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ヲタはヲタを呼ぶ?昨日の恋敵は今日の同志~流れ星に集い愛を語ろう~

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見た目も性格も今時の女子そのものなのに鬼ゲーマーだったり、意外な特技を持っていたり、谷口さんには驚かされてばかりだ。
本当に人は見掛けによらないものだと改めて思う。

「じゃあ谷口さん、俺たちの結婚式に来てエレクトーン弾いてくれる?結婚式に合う曲がいいんだけど」
「もちろんですよ!私で良ければいくらでも弾きます!」

尚史の雑なお願いを、谷口さんは二つ返事でOKしてくれた。
そして早速『結婚式に合う曲』をスマホでネット検索し始める。

「谷口さん、引き受けてくれてありがとう。なんか……お願いの仕方が雑でごめんね」
「私はすごく嬉しいですよ。お二人の晴れ姿が見られる上に、私の唯一の特技がお役に立つなんて最高です!」

あんなに雑な頼み方をされたのに、いやがるどころかこんなに喜んでくれるなんて、もしかして谷口さんって、めちゃくちゃいい子なのでは?
だけどやっぱり、谷口さんが『尚史と付き合いたい』と言っていたことがどうにも引っ掛かって、本当にこのまま触れないでいていいものかと思う。
モヤモヤした気持ちのままで結婚式の日を迎えたくはないから、谷口さんの本音を聞いておきたい。

「あのね、谷口さん。いまさらこんなことを聞くのもなんだけど……前に『尚史と付き合いたい』って言ってたでしょ?私が急に尚史と結婚したこと、どう思ってる?」

私が尚史と谷口兄がゲームを始めたのを見計らって、声のトーンを少し落として尋ねると、谷口さんは一瞬ポカンとしたあと、スマホをテーブルの上に置いてビールを一口飲んだ。

「どう思ってる?って……もしかしてモモ先輩、そのことがずっと気になってました?」
「うん……。だってほら……私は尚史と幼馴染みだってことも隠してたし、尚史とは前から付き合ってたわけでもなくて、事情があっていきなり結婚したから」
「その辺の事情はここで中森さんから聞いてますよ。じつは私、その話を聞く前に『私と付き合いませんか』って……」
「本人に言ったの?」
「はい、でも本人から直接断られる前に、キヨさんと兄に『無謀なことはやめとけ』って言われました。中森さんには昔からずっと好きな人がいるからって」

谷口さんは尚史と谷口兄と一緒に初めてこの店に来てゲームをしていたときに、尚史と私が物心がつく前からの幼馴染みで、尚史は子どもの頃からずっと私のことを想い続けているのだとキヨから聞かされたそうだ。
谷口兄も尚史の高校時代の私にまつわるエピソードを聞かせて『望みはまったくないから潔くあきらめろ』と諭し、尚史はハッキリと断るでもなく、ただうなずきながらその話を聞いていたらしい。

「私は中森さんがモロに好みのタイプで、すごくカッコイイから付き合いたいと思ってたんです。だけどまだ好きとか恋とかいうほどの感情ではなかったので、話を聞いているうちに一途な中森さんを応援したくなりました」
「相手が自分じゃなくても?」
「私、ドラマでも漫画でも、幼馴染みのシチュエーションにものすごく弱いんですよ、大好物です」

私の気のせいだろうか、なんだか谷口さんから私と同じ匂いがしてくるような……?

「子どもの頃から大人になってもずっと幼馴染みの女の子に片想いしてるなんて、尊くて超萌えますよね。おまけに普通ならあり得ないような劇的な展開で結婚までしちゃうなんて、控えめに言って最高です!」

谷口さんはうっとりとした目で宙を見据え、完全に『夢見る少女』の構えで幼馴染みの純愛を語っている。
その語り口はあまりメジャーではなかったけどヲタクの間では名作と名高い、幼馴染みの男女の恋模様を描いた漫画『初恋メロンソーダ』を彷彿とさせる。

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