208 / 240
恋する女は女を敵とし、人は誰しも恋をするとバカになる(要するに愛しい君の一番になりたい)
7
しおりを挟む
佐和ちゃんが元カノに仕返しもせず、護身することだけを考えて、黙ってやり過ごした理由がわかった。
そうか、仕返しをすればさらに事が大きくなるというわけだ。
危ない危ない、私の性格からして、水野さんが仕返しをしに来たら倍返しにしてしまうところだった。
今後は何も起こらないことを祈りながら、黙ってやり過ごすのが最善の策だろう。
「あっ、早くしないと昼休み終わっちゃいますよ!」
アキちゃんは店内の壁掛け時計を見上げてそう言うと、慌ててコーヒーを飲み干した。
「ホントだ、急ごう」
私たちも急いでコーヒーを飲み干し、会計を済ませて店を出た。
「昼間からヘビーな話だったわ……。今日はモモを冷やかして楽しもうと思ってたのに」
みっちゃんは釣り銭とレシートを財布にしまいながらため息をついた。
「ごめんね。でも私たち付き合い長いから、人が聞いて面白いようなのろけ話はできないと思うよ」
「そんなことないでしょ、尚史さんはモモにベタ惚れだもん。次は溺愛エピソード聞かせてもらうからね」
みっちゃんめ、私がそういう甘ったるい話をするのは苦手だと知って言っているんだな?
やはり女の敵は女か?
ならば私も負けるわけにはいかない。
「みっちゃんが彼氏の溺愛エピソード聞かせてくれたら、私も話すよ」
「それこそないわ」
笑いながらオフィスに戻り、午後の仕事の準備をしていると、みっちゃんが私の横を通りすぎるときに肩をポンと叩いた。
「まぁ、なんだっていいの。モモが幸せなら、私はそれだけで満足。さっきの話の女が嫌がらせしてきたとか、なんか困ったことがあったらすぐに相談してよ!」
女の敵は女だと言うのも間違いではないけれど、女友達という心強い味方もいるのだと思うと、それだけで強くなれそうな気がした。
仕事を終えていつもの場所で尚史と落ち合い、駅ビルの中のドラッグストアで、引っ越しの挨拶に持っていくお高い箱ティッシュとラップ、それを入れる袋を買った。
どちらにしようかと悩んだけれど、いっそのこと両方持っていけばいいんじゃないかという結論に至ったからだ。
買い物を済ませてキヨの店に足を運ぶと、月曜日だからかリナっちと兄者以外の客はまだいなかった。
兄者は頻繁にこの店に出入りしているけれど、副社長って暇なんだろうか?
「兄者……副社長って暇なの?」
不躾な質問をすると、兄者はエビピラフを口に運ぶ手を止めて苦笑いを浮かべた。
「決して暇ではないし、今日もこのあと予定があるんだけど……尚史とモモさんに話しておきたいことがあって時間作ってきたんだよ」
「話しておきたいこと?」
とりあえず席に着いて、ビールとオムライスを注文した。
キヨは厨房で私と尚史の注文したオムライスを作り始める。
「この間のパーティーの日に、水野から聞いた話なんだけど……」
ビールを飲んでいた尚史がハッキリとわかるくらい顔をしかめた。
私と尚史の間では一応解決したことだし、もう水野さんの話には触れたくないんだろうなとは思ったけど、兄者が仕事の合間に時間を作ってまで話したいことなのだから、聞いておくべきだろう。
「店を出たあと、水野と尚史の間にあったことはだいたい聞いた。俺は全然知らなかったから、正直かなり引いたけど……」
「だろうな。俺は二度と会いたくなかったし、思い出したくもないよ」
尚史は苦虫を噛み潰したような顔をして、小皿の上の柿ピーに手を伸ばす。
そうか、仕返しをすればさらに事が大きくなるというわけだ。
危ない危ない、私の性格からして、水野さんが仕返しをしに来たら倍返しにしてしまうところだった。
今後は何も起こらないことを祈りながら、黙ってやり過ごすのが最善の策だろう。
「あっ、早くしないと昼休み終わっちゃいますよ!」
アキちゃんは店内の壁掛け時計を見上げてそう言うと、慌ててコーヒーを飲み干した。
「ホントだ、急ごう」
私たちも急いでコーヒーを飲み干し、会計を済ませて店を出た。
「昼間からヘビーな話だったわ……。今日はモモを冷やかして楽しもうと思ってたのに」
みっちゃんは釣り銭とレシートを財布にしまいながらため息をついた。
「ごめんね。でも私たち付き合い長いから、人が聞いて面白いようなのろけ話はできないと思うよ」
「そんなことないでしょ、尚史さんはモモにベタ惚れだもん。次は溺愛エピソード聞かせてもらうからね」
みっちゃんめ、私がそういう甘ったるい話をするのは苦手だと知って言っているんだな?
やはり女の敵は女か?
ならば私も負けるわけにはいかない。
「みっちゃんが彼氏の溺愛エピソード聞かせてくれたら、私も話すよ」
「それこそないわ」
笑いながらオフィスに戻り、午後の仕事の準備をしていると、みっちゃんが私の横を通りすぎるときに肩をポンと叩いた。
「まぁ、なんだっていいの。モモが幸せなら、私はそれだけで満足。さっきの話の女が嫌がらせしてきたとか、なんか困ったことがあったらすぐに相談してよ!」
女の敵は女だと言うのも間違いではないけれど、女友達という心強い味方もいるのだと思うと、それだけで強くなれそうな気がした。
仕事を終えていつもの場所で尚史と落ち合い、駅ビルの中のドラッグストアで、引っ越しの挨拶に持っていくお高い箱ティッシュとラップ、それを入れる袋を買った。
どちらにしようかと悩んだけれど、いっそのこと両方持っていけばいいんじゃないかという結論に至ったからだ。
買い物を済ませてキヨの店に足を運ぶと、月曜日だからかリナっちと兄者以外の客はまだいなかった。
兄者は頻繁にこの店に出入りしているけれど、副社長って暇なんだろうか?
「兄者……副社長って暇なの?」
不躾な質問をすると、兄者はエビピラフを口に運ぶ手を止めて苦笑いを浮かべた。
「決して暇ではないし、今日もこのあと予定があるんだけど……尚史とモモさんに話しておきたいことがあって時間作ってきたんだよ」
「話しておきたいこと?」
とりあえず席に着いて、ビールとオムライスを注文した。
キヨは厨房で私と尚史の注文したオムライスを作り始める。
「この間のパーティーの日に、水野から聞いた話なんだけど……」
ビールを飲んでいた尚史がハッキリとわかるくらい顔をしかめた。
私と尚史の間では一応解決したことだし、もう水野さんの話には触れたくないんだろうなとは思ったけど、兄者が仕事の合間に時間を作ってまで話したいことなのだから、聞いておくべきだろう。
「店を出たあと、水野と尚史の間にあったことはだいたい聞いた。俺は全然知らなかったから、正直かなり引いたけど……」
「だろうな。俺は二度と会いたくなかったし、思い出したくもないよ」
尚史は苦虫を噛み潰したような顔をして、小皿の上の柿ピーに手を伸ばす。
0
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
腹黒御曹司の独占欲から逃げられません 極上の一夜は溺愛のはじまり
春宮ともみ
恋愛
旧題:極甘シンドローム〜敏腕社長は初恋を最後の恋にしたい〜
大手ゼネコン会社社長の一人娘だった明日香は、小学校入学と同時に不慮の事故で両親を亡くし、首都圏から離れた遠縁の親戚宅に預けられ慎ましやかに暮らすことに。質素な生活ながらも愛情をたっぷり受けて充実した学生時代を過ごしたのち、英文系の女子大を卒業後、上京してひとり暮らしをはじめ中堅の人材派遣会社で総務部の事務職として働きだす。そして、ひょんなことから幼いころに面識があったある女性の結婚式に出席したことで、運命の歯車が大きく動きだしてしまい――?
***
ドSで策士な腹黒御曹司×元令嬢OLが紡ぐ、甘酸っぱい初恋ロマンス
***
◎作中に出てくる企業名、施設・地域名、登場人物が持つ知識等は創作上のフィクションです
◆アルファポリス様のみの掲載(今後も他サイトへの転載は予定していません)
※著者既作「(エタニティブックス)俺様エリートは独占欲全開で愛と快楽に溺れさせる」のサブキャラクター、「【R18】音のない夜に」のヒーローがそれぞれ名前だけ登場しますが、もちろんこちら単体のみでもお楽しみいただけます。彼らをご存知の方はくすっとしていただけたら嬉しいです
※著者が読みたいだけの性癖を詰め込んだ三人称一元視点習作です
【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜
船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】
お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。
表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。
【ストーリー】
見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。
会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。
手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。
親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。
いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる……
托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。
◆登場人物
・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン
・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員
・ 八幡栞 (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女
・ 藤沢茂 (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。
孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」
私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!?
ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。
少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。
それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。
副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!?
跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……?
坂下花音 さかしたかのん
28歳
不動産会社『マグネイトエステート』一般社員
真面目が服を着て歩いているような子
見た目も真面目そのもの
恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された
×
盛重海星 もりしげかいせい
32歳
不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司
長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない
人当たりがよくていい人
だけど本当は強引!?
【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。
しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。
そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。
渋々といった風に了承した杏珠。
そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。
挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。
しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。
後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
快楽のエチュード〜父娘〜
狭山雪菜
恋愛
眞下未映子は、実家で暮らす社会人だ。週に一度、ストレスがピークになると、夜中にヘッドフォンをつけて、AV鑑賞をしていたが、ある時誰かに見られているのに気がついてしまい……
父娘の禁断の関係を描いてますので、苦手な方はご注意ください。
月に一度の更新頻度です。基本的にはエッチしかしてないです。
こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる