210 / 240
恋する女は女を敵とし、人は誰しも恋をするとバカになる(要するに愛しい君の一番になりたい)
9
しおりを挟む
「新しい男ができたのに、なんでそんなもん早く消さなかったんだろうな。取っとくにしてもさ、普通はロック掛けんじゃん?ってか、そんな画像が入ったパソコンを彼氏に使わせるか?」
キヨが呆れた顔をしながらそう言って、出来上がったオムライスを私と尚史の前に置いた。
「水野はその辺の詰めが甘いんだ。だから俺も隠しカメラに気付いたし、パソコンいじったりデータが消えるプログラム組んだりしても全然気付かれなかった。でもそうか……全部消せたかと思ってたけど残ってたんだな。そんでどうなった?」
「パソコンの中だけじゃなくて、男が部屋の中調べたらしい。大量の尚史の写真とか、機種変して使ってなかったスマホが入った箱とか見つけて、スマホの中に残してた尚史の画像やら動画なんかも全部見られたんだってさ」
その結果、自分が身代わりにされていたことに気付いてショックを受けた彼は、呆気なく水野さんの元を去った。
水野さんは結婚を考えるくらいに彼を好きになっていた分だけ、彼に別れを告げられたことはとてもつらかったそうだ。
その後、別の人からのストーカー被害を受けて恐怖を味わったり、同僚の奥さんから不倫を疑われて揉めたりと散々だったらしい。
心身ともに参っていたところに海外赴任の話が持ち上がり、新天地で頑張るつもりだと言っていたそうだ。
『彼のことはまだ完全には立ち直れてないけど、私が悪いんだからあきらめるしかないよね。あのときヒサが私のことを好きになってくれてたら、一緒に幸せになれたのかなって今でもときどき考えたりもするけど、自分が過去にしてきたことのバチが当たったんだと思う』と水野さんは言ったらしい。
自業自得と言えば自業自得だ。
水野さんもそれをわかっているから、いまさらでも尚史に謝ろうと思ったんだろう。
「水野は今日の朝にはイタリアの新しい赴任先に向かったはずだよ。ここにはもう来ないし、二人には二度と関わらないって。だから尚史とモモさんに謝っておいて欲しいって言われた。尚史のことが本気で好きだったから、本当は笑って『お幸せに』って言いたかったんだってさ」
「だったら最初から素直にそう言えばいいのに……」
尚史は少しつらそうにそう言ってビールを飲み干した。
きっと私と間違えて水野さんと関係を持ってしまった自分を責めているんだと思う。
そのことがなければ、尚史は水野さんと友達のままでいられたかも知れないし、水野さんも尚史に身代わりの関係を持ちかけたりはしなかったかも知れない。
せめて尚史が身代わりの関係をキッパリ拒むことができていれば、尚史も水野さんもここまで苦しむことはなかっただろう。
過ぎてしまったことを『あのときああしていたら』とか『こうしていなければ』と考えてもどうにもならないけれど、自分の過ちを悔やんでいるなら、これから先の人生では同じ失敗を繰り返すことはないんじゃないだろうか。
「そういえば……学生時代にモモさんに男を紹介してた女の子がいたんだろ?」
「ああ、うん。いたね」
「モモさんのこと気に入ってる男がいるから紹介してやってくれって、その子に頼んでたのも水野だって。水野はその子がモモさんの友達だって知ってて、その子と同じ予備校選んで、声掛けて友達になったらしい。モモさんに彼氏ができれば、尚史がモモさんをあきらめるだろうって思ったんだってさ」
「えーっ……高校時代からそんな根回しされてたの……?」
キヨが呆れた顔をしながらそう言って、出来上がったオムライスを私と尚史の前に置いた。
「水野はその辺の詰めが甘いんだ。だから俺も隠しカメラに気付いたし、パソコンいじったりデータが消えるプログラム組んだりしても全然気付かれなかった。でもそうか……全部消せたかと思ってたけど残ってたんだな。そんでどうなった?」
「パソコンの中だけじゃなくて、男が部屋の中調べたらしい。大量の尚史の写真とか、機種変して使ってなかったスマホが入った箱とか見つけて、スマホの中に残してた尚史の画像やら動画なんかも全部見られたんだってさ」
その結果、自分が身代わりにされていたことに気付いてショックを受けた彼は、呆気なく水野さんの元を去った。
水野さんは結婚を考えるくらいに彼を好きになっていた分だけ、彼に別れを告げられたことはとてもつらかったそうだ。
その後、別の人からのストーカー被害を受けて恐怖を味わったり、同僚の奥さんから不倫を疑われて揉めたりと散々だったらしい。
心身ともに参っていたところに海外赴任の話が持ち上がり、新天地で頑張るつもりだと言っていたそうだ。
『彼のことはまだ完全には立ち直れてないけど、私が悪いんだからあきらめるしかないよね。あのときヒサが私のことを好きになってくれてたら、一緒に幸せになれたのかなって今でもときどき考えたりもするけど、自分が過去にしてきたことのバチが当たったんだと思う』と水野さんは言ったらしい。
自業自得と言えば自業自得だ。
水野さんもそれをわかっているから、いまさらでも尚史に謝ろうと思ったんだろう。
「水野は今日の朝にはイタリアの新しい赴任先に向かったはずだよ。ここにはもう来ないし、二人には二度と関わらないって。だから尚史とモモさんに謝っておいて欲しいって言われた。尚史のことが本気で好きだったから、本当は笑って『お幸せに』って言いたかったんだってさ」
「だったら最初から素直にそう言えばいいのに……」
尚史は少しつらそうにそう言ってビールを飲み干した。
きっと私と間違えて水野さんと関係を持ってしまった自分を責めているんだと思う。
そのことがなければ、尚史は水野さんと友達のままでいられたかも知れないし、水野さんも尚史に身代わりの関係を持ちかけたりはしなかったかも知れない。
せめて尚史が身代わりの関係をキッパリ拒むことができていれば、尚史も水野さんもここまで苦しむことはなかっただろう。
過ぎてしまったことを『あのときああしていたら』とか『こうしていなければ』と考えてもどうにもならないけれど、自分の過ちを悔やんでいるなら、これから先の人生では同じ失敗を繰り返すことはないんじゃないだろうか。
「そういえば……学生時代にモモさんに男を紹介してた女の子がいたんだろ?」
「ああ、うん。いたね」
「モモさんのこと気に入ってる男がいるから紹介してやってくれって、その子に頼んでたのも水野だって。水野はその子がモモさんの友達だって知ってて、その子と同じ予備校選んで、声掛けて友達になったらしい。モモさんに彼氏ができれば、尚史がモモさんをあきらめるだろうって思ったんだってさ」
「えーっ……高校時代からそんな根回しされてたの……?」
0
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
【完結】※R18 熱視線 ~一ノ瀬君の瞳に囚われた私~
キリン
恋愛
心に古傷を持つ三十路の拗らせ系社畜OLが、同じ部署の仔犬系年下男子に囚われてしまうお話。
※以前公開していたものを全話改稿し、文字数を調整致しました。
お気に入り登録やしおり機能を利用して下さっていた皆様、大変申し訳ありません。
過去投稿分は、朝と夕7時に、二話ずつ公開致していきます。近日中に完結する予定です。
※R15には米印を一つ、R18には米印を二つつけました。
※この作品はムーンライト様の方でも公開しております。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
昨日、課長に抱かれました
美凪ましろ
恋愛
金曜の夜。一人で寂しく残業をしていると、課長にお食事に誘われた! 会社では強面(でもイケメン)の課長。お寿司屋で会話が弾んでいたはずが。翌朝。気がつけば見知らぬ部屋のベッドのうえで――!? 『課長とのワンナイトラブ』がテーマ(しかしワンナイトでは済まない)。
どっきどきの告白やベッドシーンなどもあります。
性描写を含む話には*マークをつけています。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
誤算だらけのケイカク結婚 非情な上司はスパダリ!?
奏井れゆな
恋愛
夜ごと熱く誠実に愛されて……
出産も昇進も諦めたくない営業課の期待の新人、碓井深津紀は、非情と噂されている上司、城藤隆州が「結婚は面倒だが子供は欲しい」と同僚と話している場面に偶然出くわし、契約結婚を持ちかける。 すると、夫となった隆州は、辛辣な口調こそ変わらないものの、深津紀が何気なく口にした願いを叶えてくれたり、無意識の悩みに 誰より先に気づいて相談の時間を作ってくれたり、まるで恋愛結婚かのように誠実に愛してくれる。その上、「深津紀は抱き甲斐がある」とほぼ毎晩熱烈に求めてきて、隆州の豹変に戸惑うばかり。 そんな予想外の愛され生活の中で子作りに不安のある深津紀だったけど…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる