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超甘党のススメ~焼いた餅には甘い蜜を絡めて二人でお召し上がりやがれください~
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谷口さんは何も言わないけれど、私がいきなり尚史と結婚したことをどう思っているだろう?
『私が中森さんを好きだってわかってて、二人の関係を隠してるなんてひどい!』なんて言って泣かれたらどうしよう。
「夏目先輩……あ、そうか、もう夏目先輩じゃないんだ。中森先輩でしたね」
「うん……。でも呼びやすいように呼んでくれたらいいよ、名前の方でもいいし」
「では今日からモモ先輩と呼び方を改めます。ところでモモ先輩はピンクとオレンジ、どちらが好きですか?」
いきなりなんの話?
とりあえず泣かれたりキレられたりしなくてホッとしたけど、私の好きな色を聞いてどうするつもりなんだろう?
「えーっと……ピンクかな……」
「ピンクですね、わかりました!ありがとうございます!」
谷口さんはそう言ったかと思うと、鞄を持ってオフィスを飛び出していった。
いやいや、私はまったくわけがわからないんだけど?
一体なんだったんだろうと思っていると、ポケットの中でスマホの通知音が鳴った。
【お疲れ。一緒に晩飯食いに行く?】
ここ数日、私は食後の薬を服用していたし、体調の回復に努めようと、仕事のあとはまっすぐ帰宅していた。
尚史はゲームのイベント期間と言うこともあって、仲間からのお誘いでキヨの店に行っていたようだけど、帰りが遅くなっても連絡だけは欠かさずしてくれた。
尚史から聞いたところによると、谷口兄妹はかなりの鬼ゲーマーで、仕事のあとは毎日のようにキヨの店に入り浸って、すっかり常連になっているそうだ。
あんなにオシャレでリア充っぽい谷口さんが鬼ゲーマーだったなんて信じられない。
人って見掛けによらないものなんだなと驚いた。
尚史からの短いトークメッセージに【うん、今から会社出るよ】と返信すると、【じゃあいつものところで】とメッセージが届く。
おそらく『いつものところ』は仮想カップル中に待ち合わせていた本屋ではなく、ビルの1階のことだろう。
いつも通りキヨの店で御飯を食べて、お酒を飲みながらゲームするのかな。
私は病み上がりだから、今日はまだお酒はやめておこう。
『仮想カップルが終わるまで来るな』と店への出入りを禁止にされていたから、キヨの店に行くのは久しぶりだ。
そういえば、私はキヨに言われた通りしばらく店には行っていないのに、尚史は私と会っていない日もキヨの店で谷口さんと一緒にいたんだと思うと、また少し胸がモヤッとする。
ん?なんでモヤッとする……?
尚史は谷口さんとは付き合っていないと言っていたし、私は尚史と結婚したんだから、モヤッとする必要なんかどこにもないのに。
……そうか、これはたぶん、私だけのけ者にされたような気がするからだ。
そんな楽しいことに私を誘ってくれないなんてずるーい!……みたいな?
うん、きっとそうだ。
そういうことにしておこう。
エレベーターを降りると、すでにいつものところでスマホの画面を見ながら待っている尚史の姿が見えた。
待ち合わせの場所も行き先も変わらないのに、待ち合わせをしている尚史は今は私の夫なのだと思うと、妙にくすぐったい気持ちになる。
私がそばに近付くと、尚史はスマホをポケットにしまって少し笑った。
「お疲れ」
「お疲れ。体はもう大丈夫?」
「うん、すっかり良くなった」
「なら良かった。じゃあ行こうか」
どこに行くんだろうと思いながらビルを出てしばらく歩いたところで、尚史が私の手を握った。
『私が中森さんを好きだってわかってて、二人の関係を隠してるなんてひどい!』なんて言って泣かれたらどうしよう。
「夏目先輩……あ、そうか、もう夏目先輩じゃないんだ。中森先輩でしたね」
「うん……。でも呼びやすいように呼んでくれたらいいよ、名前の方でもいいし」
「では今日からモモ先輩と呼び方を改めます。ところでモモ先輩はピンクとオレンジ、どちらが好きですか?」
いきなりなんの話?
とりあえず泣かれたりキレられたりしなくてホッとしたけど、私の好きな色を聞いてどうするつもりなんだろう?
「えーっと……ピンクかな……」
「ピンクですね、わかりました!ありがとうございます!」
谷口さんはそう言ったかと思うと、鞄を持ってオフィスを飛び出していった。
いやいや、私はまったくわけがわからないんだけど?
一体なんだったんだろうと思っていると、ポケットの中でスマホの通知音が鳴った。
【お疲れ。一緒に晩飯食いに行く?】
ここ数日、私は食後の薬を服用していたし、体調の回復に努めようと、仕事のあとはまっすぐ帰宅していた。
尚史はゲームのイベント期間と言うこともあって、仲間からのお誘いでキヨの店に行っていたようだけど、帰りが遅くなっても連絡だけは欠かさずしてくれた。
尚史から聞いたところによると、谷口兄妹はかなりの鬼ゲーマーで、仕事のあとは毎日のようにキヨの店に入り浸って、すっかり常連になっているそうだ。
あんなにオシャレでリア充っぽい谷口さんが鬼ゲーマーだったなんて信じられない。
人って見掛けによらないものなんだなと驚いた。
尚史からの短いトークメッセージに【うん、今から会社出るよ】と返信すると、【じゃあいつものところで】とメッセージが届く。
おそらく『いつものところ』は仮想カップル中に待ち合わせていた本屋ではなく、ビルの1階のことだろう。
いつも通りキヨの店で御飯を食べて、お酒を飲みながらゲームするのかな。
私は病み上がりだから、今日はまだお酒はやめておこう。
『仮想カップルが終わるまで来るな』と店への出入りを禁止にされていたから、キヨの店に行くのは久しぶりだ。
そういえば、私はキヨに言われた通りしばらく店には行っていないのに、尚史は私と会っていない日もキヨの店で谷口さんと一緒にいたんだと思うと、また少し胸がモヤッとする。
ん?なんでモヤッとする……?
尚史は谷口さんとは付き合っていないと言っていたし、私は尚史と結婚したんだから、モヤッとする必要なんかどこにもないのに。
……そうか、これはたぶん、私だけのけ者にされたような気がするからだ。
そんな楽しいことに私を誘ってくれないなんてずるーい!……みたいな?
うん、きっとそうだ。
そういうことにしておこう。
エレベーターを降りると、すでにいつものところでスマホの画面を見ながら待っている尚史の姿が見えた。
待ち合わせの場所も行き先も変わらないのに、待ち合わせをしている尚史は今は私の夫なのだと思うと、妙にくすぐったい気持ちになる。
私がそばに近付くと、尚史はスマホをポケットにしまって少し笑った。
「お疲れ」
「お疲れ。体はもう大丈夫?」
「うん、すっかり良くなった」
「なら良かった。じゃあ行こうか」
どこに行くんだろうと思いながらビルを出てしばらく歩いたところで、尚史が私の手を握った。
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