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うれしはずかし日曜日、開き直った新妻はご近所で愛を叫ぶ~そうだ、不動産屋へ行こう~

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てっきりこの指輪の代金も両親に出してもらうんだとばかり思っていたのに、尚史はそんなことを考えてくれていたらしい。
これまで誕生日なんかのプレゼントと言えば、だいたいはお互いに相手の好きなゲームや漫画を贈り合っていた。
幼馴染みのときはそれでじゅうぶんだったと思う。
だけど今はただの仲の良い幼馴染みではない。
もし結婚しなかったら、私は一生尚史から指輪なんてプレゼントされることはなかっただろう。
それにしても不思議なのは、私が『光子おばあちゃんに花嫁姿を見せるために結婚する』と言い出したときに、尚史はそれを止めようともせず、『俺と結婚しよう』とも言わなかったことだ。
私のことがずっと好きだったと尚史は言っていたし、普通ならそこは全力で止めるはずだよね?

「あら?でも尚史くんはモモが結婚するって言い出したときには止めなかったわよね?」

さすが親子、母も私と同じことを疑問に思ったようだ。
私もその理由を詳しく知りたい。

「モモは負けず嫌いだし、一度言い出したら聞かないから。あの段階で俺が何言ったって、逆に意地でも誰かと結婚するって言いそうだと思って。実際に久美子さんが無理だからやめとけって言ったら、合コンに行って相手探したし」
「それでもしモモとその人がうまくいきそうだったら、尚史くんはどうしてたの?」
「そりゃあ全力で相手を潰して、略奪してたに決まってる」

あの無気力な顔の裏で、尚史はそんなことを考えていたのか!
もしかしてその略奪計画こそが、仮想カップル作戦だったのでは?

「なるほど、確かにそうね。モモはそういうとこあるわ。尚史くんはモモに実際に動かせて、現実の厳しさを思い知らせようとしてたのね」
「まぁ。モモが現実見て、やっぱり無理かもって思ったところで、『この際だから俺にしとけば』って言おうと思ってたけど、合コンで相手を見つけてきたのは想定外だった。だから全力で潰しにかかろうとしたら相手が自滅して、モモが勝手にあきらめた。そうかと思ったらまた婚活するって言い出して、おばあちゃんが勘違いして、おふくろと久美子さんがモモに俺を薦めたから、流れに乗って結婚した」

この一連の流れを聞いていると、私は最初から尚史の手のひらの上で転がされていたような気がしてきた。
尚史の言う通り、最初の段階で『無理だ』とか『やめとけ』と言われていたら、私はきっと聞く耳をもたなかっただろうし、『俺と結婚しよう』と言われても、尚史は家族同然だから無理だと答えていたんじゃないかと思う。
尚史はやっぱり私の性格をよくわかっているんだなと感心する。

「尚史は前からモモのことが好きだったみたいだし、モモも尚史とならと思ったから結婚したわけだろ?結婚までの流れが普通とはちょっと違ったけど、二人が納得してるんならそれでいいんじゃないか?」

父がそう言うと、尚史は少し照れくさそうに笑ってうなずいた。


そのあと両親と一緒に夕飯を食べることになった。
私は実家を出る前に母から少しでも料理を教わろうと、母と一緒にキッチンに立った。
いつもはキッチンに立っても、用意してもらった料理をよそうとか、お湯を沸かすくらいしかしない。
自ら料理をしようと思ったのは、27歳にして初めてだ。

「モモ、お米の研ぎ方くらいはわかるわよね?」
「家庭科で習ったから、一応は……」
「じゃあお米研いで。今日は尚史くんがいるから4合くらいかな」

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