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初めての夫婦喧嘩(?)で新妻爆発する~なぜそんなものを犬に食わせようとした?~
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「尚史もこうされると気持ちいいの?」
「それヤバイから……。モモにそんなことされたら、気持ち良すぎてヘンになる……」
「ヘンになればいいじゃん。ずっと私のことだけ考えてよ。一生私のことしか考えられなくなるくらいに」
私が前に尚史にされたのと同じように、胸に吸い付いてその先を舌で転がすと、尚史はあわてて私の頭を両手で掴んでそれを阻んだ。
尚史の肌に触れることを全身で拒絶されたような気がして、私の目にまた涙が溢れる。
「水野さんとは何度もしてたくせに……尚史は私とセックスするのがイヤなの?やっぱり美人でスタイルのいい水野さんの方がいい?」
こんなことを聞くつもりはなかったのに、酔ってセーブできなくなった感情が大爆発してしまった。
尚史は今にも泣きそうな顔をして、力なく首を横に振る。
「そんなわけないだろ……。だけどこんな、あてつけみたいな形でしたくない」
思いきって私から誘ったのに、尚史に全力で拒まれ、情けなくて惨めな気持ちが込み上げてくる。
「そう……じゃあもういいよ」
私は尚史から手を離し、拾い上げたシャツを着て立ち上がった。
「私とはしたくないなら一生しなくていい」
「モモとはしたくないとか、そういう意味じゃなくて……!」
「尚史はきっと今だって、その気になれば水野さんでも誰とでもできると思うから、好きにすればいいよ。だけどもう二度と私に触らないで」
尚史の顔も見ずに吐き捨てるようにそう言って、ふらつく足取りで趣味のお宝を収納する予定の部屋へ入り、大きな音をたててドアを閉めた。
漫画もゲームもフィギュアもまだ運び込んでいない部屋には、空っぽの大きな本棚と飾り棚だけが並んでいる。
私は部屋の真ん中に寝そべって天井を見上げた。
ハッキリしない尚史の態度に腹が立って、おまけに尚史に拒まれたことがあまりにもショック過ぎて、酔いに任せて思ってもいないひどい言葉を吐いてしまった。
尚史は長い間ずっと片想いしてきた私を美化して、私に『可愛いモモ』の幻想を抱いてきただろうから、きっと私がこんなに可愛くないとは思わなかったはずだ。
この扉の向こうで、尚史は『結婚した途端に可愛げの欠片もなくなった気の強いモモ』にがっかりしているかも知れない。
「愛想つかされちゃったかなぁ……」
寝返りを打つと、こぼれた涙が床にポタポタと落ちる。
同居初日からいきなりの離婚危機だ。
こんなことが原因で離婚するなんて言ったら、両家の親たちは悲しむだろうな。
これまで家族ぐるみで仲良くしてきたのに、私たちのせいで親たちの関係も悪くなりかねない。
私だって本当は尚史と仲良く楽しく平穏に暮らしたいし、一緒に幸せになりたいと思う。
昨日あんなことがなければ、今頃は二人で笑って晩御飯の支度をしていただろう。
何も知らない方が良かった。
だけど知ってしまった。
『過去のことなんか気にしない』と笑ってやり過ごしていたら、こんな思いもせず、尚史に対してもあんなひどい言葉を言わずに済んだのかな。
そう思うとどんどん涙が溢れて止まらなくなった。
ゲームみたいに時間を戻すアイテムが使えたらいいのに。
カレーの匂いに鼻孔をくすぐられて目が覚めた。
いつの間にか眠っていたらしい。
まぶたを開くとカーテンの隙間から見える窓の外はすっかり暗くなっていて、お宝部屋の床に寝そべっていたはずなのに、私は寝室のベッドに寝かされ、肌掛け布団まで掛けられている。
起き上がってキッチンを見ると、尚史が一人でキッチンに立ってお玉で鍋の中身をかき混ぜていた。
「それヤバイから……。モモにそんなことされたら、気持ち良すぎてヘンになる……」
「ヘンになればいいじゃん。ずっと私のことだけ考えてよ。一生私のことしか考えられなくなるくらいに」
私が前に尚史にされたのと同じように、胸に吸い付いてその先を舌で転がすと、尚史はあわてて私の頭を両手で掴んでそれを阻んだ。
尚史の肌に触れることを全身で拒絶されたような気がして、私の目にまた涙が溢れる。
「水野さんとは何度もしてたくせに……尚史は私とセックスするのがイヤなの?やっぱり美人でスタイルのいい水野さんの方がいい?」
こんなことを聞くつもりはなかったのに、酔ってセーブできなくなった感情が大爆発してしまった。
尚史は今にも泣きそうな顔をして、力なく首を横に振る。
「そんなわけないだろ……。だけどこんな、あてつけみたいな形でしたくない」
思いきって私から誘ったのに、尚史に全力で拒まれ、情けなくて惨めな気持ちが込み上げてくる。
「そう……じゃあもういいよ」
私は尚史から手を離し、拾い上げたシャツを着て立ち上がった。
「私とはしたくないなら一生しなくていい」
「モモとはしたくないとか、そういう意味じゃなくて……!」
「尚史はきっと今だって、その気になれば水野さんでも誰とでもできると思うから、好きにすればいいよ。だけどもう二度と私に触らないで」
尚史の顔も見ずに吐き捨てるようにそう言って、ふらつく足取りで趣味のお宝を収納する予定の部屋へ入り、大きな音をたててドアを閉めた。
漫画もゲームもフィギュアもまだ運び込んでいない部屋には、空っぽの大きな本棚と飾り棚だけが並んでいる。
私は部屋の真ん中に寝そべって天井を見上げた。
ハッキリしない尚史の態度に腹が立って、おまけに尚史に拒まれたことがあまりにもショック過ぎて、酔いに任せて思ってもいないひどい言葉を吐いてしまった。
尚史は長い間ずっと片想いしてきた私を美化して、私に『可愛いモモ』の幻想を抱いてきただろうから、きっと私がこんなに可愛くないとは思わなかったはずだ。
この扉の向こうで、尚史は『結婚した途端に可愛げの欠片もなくなった気の強いモモ』にがっかりしているかも知れない。
「愛想つかされちゃったかなぁ……」
寝返りを打つと、こぼれた涙が床にポタポタと落ちる。
同居初日からいきなりの離婚危機だ。
こんなことが原因で離婚するなんて言ったら、両家の親たちは悲しむだろうな。
これまで家族ぐるみで仲良くしてきたのに、私たちのせいで親たちの関係も悪くなりかねない。
私だって本当は尚史と仲良く楽しく平穏に暮らしたいし、一緒に幸せになりたいと思う。
昨日あんなことがなければ、今頃は二人で笑って晩御飯の支度をしていただろう。
何も知らない方が良かった。
だけど知ってしまった。
『過去のことなんか気にしない』と笑ってやり過ごしていたら、こんな思いもせず、尚史に対してもあんなひどい言葉を言わずに済んだのかな。
そう思うとどんどん涙が溢れて止まらなくなった。
ゲームみたいに時間を戻すアイテムが使えたらいいのに。
カレーの匂いに鼻孔をくすぐられて目が覚めた。
いつの間にか眠っていたらしい。
まぶたを開くとカーテンの隙間から見える窓の外はすっかり暗くなっていて、お宝部屋の床に寝そべっていたはずなのに、私は寝室のベッドに寝かされ、肌掛け布団まで掛けられている。
起き上がってキッチンを見ると、尚史が一人でキッチンに立ってお玉で鍋の中身をかき混ぜていた。
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