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恋する女は女を敵とし、人は誰しも恋をするとバカになる(要するに愛しい君の一番になりたい)

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「新しい男ができたのに、なんでそんなもん早く消さなかったんだろうな。取っとくにしてもさ、普通はロック掛けんじゃん?ってか、そんな画像が入ったパソコンを彼氏に使わせるか?」

キヨが呆れた顔をしながらそう言って、出来上がったオムライスを私と尚史の前に置いた。

「水野はその辺の詰めが甘いんだ。だから俺も隠しカメラに気付いたし、パソコンいじったりデータが消えるプログラム組んだりしても全然気付かれなかった。でもそうか……全部消せたかと思ってたけど残ってたんだな。そんでどうなった?」
「パソコンの中だけじゃなくて、男が部屋の中調べたらしい。大量の尚史の写真とか、機種変して使ってなかったスマホが入った箱とか見つけて、スマホの中に残してた尚史の画像やら動画なんかも全部見られたんだってさ」

その結果、自分が身代わりにされていたことに気付いてショックを受けた彼は、呆気なく水野さんの元を去った。
水野さんは結婚を考えるくらいに彼を好きになっていた分だけ、彼に別れを告げられたことはとてもつらかったそうだ。
その後、別の人からのストーカー被害を受けて恐怖を味わったり、同僚の奥さんから不倫を疑われて揉めたりと散々だったらしい。
心身ともに参っていたところに海外赴任の話が持ち上がり、新天地で頑張るつもりだと言っていたそうだ。
『彼のことはまだ完全には立ち直れてないけど、私が悪いんだからあきらめるしかないよね。あのときヒサが私のことを好きになってくれてたら、一緒に幸せになれたのかなって今でもときどき考えたりもするけど、自分が過去にしてきたことのバチが当たったんだと思う』と水野さんは言ったらしい。
自業自得と言えば自業自得だ。
水野さんもそれをわかっているから、いまさらでも尚史に謝ろうと思ったんだろう。

「水野は今日の朝にはイタリアの新しい赴任先に向かったはずだよ。ここにはもう来ないし、二人には二度と関わらないって。だから尚史とモモさんに謝っておいて欲しいって言われた。尚史のことが本気で好きだったから、本当は笑って『お幸せに』って言いたかったんだってさ」
「だったら最初から素直にそう言えばいいのに……」

尚史は少しつらそうにそう言ってビールを飲み干した。
きっと私と間違えて水野さんと関係を持ってしまった自分を責めているんだと思う。
そのことがなければ、尚史は水野さんと友達のままでいられたかも知れないし、水野さんも尚史に身代わりの関係を持ちかけたりはしなかったかも知れない。
せめて尚史が身代わりの関係をキッパリ拒むことができていれば、尚史も水野さんもここまで苦しむことはなかっただろう。
過ぎてしまったことを『あのときああしていたら』とか『こうしていなければ』と考えてもどうにもならないけれど、自分の過ちを悔やんでいるなら、これから先の人生では同じ失敗を繰り返すことはないんじゃないだろうか。

「そういえば……学生時代にモモさんに男を紹介してた女の子がいたんだろ?」
「ああ、うん。いたね」
「モモさんのこと気に入ってる男がいるから紹介してやってくれって、その子に頼んでたのも水野だって。水野はその子がモモさんの友達だって知ってて、その子と同じ予備校選んで、声掛けて友達になったらしい。モモさんに彼氏ができれば、尚史がモモさんをあきらめるだろうって思ったんだってさ」
「えーっ……高校時代からそんな根回しされてたの……?」

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