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うれしはずかし日曜日、開き直った新妻はご近所で愛を叫ぶ~そうだ、不動産屋へ行こう~
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尚史はニコニコ笑いながら部屋の中に戻って来た。
その嬉しそうな顔が『駄菓子屋の隣に住みたいという夢が叶った無邪気な小学生』みたいでちょっと可愛くて、つい笑ってしまう。
「本木さん、ここに決めます!」
「ありがとうございます!では早速店に戻って、契約手続きをさせていただきます!」
この部屋でもうすぐ尚史との新婚生活が始まるのだと思うと楽しみで、その日が来るのがとても待ち遠しくなった。
それから駅前の不動産屋に戻って、契約手続きをした。
書類の提出や敷金の入金などの手続きが済めば、すぐに入居できるそうだ。
不動産屋を出たあと、フルモトに寄ってから私の家に帰った。
マンションの賃貸契約手続きをしたことを両親に話すと、役所でもらう必要のある書類と敷金は、明日母と洋子ママが一緒に出かけるついでに用意しておくと言ってくれた。
「必要なお金は全額出すから心配しなくていいわよ」
世間の私たちと同世代で結婚する人たちは、親からどれくらい結婚資金の援助を受けているんだろう?
約束だったとは言え、結婚資金を全額親に払ってもらうというのは、大人としてなんとなく恥ずかしい。
「ありがとう。でもなんか……いい歳して親に頼りきりで、ホントにそれでいいのかなぁって」
「何言ってんの、親に甘えられるうちは甘えておけばいいのよ。それに約束だったでしょ?だけどそのあとの生活は二人で頑張ってなんとかしてね」
母が笑いながらそう言うと、父も同じように笑ってうなずいた。
「可愛い一人娘のためにコツコツ貯めてきた結婚資金なんだから、遠慮なんかしなくていいんだよ。モモと尚史が幸せになってくれたら、それが最大の親孝行なんだから」
私はこれまで両親に大事に育てられたんだと思うと、涙が出そうなほど嬉しかった。
健康な体に産んで大切に育ててくれたことに感謝して、これからはもっと両親を大事にしよう。
「ありがとう。じゃあ目一杯甘えさせてもらいます」
「ありがとうございます。これからたくさん親孝行できるように二人で頑張ります」
尚史がいつになくかしこまった口調でそう言って頭を下げると、両親は嬉しそうな顔をした。
「そうね、そうしてちょうだい。ところで……じつは昨日から気になってたんだけど、その指輪買ったの?」
母は私が左手の薬指につけている指輪を指さして尋ねた。
「うん、昨日ね。結婚式のときには指輪の交換もするし、もう入籍したんだから早く用意しようって尚史が。光子おばあちゃんのお見舞いと衣装の下見が済んでから買いに行ったの」
「これが結婚指輪なの?」
「婚約指輪と結婚指輪がセットになってる指輪なんだ。これが婚約指輪で、結婚指輪と重ねてつけるんだって。急に結婚して婚約指輪もなかったからって、尚史が選んでくれた。結婚指輪も手元にはあるんだけど、二人で相談して、指につけるのは式の指輪交換のときにしようかってことになったの」
「へえ、重ねづけか……。最近の結婚指輪はオシャレなのねぇ」
自分のイメージする結婚指輪とは違うからか、母は物珍しそうに私の指輪を眺めている。
「レシートくれたら指輪のお金も払うわよ?」
母が尚史の方を向いてそう言うと、尚史は首を横に振った。
「いや、指輪は俺が」
「尚史くんには急に無理言ってモモと結婚してもらったんだから、遠慮しなくていいのに」
「遠慮とかじゃなくてホントにいいんだ。もしあのとき久美子さんに言われてなくても、絶対に俺がモモと結婚するんだって思ってたし、せめて指輪くらいは自分でモモに買ってあげたかったから」
その嬉しそうな顔が『駄菓子屋の隣に住みたいという夢が叶った無邪気な小学生』みたいでちょっと可愛くて、つい笑ってしまう。
「本木さん、ここに決めます!」
「ありがとうございます!では早速店に戻って、契約手続きをさせていただきます!」
この部屋でもうすぐ尚史との新婚生活が始まるのだと思うと楽しみで、その日が来るのがとても待ち遠しくなった。
それから駅前の不動産屋に戻って、契約手続きをした。
書類の提出や敷金の入金などの手続きが済めば、すぐに入居できるそうだ。
不動産屋を出たあと、フルモトに寄ってから私の家に帰った。
マンションの賃貸契約手続きをしたことを両親に話すと、役所でもらう必要のある書類と敷金は、明日母と洋子ママが一緒に出かけるついでに用意しておくと言ってくれた。
「必要なお金は全額出すから心配しなくていいわよ」
世間の私たちと同世代で結婚する人たちは、親からどれくらい結婚資金の援助を受けているんだろう?
約束だったとは言え、結婚資金を全額親に払ってもらうというのは、大人としてなんとなく恥ずかしい。
「ありがとう。でもなんか……いい歳して親に頼りきりで、ホントにそれでいいのかなぁって」
「何言ってんの、親に甘えられるうちは甘えておけばいいのよ。それに約束だったでしょ?だけどそのあとの生活は二人で頑張ってなんとかしてね」
母が笑いながらそう言うと、父も同じように笑ってうなずいた。
「可愛い一人娘のためにコツコツ貯めてきた結婚資金なんだから、遠慮なんかしなくていいんだよ。モモと尚史が幸せになってくれたら、それが最大の親孝行なんだから」
私はこれまで両親に大事に育てられたんだと思うと、涙が出そうなほど嬉しかった。
健康な体に産んで大切に育ててくれたことに感謝して、これからはもっと両親を大事にしよう。
「ありがとう。じゃあ目一杯甘えさせてもらいます」
「ありがとうございます。これからたくさん親孝行できるように二人で頑張ります」
尚史がいつになくかしこまった口調でそう言って頭を下げると、両親は嬉しそうな顔をした。
「そうね、そうしてちょうだい。ところで……じつは昨日から気になってたんだけど、その指輪買ったの?」
母は私が左手の薬指につけている指輪を指さして尋ねた。
「うん、昨日ね。結婚式のときには指輪の交換もするし、もう入籍したんだから早く用意しようって尚史が。光子おばあちゃんのお見舞いと衣装の下見が済んでから買いに行ったの」
「これが結婚指輪なの?」
「婚約指輪と結婚指輪がセットになってる指輪なんだ。これが婚約指輪で、結婚指輪と重ねてつけるんだって。急に結婚して婚約指輪もなかったからって、尚史が選んでくれた。結婚指輪も手元にはあるんだけど、二人で相談して、指につけるのは式の指輪交換のときにしようかってことになったの」
「へえ、重ねづけか……。最近の結婚指輪はオシャレなのねぇ」
自分のイメージする結婚指輪とは違うからか、母は物珍しそうに私の指輪を眺めている。
「レシートくれたら指輪のお金も払うわよ?」
母が尚史の方を向いてそう言うと、尚史は首を横に振った。
「いや、指輪は俺が」
「尚史くんには急に無理言ってモモと結婚してもらったんだから、遠慮しなくていいのに」
「遠慮とかじゃなくてホントにいいんだ。もしあのとき久美子さんに言われてなくても、絶対に俺がモモと結婚するんだって思ってたし、せめて指輪くらいは自分でモモに買ってあげたかったから」
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