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どうもくすぶるなと思ったら私は餅を焼いていたらしい~気付いたときにはすでに飼い慣らされておりまして~

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佐和ちゃんの言う通り、幼馴染みの尚史とずっと一緒にいたいなんて、所詮無理な話だったんだな。
そう思った瞬間、尚史が私の体をギュッと抱きしめた。
私は何が起こったのかと大きく目を見開き、尚史の背中をバシバシ叩いた。

「ちょっ……えぇっ?なんなのこれ?!」
「幼馴染みだからってだけで一緒にいるのはもうやめる。だけど俺はモモと結婚する」
「はぁっ?!」

幼馴染みはもうやめたのに私と結婚するだって?
谷口さんと付き合ってるくせに?
そんなのどう考えてもおかしいでしょ?!
尚史が何を考えているのか、さっぱりわからない。

「尚史……あんたバカ?」
「失礼な。モモよりはマシだと思うぞ?」
「だったらなんで……!」
「俺がしたいと思ったからだけど?」

こんな飄々とした顔で言われても、本気なのかただの気まぐれなのかさえわからない。
私は尚史の体を思いきり押し返して、今度は逆に私が尚史の顔を両手でガシッとつかんだ。
尚史は相当驚いているようで、私にされるがままになっている。

「結婚するなら相手は選べって言ったのは尚史でしょ?」
「ああ、言ったな」
「じゃあちゃんと考えなさいよ!結婚は一生のことなんだよ?」

特大ブーメランの如く母に言われた言葉を放つと、尚史は呆れた顔をして大きなため息をついた。

「それ、モモが言う?」
「言うよ!私のことはともかく、尚史にはその場の勢いとかノリとかで後悔して欲しくないもん!」

彼女が優先になって一緒にいられなくなるのは寂しいけれど、尚史には幸せになって欲しいと思っているのは事実だし、何より彼女を裏切るとか悲しませるとか、八坂さんみたいにひどいことはして欲しくない。

「なんで俺が後悔するって決めつけんの?」

尚史は真顔になって両手で私の手をつかんだ。
私は尚史の視線から逃れようと目をそらす。

「だって……尚史には私より大事な人がいるでしょ……?」
「いないけど?」
「嘘だ、尚史は谷口さんと付き合ってるもん!」
「何それ、どこ情報?付き合ってないし」
「えっ?」

あんなに仲良くしているのに付き合ってないだって?
付き合ってないならなんなの?友達?
だけどこれまで積極的に女友達を作らなかった尚史が、尚史に好意を寄せている谷口さんと友達になったなんて信じがたい。
だがしかし、尚史が嘘をついているとも思えない。
尚史は友達だと思っていても、谷口さんはそう思っていないということもありうる。
谷口さんはガンガン攻めると言っていたし、まずはお友達から始めて、距離を縮めたところをゲットする……っていう作戦?
ここはやっぱり、尚史がきちんと話してくれないと納得がいかない。

「……そこんとこ詳しく」
「あー……めんどくさいけどしょうがないな。谷口さんは俺のパーティーのメンバー」
「……は?何それ、イミフ……」
「だからぁ……『スタードラゴンミラクル伝説』だよ!モモはキャラデザ気に入らないって言ってやってないけど、谷口さんは『スタードラゴンミラクル伝説』のプレイヤーで、俺のパーティーのメンバーだったの!」

『スタードラゴンミラクル伝説』は玄人向けのオンラインゲームだ。
スタート時は初期設定された仲間を連れて冒険を始め、一定のレベルになるとオンライン上で見つけた仲間とパーティーを作って一緒に戦うことができるらしい。
私はキャラクターのデザインに魅力を感じなかったからプレイしていないけど、尚史がハマっていることは知っている。

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