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いまさらだけど、結婚とはなんぞや?~『責任取る』の意味がわからないんだが~
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私は大事な新刊をさりげなく隠そうと雑誌に手を伸ばす。
「夏目先輩、合コンのとき八坂さんといい感じでしたよね。その後どうです?」
「えっ、ああ……」
なんの前触れもなく八坂さんの話題を振られたことにうろたえ、よく確認もせずにすぐ手元にあった雑誌を手に取る。
だけどそれがよりによって例の過激な見出しの雑誌だったので、さらにうろたえて派手に落としてしまった。
「あ、夏目先輩もこれ買うんですね。もしかしてこれで八坂さんを虜にしちゃうつもりですか?」
「かっ……買わないよ?間違えて取っちゃっただけだから!それに八坂さんとはまだそういう深い仲では……」
しどろもどろになりながら必死で言い訳をして、落としてしまった雑誌を元の場所に戻し、隣にある普通のファッション誌を手に取った。
谷口さんは意味ありげにニヤニヤ笑っている。
「そんなに照れなくても普通に買えばいいのにー……。でも『まだ』ってことは、これからそうなる可能性があるんですね!いいなぁ……」
……ん?いいなぁってどういう意味?
もしかして谷口さんもじつは八坂さんを狙っていて、私に恋のライバル宣言をしようとしている?
「いいなぁって……谷口さん、八坂さんとお近づきになりたいの?」
「いえ、私は八坂さんじゃなくて中森さん推しです!カッコいいですよねぇ、中森さん。私の好みそのものなんです!」
「へぇ……そうなんだー……」
まさかここで尚史の名前が出て来るとは思わなかった。
まぁ、顔とか見た目が良いのは確かだけど、合コンのときはろくに会話もせず、ひたすら食べていただけなのに。
それはイケメンは何をしていてもカッコいい、イケメンは正義ってこと?
「今朝偶然会社のそばで会えたんで、思いきって声かけちゃいました!」
「すごい……谷口さんって積極的なんだね。で、どうだった?」
「おはようございますって挨拶したら、チラッと私を見て会釈してくれました!」
ずいぶん無愛想な反応だけど、尚史は基本的には人見知りな性格だ。
おまけに目が悪いのにメガネをイヤがって作ろうともしないので、おそらく近くにいないと人の顔なんかろくに見えていない。
よく知らない人を声で判別できるほど他人に関心はないし、きっと尚史は谷口さんのことを覚えていないから、「この人誰だろう?」と思いながら会釈をしたんだと思う。
尚史らしいと言えば尚史らしい。
「あのクールな感じがたまんないんですよ」
尚史がクールだって……?
ゲーム以外は無気力で無関心な、ちょっとばかし背が高くて顔がいいだけの、ただのゲーヲタだけど。
谷口さんは本当の尚史を知らない方が幸せかも知れない。
「中森さん、本当にカッコいいですよねぇ。私、どうにかして中森さんと付き合いたいです!」
「……付き合いたいの?」
「もちろんです!付き合いたいって言うかむしろ結婚したいです!朝目が覚めたら隣にあのイケメンがいる毎日ですよ、最高じゃないですか!」
「結婚ねぇ……」
イケメンだから結婚したいなんて、そんな短絡的な理由で結婚してもいいのか?
そう思ったけれど、光子おばあちゃんのためにとにかく早く結婚したいと言っている私も似たようなものだと気付く。
私も端から見ればこんな感じなんだろうか。
「あんなにイケメンなんだから、やっぱり彼女とかいるんですかねぇ」
尚史とは幼馴染みだということも内緒にしているのに、『あのイケメンは今、私の彼氏なんだよ!仮想だけどね!』なんてことは口が裂けても言えない。
「夏目先輩、合コンのとき八坂さんといい感じでしたよね。その後どうです?」
「えっ、ああ……」
なんの前触れもなく八坂さんの話題を振られたことにうろたえ、よく確認もせずにすぐ手元にあった雑誌を手に取る。
だけどそれがよりによって例の過激な見出しの雑誌だったので、さらにうろたえて派手に落としてしまった。
「あ、夏目先輩もこれ買うんですね。もしかしてこれで八坂さんを虜にしちゃうつもりですか?」
「かっ……買わないよ?間違えて取っちゃっただけだから!それに八坂さんとはまだそういう深い仲では……」
しどろもどろになりながら必死で言い訳をして、落としてしまった雑誌を元の場所に戻し、隣にある普通のファッション誌を手に取った。
谷口さんは意味ありげにニヤニヤ笑っている。
「そんなに照れなくても普通に買えばいいのにー……。でも『まだ』ってことは、これからそうなる可能性があるんですね!いいなぁ……」
……ん?いいなぁってどういう意味?
もしかして谷口さんもじつは八坂さんを狙っていて、私に恋のライバル宣言をしようとしている?
「いいなぁって……谷口さん、八坂さんとお近づきになりたいの?」
「いえ、私は八坂さんじゃなくて中森さん推しです!カッコいいですよねぇ、中森さん。私の好みそのものなんです!」
「へぇ……そうなんだー……」
まさかここで尚史の名前が出て来るとは思わなかった。
まぁ、顔とか見た目が良いのは確かだけど、合コンのときはろくに会話もせず、ひたすら食べていただけなのに。
それはイケメンは何をしていてもカッコいい、イケメンは正義ってこと?
「今朝偶然会社のそばで会えたんで、思いきって声かけちゃいました!」
「すごい……谷口さんって積極的なんだね。で、どうだった?」
「おはようございますって挨拶したら、チラッと私を見て会釈してくれました!」
ずいぶん無愛想な反応だけど、尚史は基本的には人見知りな性格だ。
おまけに目が悪いのにメガネをイヤがって作ろうともしないので、おそらく近くにいないと人の顔なんかろくに見えていない。
よく知らない人を声で判別できるほど他人に関心はないし、きっと尚史は谷口さんのことを覚えていないから、「この人誰だろう?」と思いながら会釈をしたんだと思う。
尚史らしいと言えば尚史らしい。
「あのクールな感じがたまんないんですよ」
尚史がクールだって……?
ゲーム以外は無気力で無関心な、ちょっとばかし背が高くて顔がいいだけの、ただのゲーヲタだけど。
谷口さんは本当の尚史を知らない方が幸せかも知れない。
「中森さん、本当にカッコいいですよねぇ。私、どうにかして中森さんと付き合いたいです!」
「……付き合いたいの?」
「もちろんです!付き合いたいって言うかむしろ結婚したいです!朝目が覚めたら隣にあのイケメンがいる毎日ですよ、最高じゃないですか!」
「結婚ねぇ……」
イケメンだから結婚したいなんて、そんな短絡的な理由で結婚してもいいのか?
そう思ったけれど、光子おばあちゃんのためにとにかく早く結婚したいと言っている私も似たようなものだと気付く。
私も端から見ればこんな感じなんだろうか。
「あんなにイケメンなんだから、やっぱり彼女とかいるんですかねぇ」
尚史とは幼馴染みだということも内緒にしているのに、『あのイケメンは今、私の彼氏なんだよ!仮想だけどね!』なんてことは口が裂けても言えない。
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