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バラ色ごきげんサタデー~ニヤニヤが止まらない~

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「モモ、左手出して」
「ん……?」

言われるままに左手を差し出すと、尚史は梱包されたばかりの婚約指輪を箱から出して、私の薬指にはめてくれた。

「モモ、愛してる。ずっと一緒にいような」
「……うん」

私がうなずくと、尚史は私の唇にそっと触れるだけの優しいキスをした。
誰に見られているかわからないようなこんな場所でキスをされたことはホントに恥ずかしかったけれど、ずっと幼馴染みだった尚史が、誰よりも私を大事に想ってくれて、これからの人生を共にする夫になったことが心の底から嬉しいと思えた。
どうやら尚史だけでなく、私もバカになってしまったようだ。


それから尚史と一緒に私の家に帰り、『光子おばあちゃんのために病院のロビーで結婚式を挙げることにした』と両親に話して、衣装の画像を見せて意見を求め、式の日取りや招待客のことなどを相談した。
結婚式の話が済むと、尚史は私の両親に「相談しときたいことがいろいろあるから、今日はモモをうちに泊めてもいい?」と尋ね、両親から許可を得たあと、着替えなどを用意して尚史の家へ行き、尚史の両親と一緒に夕飯を食べながら結婚式の話をした。

「ちゃんとした結婚式はそれとは別に挙げるんでしょ?」

洋子ママに尋ねられると、尚史は首をかしげながら私の方を見た。

「友達とか親戚とか呼んで披露宴なんかもしたくない?モモちゃんはお色直しで可愛いドレス着たいわよね?」

結婚式に呼びたい友達なんてほんの数人だし、親戚だって、母には兄弟がいないし母の両親はもう他界しているから、招待するとすれば伯父さん家族くらいだ。
生い立ちや二人の馴れ初めを紹介されるのもなんだか恥ずかしいし、両親への手紙なんかをかしこまって書いたり読んだりするのも照れくさい。
それに既婚者の同僚から、結婚式の準備は何かと大変だと聞いて面倒そうだとも思っていたから、わざわざ大金をはたいてまで盛大な結婚式を挙げる必要はないような気がする。

「俺はそういうの別にいいかなと思うけど……モモが式場とかでちゃんとした式を挙げたいって言うなら」
「私も別にしなくてもいいかな」
「じゃあ、式はこれだけでいいか。呼びたい友達と親戚には声かけるってことで」
「うん、それでじゅうぶん」

私と尚史はそれでじゅうぶんだと思っているけど、洋子ママは少し残念そうだ。

「そうなの~?モモちゃんと尚史の披露宴、ママは楽しみにしてたんだけどな。モモちゃんの可愛いカラードレス姿も見てみたかったわぁ」

洋子ママは前にも『娘が欲しかった』と言っていたし、小さい頃から本当の娘のように可愛がってくれていたからか、実の息子の尚史の晴れ姿以上に私の花嫁姿を楽しみにしてくれていたらしい。

「じゃあ、これとは別で写真だけ撮りに行くか?」
「うん、そうしようか。こういうときでないと着る機会もないもんね」
「おふくろもそれでいい?」

尚史が尋ねると、洋子ママは笑いながらうなずいた。

「二人が納得してるならそれが一番いいわね。モモちゃんが尚史のお嫁さんになってくれただけでも嬉しいし」

いまさらだけど、結婚するとお互いに、相手の家族が自分にとっても家族になるんだ。
もし他の人と結婚していたら、友達の結婚苦労話のように、結婚式のことにもいろいろ口出しされて辟易していたかもと言う思いがよぎった。
私はとても運がいいのかも知れない。
お姑さんになったのが、理解と思いやりのある洋子ママで良かったと心から思った。



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