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まな板の上の鯉の気持ち~逃げられない鯉と逃げない鯉の違いはなんだ?~
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あの唇が私の唇に触れたのか……。
今思い出すと無性に恥ずかしくて、どんどん鼓動が速くなり、カーッと顔が熱くなる。
「どうした?飲まないのか?」
「いやっ、飲むよ。めっちゃ飲む、浴びるほど」
「……なんだそれ?普通に飲めよ、浴びなくていいから」
尚史は不思議そうな顔をして、またペットボトルの飲み口に口をつけた。
今まで意識したことはまったくなかったのに、尚史の唇の厚みとか形の良さがどうしても目についてしまう。
あの唇が私の唇をふさいで……。
また尚史の唇の感触を思い出してしまい、それをかき消そうとあわててミルクティーを喉に流し込んだ。
尚史はなんとも思ってないのに、私だけが意識しているなんてカッコ悪い。
八坂さんにキスされそうになったときはあんなに気持ち悪くてイヤだったのに、尚史とのキスは驚きこそすれちっとも気持ち悪くなかったし、イヤじゃなかった。
なんで……?
もしかして私は、仮想カップル作戦で男性への苦手意識を克服したのではなく、尚史だけを受け入れられるようになってしまったのか?!
だから八坂さん相手に、尚史との特訓の成果は出なかったとか……?
そして尚史以外のどの男性とでも、八坂さんに触られたときのような拒絶反応が出るのでは……?
だとしたら仮想カップル作戦は大失敗だ!!
ミルクティーのペットボトルを握りしめて、うなだれながら大きなため息をつくと、尚史は怪訝な顔をして首をかしげた。
「さっきからどうした?」
「……なんでもない。また結婚が遠のいたなって思っただけ」
「ふーん?でも今回のことで懲りただろ?結婚はいつかそのうち、好きな男とすれば良くね?」
「好きな男とって、簡単に言うけどねぇ……」
誰のせいで結婚が遠のいたと思っとるんじゃ!
それもこれも全部尚史の……いや、違うな。
これは尚史以外の男性への苦手意識を克服できなかった私自身の問題だ。
尚史は良かれと思って協力してくれたんだから、尚史を責めるのは筋違いだと思う。
「もういいや……。結婚はあきらめる」
「あきらめんの?」
「だってどう考えたって無理でしょ。私、八坂さんにちょっと触られただけでめちゃくちゃ気持ち悪かったし、ホントにイヤで、すっごい怖かったもん。他の人でもたぶん同じだと思う」
私がゲンナリしてそう言うと、尚史はおかしそうに声をあげて笑った。
「そうか……。でも股間蹴り上げなかっただけでも頑張ったじゃん。進歩したな」
「……うるさいな。だいたい尚史が……」
「俺が?」
尚史が他の男の人を余計に受け付けさせなくしたんだと言おうと思ったけど、それを言うと尚史になら何をされても大丈夫だと言っているのと同じだと気付いて恥ずかしくなり口ごもる。
「……なんでもない。それよりどうして尚史はあの場所がわかったの?それに大沢さんとはどういう関係?」
「んー?話せば長くなるから、説明すんのめんどくさい」
「めんどくさいって……ちゃんと説明してよ」
「イヤだ。モモもなんか言いかけてやめたじゃん。先にモモが話せば俺も話すけど?」
本当はすごく気になるけれど、言いかけてやめたことを私から話すのは恥ずかしすぎる。
私を男の人に慣れさせるためにくっついたり恋人っぽいことをしていただけなのに、何を勘違いしているんだと尚史に思われたくない。
「だったらもういい。聞かない」
「ふーん?まぁいいけど」
尚史は私の気持ちにも関心のなさそうな顔をして、平然とコーラを飲んでいる。
やっぱり尚史は尚史だ。
今思い出すと無性に恥ずかしくて、どんどん鼓動が速くなり、カーッと顔が熱くなる。
「どうした?飲まないのか?」
「いやっ、飲むよ。めっちゃ飲む、浴びるほど」
「……なんだそれ?普通に飲めよ、浴びなくていいから」
尚史は不思議そうな顔をして、またペットボトルの飲み口に口をつけた。
今まで意識したことはまったくなかったのに、尚史の唇の厚みとか形の良さがどうしても目についてしまう。
あの唇が私の唇をふさいで……。
また尚史の唇の感触を思い出してしまい、それをかき消そうとあわててミルクティーを喉に流し込んだ。
尚史はなんとも思ってないのに、私だけが意識しているなんてカッコ悪い。
八坂さんにキスされそうになったときはあんなに気持ち悪くてイヤだったのに、尚史とのキスは驚きこそすれちっとも気持ち悪くなかったし、イヤじゃなかった。
なんで……?
もしかして私は、仮想カップル作戦で男性への苦手意識を克服したのではなく、尚史だけを受け入れられるようになってしまったのか?!
だから八坂さん相手に、尚史との特訓の成果は出なかったとか……?
そして尚史以外のどの男性とでも、八坂さんに触られたときのような拒絶反応が出るのでは……?
だとしたら仮想カップル作戦は大失敗だ!!
ミルクティーのペットボトルを握りしめて、うなだれながら大きなため息をつくと、尚史は怪訝な顔をして首をかしげた。
「さっきからどうした?」
「……なんでもない。また結婚が遠のいたなって思っただけ」
「ふーん?でも今回のことで懲りただろ?結婚はいつかそのうち、好きな男とすれば良くね?」
「好きな男とって、簡単に言うけどねぇ……」
誰のせいで結婚が遠のいたと思っとるんじゃ!
それもこれも全部尚史の……いや、違うな。
これは尚史以外の男性への苦手意識を克服できなかった私自身の問題だ。
尚史は良かれと思って協力してくれたんだから、尚史を責めるのは筋違いだと思う。
「もういいや……。結婚はあきらめる」
「あきらめんの?」
「だってどう考えたって無理でしょ。私、八坂さんにちょっと触られただけでめちゃくちゃ気持ち悪かったし、ホントにイヤで、すっごい怖かったもん。他の人でもたぶん同じだと思う」
私がゲンナリしてそう言うと、尚史はおかしそうに声をあげて笑った。
「そうか……。でも股間蹴り上げなかっただけでも頑張ったじゃん。進歩したな」
「……うるさいな。だいたい尚史が……」
「俺が?」
尚史が他の男の人を余計に受け付けさせなくしたんだと言おうと思ったけど、それを言うと尚史になら何をされても大丈夫だと言っているのと同じだと気付いて恥ずかしくなり口ごもる。
「……なんでもない。それよりどうして尚史はあの場所がわかったの?それに大沢さんとはどういう関係?」
「んー?話せば長くなるから、説明すんのめんどくさい」
「めんどくさいって……ちゃんと説明してよ」
「イヤだ。モモもなんか言いかけてやめたじゃん。先にモモが話せば俺も話すけど?」
本当はすごく気になるけれど、言いかけてやめたことを私から話すのは恥ずかしすぎる。
私を男の人に慣れさせるためにくっついたり恋人っぽいことをしていただけなのに、何を勘違いしているんだと尚史に思われたくない。
「だったらもういい。聞かない」
「ふーん?まぁいいけど」
尚史は私の気持ちにも関心のなさそうな顔をして、平然とコーラを飲んでいる。
やっぱり尚史は尚史だ。
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