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バラ色ごきげんサタデー~ニヤニヤが止まらない~

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ペアになっている結婚指輪自体は二つともほとんどデザインが同じで、シンプルだけどスタイリッシュで、尚史の長い指に似合いそうだ。
この指輪を二人で着けるのだと思うと、ウキウキと言うかドキドキと言うか、少し胸の奥がくすぐったいような気もするけれど、なんだか嬉しくなってきた。

「これかな。尚史に似合いそう」
「俺よりモモが気に入るかの方が大事だよ?」
「私は尚史が選んでくれたのが一番だと思うから」

私が何気なくそう言うと、尚史はたちまち嬉しそうな顔をして、店員さんに向かってすごい勢いで「これください!」と叫んだ。
それがあまりにも大きな声だったので、店内にいた人たちが一斉にこちらを振り返る。

「尚史……声大きい……。みんな見てるよ」
「あっ、ごめん。でも今の、めっちゃ嬉しかったから、つい……」

こりゃダメだ。
完全なるバカップル認定を食らったな。
店員さんはニコニコ笑いながら、私たちのそんな様子を窺っている。

「ではこちらのリングでよろしいですか?」
「はい、お願いします!」

尚史は今にも飛び上がりそうな勢いで、元気よく返事をした。
だから声が大きいって!
尚史はいつも無気力で何事にも無関心なくせに、私のことになるとバカになってしまうらしい。
これからは気を付けないと。
それから指輪のサイズを計り、ピッタリのものを用意してもらった。
この店は通常他の店には置いていないサイズのものもあるそうで、サイズ直しに日数を取られることもなく、買ってすぐ身に着けられることで人気なのだと尚史が教えてくれた。

「指輪の裏に入れる刻印はどのようになさいますか?」

店員さんに尋ねられて、私たちは顔を見合わせた。
指輪の裏に入れる刻印って……英文だよね?
自慢じゃないけど、私も尚史も英語にはそれほど強くない。
店員さんは人気のある刻印の例文が書かれたシートを見せてくれたけど、どれもしっくり来ない。
尚史は腕組みをして考えるそぶりを見せたあと、スマホで何やら文字を入力して検索し始めた。

「じゃあ、これでお願いします」

尚史が店員さんに見せたスマホの画面には、『I love you  just the way you are』と書かれていた。

「ねぇ……どういう意味?」

私が小声で尋ねると、尚史は私の耳元に口を寄せて囁く。

「そのままの君を愛してる」

その言葉を聞いた途端、私は激しく炎上して、鼻血が出そうなほど頭に血が昇り、顔が真っ赤になった。
あ、あ、愛してるだと……?
そんなこと言われるのは生まれて初めてだよ!
真っ赤な顔をしてうつむいている私をよそに、店員さんは「少しお待ちください」と言って、指輪を持って店の奥に消えた。
尚史曰く、この店のもうひとつの人気の理由は、その場ですぐに刻印をしてくれることなのだそうだ。
なるほど、サイズ直しや刻印のために何度も足を運ぶ必要がなく、急いで指輪を用意したい人にはとてもありがたい店だと思う。
何度も足を運んでもらうことで売り上げを伸ばそうとする店より良心的で、次に指輪以外のアクセサリーを買うことがあっても、この店で買おうかなと言う気持ちになる。
15分ほど待ったあと、店員さんは刻印の済んだ指輪をトレイに乗せて戻ってきた。
店員さんは丁寧に磨いた指輪を私たちに見せて尋ねる。

「こちらでお間違いないですか?」
「はい、ありがとうございます!」

相変わらず尚史のテンションは高かったけれど、その嬉しそうな顔を見ると私まで嬉しくなる。
会計を済ませて店を出ると、尚史はソワソワしながら私の手を引いて駐車場に戻った。
車に乗ると、尚史はシートベルトを締めようとした私の手を握る。

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