135 / 240
バラ色ごきげんサタデー~ニヤニヤが止まらない~
8
しおりを挟む
「モモ、左手出して」
「ん……?」
言われるままに左手を差し出すと、尚史は梱包されたばかりの婚約指輪を箱から出して、私の薬指にはめてくれた。
「モモ、愛してる。ずっと一緒にいような」
「……うん」
私がうなずくと、尚史は私の唇にそっと触れるだけの優しいキスをした。
誰に見られているかわからないようなこんな場所でキスをされたことはホントに恥ずかしかったけれど、ずっと幼馴染みだった尚史が、誰よりも私を大事に想ってくれて、これからの人生を共にする夫になったことが心の底から嬉しいと思えた。
どうやら尚史だけでなく、私もバカになってしまったようだ。
それから尚史と一緒に私の家に帰り、『光子おばあちゃんのために病院のロビーで結婚式を挙げることにした』と両親に話して、衣装の画像を見せて意見を求め、式の日取りや招待客のことなどを相談した。
結婚式の話が済むと、尚史は私の両親に「相談しときたいことがいろいろあるから、今日はモモをうちに泊めてもいい?」と尋ね、両親から許可を得たあと、着替えなどを用意して尚史の家へ行き、尚史の両親と一緒に夕飯を食べながら結婚式の話をした。
「ちゃんとした結婚式はそれとは別に挙げるんでしょ?」
洋子ママに尋ねられると、尚史は首をかしげながら私の方を見た。
「友達とか親戚とか呼んで披露宴なんかもしたくない?モモちゃんはお色直しで可愛いドレス着たいわよね?」
結婚式に呼びたい友達なんてほんの数人だし、親戚だって、母には兄弟がいないし母の両親はもう他界しているから、招待するとすれば伯父さん家族くらいだ。
生い立ちや二人の馴れ初めを紹介されるのもなんだか恥ずかしいし、両親への手紙なんかをかしこまって書いたり読んだりするのも照れくさい。
それに既婚者の同僚から、結婚式の準備は何かと大変だと聞いて面倒そうだとも思っていたから、わざわざ大金をはたいてまで盛大な結婚式を挙げる必要はないような気がする。
「俺はそういうの別にいいかなと思うけど……モモが式場とかでちゃんとした式を挙げたいって言うなら」
「私も別にしなくてもいいかな」
「じゃあ、式はこれだけでいいか。呼びたい友達と親戚には声かけるってことで」
「うん、それでじゅうぶん」
私と尚史はそれでじゅうぶんだと思っているけど、洋子ママは少し残念そうだ。
「そうなの~?モモちゃんと尚史の披露宴、ママは楽しみにしてたんだけどな。モモちゃんの可愛いカラードレス姿も見てみたかったわぁ」
洋子ママは前にも『娘が欲しかった』と言っていたし、小さい頃から本当の娘のように可愛がってくれていたからか、実の息子の尚史の晴れ姿以上に私の花嫁姿を楽しみにしてくれていたらしい。
「じゃあ、これとは別で写真だけ撮りに行くか?」
「うん、そうしようか。こういうときでないと着る機会もないもんね」
「おふくろもそれでいい?」
尚史が尋ねると、洋子ママは笑いながらうなずいた。
「二人が納得してるならそれが一番いいわね。モモちゃんが尚史のお嫁さんになってくれただけでも嬉しいし」
いまさらだけど、結婚するとお互いに、相手の家族が自分にとっても家族になるんだ。
もし他の人と結婚していたら、友達の結婚苦労話のように、結婚式のことにもいろいろ口出しされて辟易していたかもと言う思いがよぎった。
私はとても運がいいのかも知れない。
お姑さんになったのが、理解と思いやりのある洋子ママで良かったと心から思った。
「ん……?」
言われるままに左手を差し出すと、尚史は梱包されたばかりの婚約指輪を箱から出して、私の薬指にはめてくれた。
「モモ、愛してる。ずっと一緒にいような」
「……うん」
私がうなずくと、尚史は私の唇にそっと触れるだけの優しいキスをした。
誰に見られているかわからないようなこんな場所でキスをされたことはホントに恥ずかしかったけれど、ずっと幼馴染みだった尚史が、誰よりも私を大事に想ってくれて、これからの人生を共にする夫になったことが心の底から嬉しいと思えた。
どうやら尚史だけでなく、私もバカになってしまったようだ。
それから尚史と一緒に私の家に帰り、『光子おばあちゃんのために病院のロビーで結婚式を挙げることにした』と両親に話して、衣装の画像を見せて意見を求め、式の日取りや招待客のことなどを相談した。
結婚式の話が済むと、尚史は私の両親に「相談しときたいことがいろいろあるから、今日はモモをうちに泊めてもいい?」と尋ね、両親から許可を得たあと、着替えなどを用意して尚史の家へ行き、尚史の両親と一緒に夕飯を食べながら結婚式の話をした。
「ちゃんとした結婚式はそれとは別に挙げるんでしょ?」
洋子ママに尋ねられると、尚史は首をかしげながら私の方を見た。
「友達とか親戚とか呼んで披露宴なんかもしたくない?モモちゃんはお色直しで可愛いドレス着たいわよね?」
結婚式に呼びたい友達なんてほんの数人だし、親戚だって、母には兄弟がいないし母の両親はもう他界しているから、招待するとすれば伯父さん家族くらいだ。
生い立ちや二人の馴れ初めを紹介されるのもなんだか恥ずかしいし、両親への手紙なんかをかしこまって書いたり読んだりするのも照れくさい。
それに既婚者の同僚から、結婚式の準備は何かと大変だと聞いて面倒そうだとも思っていたから、わざわざ大金をはたいてまで盛大な結婚式を挙げる必要はないような気がする。
「俺はそういうの別にいいかなと思うけど……モモが式場とかでちゃんとした式を挙げたいって言うなら」
「私も別にしなくてもいいかな」
「じゃあ、式はこれだけでいいか。呼びたい友達と親戚には声かけるってことで」
「うん、それでじゅうぶん」
私と尚史はそれでじゅうぶんだと思っているけど、洋子ママは少し残念そうだ。
「そうなの~?モモちゃんと尚史の披露宴、ママは楽しみにしてたんだけどな。モモちゃんの可愛いカラードレス姿も見てみたかったわぁ」
洋子ママは前にも『娘が欲しかった』と言っていたし、小さい頃から本当の娘のように可愛がってくれていたからか、実の息子の尚史の晴れ姿以上に私の花嫁姿を楽しみにしてくれていたらしい。
「じゃあ、これとは別で写真だけ撮りに行くか?」
「うん、そうしようか。こういうときでないと着る機会もないもんね」
「おふくろもそれでいい?」
尚史が尋ねると、洋子ママは笑いながらうなずいた。
「二人が納得してるならそれが一番いいわね。モモちゃんが尚史のお嫁さんになってくれただけでも嬉しいし」
いまさらだけど、結婚するとお互いに、相手の家族が自分にとっても家族になるんだ。
もし他の人と結婚していたら、友達の結婚苦労話のように、結婚式のことにもいろいろ口出しされて辟易していたかもと言う思いがよぎった。
私はとても運がいいのかも知れない。
お姑さんになったのが、理解と思いやりのある洋子ママで良かったと心から思った。
0
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
腹黒御曹司の独占欲から逃げられません 極上の一夜は溺愛のはじまり
春宮ともみ
恋愛
旧題:極甘シンドローム〜敏腕社長は初恋を最後の恋にしたい〜
大手ゼネコン会社社長の一人娘だった明日香は、小学校入学と同時に不慮の事故で両親を亡くし、首都圏から離れた遠縁の親戚宅に預けられ慎ましやかに暮らすことに。質素な生活ながらも愛情をたっぷり受けて充実した学生時代を過ごしたのち、英文系の女子大を卒業後、上京してひとり暮らしをはじめ中堅の人材派遣会社で総務部の事務職として働きだす。そして、ひょんなことから幼いころに面識があったある女性の結婚式に出席したことで、運命の歯車が大きく動きだしてしまい――?
***
ドSで策士な腹黒御曹司×元令嬢OLが紡ぐ、甘酸っぱい初恋ロマンス
***
◎作中に出てくる企業名、施設・地域名、登場人物が持つ知識等は創作上のフィクションです
◆アルファポリス様のみの掲載(今後も他サイトへの転載は予定していません)
※著者既作「(エタニティブックス)俺様エリートは独占欲全開で愛と快楽に溺れさせる」のサブキャラクター、「【R18】音のない夜に」のヒーローがそれぞれ名前だけ登場しますが、もちろんこちら単体のみでもお楽しみいただけます。彼らをご存知の方はくすっとしていただけたら嬉しいです
※著者が読みたいだけの性癖を詰め込んだ三人称一元視点習作です
孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」
私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!?
ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。
少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。
それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。
副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!?
跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……?
坂下花音 さかしたかのん
28歳
不動産会社『マグネイトエステート』一般社員
真面目が服を着て歩いているような子
見た目も真面目そのもの
恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された
×
盛重海星 もりしげかいせい
32歳
不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司
長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない
人当たりがよくていい人
だけど本当は強引!?
【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜
船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】
お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。
表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。
【ストーリー】
見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。
会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。
手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。
親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。
いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる……
托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。
◆登場人物
・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン
・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員
・ 八幡栞 (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女
・ 藤沢茂 (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。
【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。
しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。
そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。
渋々といった風に了承した杏珠。
そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。
挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。
しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。
後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
高司専務の憂鬱 (完)
白亜凛
恋愛
第16回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。
ありがとうございます!
♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡
高司颯天、三十歳。
彼は高司グループの御曹司。女子社員の憧れの的。
総務課の樋口杏香は、その日荒れていた。
「専務の部屋でまだ飲む!
じゃないと会社辞めてやる!」
偶然バーで会った高司専務に絡んだ杏香は、
そのまま深い関係に……。
専務が悪いわけじゃない。
――悪いのは私。
彼を恨んだりしない。
一大決心をして別れたはず、
なのに?
「お前は俺の女だからいいんだよ」
それってどういうことですか?
※ベリーズカフェ掲載同名小説のR18バージョンです。
描写はソフトですが、苦手な方はすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる