良かったよ……。私は指輪のことなんてまったく頭になかった」
「だろうな。俺もさっきまでは完全に忘れ去ってた」
そう言って尚史は結婚指輪の入った箱を私のバッグに押し込んだ。
「やっと結婚指輪はめられるな」
「やっとって……そんなに待ち遠しかった?」
「早くモモと同じ指輪つけたいってのもあるけど、会社で俺が結婚したって言っても、あんまり信じてもらえないんだ。左の薬指に指輪してたら、結婚してるって一目でわかるだろ?」
それは尚史に群がる女子をあしらうための、虫除け的なアレか?
尚史が結婚していても関係なく誘って来る女子はいるだろうけど、尚史は結婚指輪を見せつけて誘いを断るつもりなのだな?
「モテるのも大変なんだね」
「大変って言うか、適当にあしらうのもめんどくさいから。俺はモモ以外の女には興味ないしな」
尚史は玄関の鍵を掛けながら当たり前のようにそう言ったけれど、モテるイケメンを夫にするのはそれなりの覚悟がいるのだと私は思う。
これは私もうかうかしていられない。
尚史がずっと『モモ以外の女には興味ない』と言ってくれるように自分磨きをしなくては。
「あ……もう一個忘れ物」
そう言って尚史は今掛けたばかりの鍵を開ける。
「また?」
今度はハンカチでも忘れたのかと思っていると、尚史はドアを開けて私を玄関に引っ張り込んだ。
「今日は寝過ごしておはようのキスも忘れてた」
尚史はドアを閉めて私の唇に軽く口付ける。
「俺がキスしたいのも好きなのも一生モモだけだから、心配しなくていいよ」
「ホントかなぁ……」
「ホントに。俺は一生モモだけを愛し続けるって今日神様に誓うから、『行ってきます』と『行ってらっしゃい』のキスもさせてくれる?」
「尚史がそこまで言うなら」
私たちは軽く触れ合うだけのキスを二度繰り返し、ギュッと抱きしめ合った。
どんなときも尚史の頭の中は私でいっぱいらしい。
それは私にとってとても幸せなことだから、これからもずっとそうあって欲しいと思う。
「それじゃあ……今度こそ行こうか、奥さん?」
「うん……」
そうか、私は尚史の奥さんになったんだ。
改めて『奥さん』なんて言われると、ちょっと照れくさくてくすぐったい気持ちになる。
玄関を出て鍵を掛け、エレベーターに乗り込むと、尚史は私の手を握った。
「なんか……やっぱちょっと、緊張するな」
「尚史でも緊張するの?」
「当たり前だろ。ほとんどあきらめてた昔からの夢が、今日は現実になるんだから」
昔からって……一体いつ頃から尚史はそんな夢を見ていたんだ?
『君と結婚するのが夢だった』とか、そんな風に思ってもらえるほどのいい女でもないのに、なんだか申し訳ない。
尚史はそんな私の思いなど知るよしもなく、嬉しそうな顔をして笑っている。
「楽しみだなぁ……モモの花嫁姿……」
「あんまりハードル上げないで……。尚史、前に言ってたよ。何着たってモモはモモだって」
「ああ……あれは何着てたってモモは可愛いって意味なんだけどな。今日ばっかりは特別だろ?可愛くないわけがない」
ここまでくると完全な『モモヲタ』だ。
よく『恋は盲目』と言うけれど、尚史の目は完全にイカれているらしい。
そのイカれた目で、生涯私だけを見ていてくれたらいいなと思う。
エレベーターが1階に到着してドアが開くと、尚史は握っていた私の手をそっと離した。
「ホントはずっと繋いでたいけど、やっぱ親の前では照れくさいよな」
「それな」
ずっと幼馴染みで仲良くしていたとは言え、親の前で手を繋いでいたのなんか小学校に上がってすぐの頃までだ。
だけど結婚して一緒に暮らしている時点で、それなりに夫婦らしいことをしているのは、親たちもわかっているんだろう。
そう考えるとなんだか妙に恥ずかしい。
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