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うれしはずかし日曜日、開き直った新妻はご近所で愛を叫ぶ~そうだ、不動産屋へ行こう~
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ああもう、なんでこんなに可愛い顔をするんだ!
こんなところじゃ、ギューもチューもできないじゃないか!
私は尚史を抱きしめたい衝動でフルフルと震える手をなんとか抑え込む。
今ここで抱きしめるのは無理だけど、せめて手くらいは握りたい。
「尚史があんな風に考えてたとはまったく思ってなかったから、ちょっとショックだったけど……私が素直じゃないせいで、尚史を不安にさせちゃうのかなって。だから……」
さっきは恥ずかしいと言って拒んでしまったけれど、今度は私から手を繋いで、いつものように指を絡めた。
尚史は目をパチパチさせて、繋いだ手と私の顔を交互に見た。
「ご近所さんに見られたら、恥ずかしいんじゃないの?」
「もういいの。ホントは私も尚史と手を繋ぎたいから。尚史、早く新居探しに行こう」
「……うん、行こうか」
しっかり手を繋いで再び駅の方に向かって歩き出して間もなく、昔からよく知っている近所の田口さんに出会った。
いきなりご近所さんに遭遇だ。
こうなったらもう開き直るしかない!
冷やかし上等、かかってこい!
私たちは新婚ホヤホヤ、親のいる実家で日曜の朝からイチャイチャしてしまうほどのラブラブバカップルだ!
「こんにちは」
私がいつも通りに笑って挨拶をすると、田口のオバチャンは私たちを見て「ふふふ」と笑った。
「あら!尚史くんにモモちゃん、こんにちは。久しぶりね。結婚したんですって?おめでとう」
「はい、ありがとうございます」
「二人は昔からずっと仲良しだったから、いつになったら結婚するんだろうって、みんな言ってたのよ」
なんと、私の知らないところでそんな噂をされていたのか!
おそらく近所の人たちは、私たちが付き合っていると思っていたんだろう。
『じつは交際0日で結婚したんですよ!』なんてことを正直に言うと、結婚に至った経緯を根掘り葉掘り聞かれそうだから、絶対に言わないけれど。
「長い付き合いだし、両親も私たちの結婚を待ちかねてたんで、そろそろかなって」
「そうね、お母さんたちすごく喜んでたわ」
なんとなくそうじゃないかとは思っていたけど、浮かれた母と洋子ママがご近所さんに、私たちが結婚したことを言い回っていたんだな。
そりゃ光の速さで近所じゅうに広まるわけだ。
私たちが結婚について自ら話さなくても勝手に広まるんだし、ここは当たり障りのないことを言って、早々に切り上げよう。
「これからいろいろと楽しみね。今日は夫婦そろってお出かけなの?」
「この間入籍だけ済ませたんですけど、じつはまだ新居が決まってなくて、これから新居を探しに行くところなんです」
「あらそうなの?引き留めてごめんなさいね。素敵な新居が見つかるといいわね」
「ありがとうございます」
軽く会釈をしてオバチャンと別れ、少し歩いたところで、尚史は私の手をギュッと握って小さな笑い声をあげた。
「どうかした?」
「いや……さっきまで恥ずかしいって言ってたのに、すごい変わりようだなって」
「こそこそ隠れるのもかえって怪しいし、『私たちは新婚ですよ!』って開き直るしかないでしょ?」
「たしかにな。それにしても、モモって男の俺よりイケメンなんだなぁ」
なぜだかわからないけど、イケメンが私をイケメンだと言っている。
世間の人たちは、あなたをイケメンと呼んでいるけど?
「私のどこが?」
「無自覚か。俺が無駄に空回って、あーでもないこーでもないって悩んでたら、モモはいつも思ったことをストレートに言ってくれるじゃん。俺なんか昔からずっとモモのこと好きだったのに、避けられたり嫌われたりするのが怖くて、大人になっても好きだって言えなかった。幼馴染みのままなら俺とずっと一緒にいてくれるのかなぁって」
こんなところじゃ、ギューもチューもできないじゃないか!
私は尚史を抱きしめたい衝動でフルフルと震える手をなんとか抑え込む。
今ここで抱きしめるのは無理だけど、せめて手くらいは握りたい。
「尚史があんな風に考えてたとはまったく思ってなかったから、ちょっとショックだったけど……私が素直じゃないせいで、尚史を不安にさせちゃうのかなって。だから……」
さっきは恥ずかしいと言って拒んでしまったけれど、今度は私から手を繋いで、いつものように指を絡めた。
尚史は目をパチパチさせて、繋いだ手と私の顔を交互に見た。
「ご近所さんに見られたら、恥ずかしいんじゃないの?」
「もういいの。ホントは私も尚史と手を繋ぎたいから。尚史、早く新居探しに行こう」
「……うん、行こうか」
しっかり手を繋いで再び駅の方に向かって歩き出して間もなく、昔からよく知っている近所の田口さんに出会った。
いきなりご近所さんに遭遇だ。
こうなったらもう開き直るしかない!
冷やかし上等、かかってこい!
私たちは新婚ホヤホヤ、親のいる実家で日曜の朝からイチャイチャしてしまうほどのラブラブバカップルだ!
「こんにちは」
私がいつも通りに笑って挨拶をすると、田口のオバチャンは私たちを見て「ふふふ」と笑った。
「あら!尚史くんにモモちゃん、こんにちは。久しぶりね。結婚したんですって?おめでとう」
「はい、ありがとうございます」
「二人は昔からずっと仲良しだったから、いつになったら結婚するんだろうって、みんな言ってたのよ」
なんと、私の知らないところでそんな噂をされていたのか!
おそらく近所の人たちは、私たちが付き合っていると思っていたんだろう。
『じつは交際0日で結婚したんですよ!』なんてことを正直に言うと、結婚に至った経緯を根掘り葉掘り聞かれそうだから、絶対に言わないけれど。
「長い付き合いだし、両親も私たちの結婚を待ちかねてたんで、そろそろかなって」
「そうね、お母さんたちすごく喜んでたわ」
なんとなくそうじゃないかとは思っていたけど、浮かれた母と洋子ママがご近所さんに、私たちが結婚したことを言い回っていたんだな。
そりゃ光の速さで近所じゅうに広まるわけだ。
私たちが結婚について自ら話さなくても勝手に広まるんだし、ここは当たり障りのないことを言って、早々に切り上げよう。
「これからいろいろと楽しみね。今日は夫婦そろってお出かけなの?」
「この間入籍だけ済ませたんですけど、じつはまだ新居が決まってなくて、これから新居を探しに行くところなんです」
「あらそうなの?引き留めてごめんなさいね。素敵な新居が見つかるといいわね」
「ありがとうございます」
軽く会釈をしてオバチャンと別れ、少し歩いたところで、尚史は私の手をギュッと握って小さな笑い声をあげた。
「どうかした?」
「いや……さっきまで恥ずかしいって言ってたのに、すごい変わりようだなって」
「こそこそ隠れるのもかえって怪しいし、『私たちは新婚ですよ!』って開き直るしかないでしょ?」
「たしかにな。それにしても、モモって男の俺よりイケメンなんだなぁ」
なぜだかわからないけど、イケメンが私をイケメンだと言っている。
世間の人たちは、あなたをイケメンと呼んでいるけど?
「私のどこが?」
「無自覚か。俺が無駄に空回って、あーでもないこーでもないって悩んでたら、モモはいつも思ったことをストレートに言ってくれるじゃん。俺なんか昔からずっとモモのこと好きだったのに、避けられたり嫌われたりするのが怖くて、大人になっても好きだって言えなかった。幼馴染みのままなら俺とずっと一緒にいてくれるのかなぁって」
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