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冒険の心得《装備は万全に 休息大事 油断大敵 無理厳禁 ※突如現れる無自覚イケメンに注意》
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実際に着て見せれば、私には似合わないということが尚史にもわかるだろう。
「……尚史がそう言うなら」
服を持って試着室に入り、鏡の前に立つ。
鏡に写った自分の姿を改めて見ると、本当に冴えない格好だ。
いや……『格好が』と言うよりは、冴えないのは私自身が女としてイマイチだからだろう。
尚史は特別おしゃれをしているわけでも、服装に気を遣っている様子でもないのに、何を着ていても見映えがして人の目を引く。
小さい頃から一緒にいるのが当たり前すぎてあまり気にしたことがなかったけれど、尚史と会うためだけにこんなに服装で悩んだのは初めてだ。
尚史が選んでくれた服に着替えて、鏡の前でクルリと一周回ってみた。
スカートの裾がフワリと翻るのを見て、私にはやっぱり可愛すぎやしないかとか、この姿を見た尚史はなんと言うだろうかと考えてしまい、恥ずかしいような、照れくさいような、なんとも言えない気持ちになる。
「モモ、どんな感じ?試着できた?」
「うん……試着はできた……けど……」
「じゃあ開けるよ?」
えっ、いきなり開けるの?!
まだ心の準備もできてないのに?
私が「ちょっと待って」と言おうとしたときにはすでに、尚史は試着室のカーテンを開けていた。
鏡の前で尚史に背を向けうつむいている状態の私を見ても、尚史は何も言わない。
無言はつらいよ、頼むからなんか言って!
黙って憐れみの目を向けられたり、気を遣って白々しいお世辞を言われるよりは、『やっぱり似合わないな』と笑い飛ばされる方がまだマシだ。
「はは……こんな可愛い服、私にはやっぱ似合わないよねぇ」
私が沈黙に耐えかねてそう言うと、尚史は私の両肩をつかんでクルリと私を自分の方に向かせた。
「思った通りだな」
「うん、思った通りだね」
「似合ってる」
「そう、似合ってる……え?」
今のは聞き違いなのか?
『似合ってる』って言ったような……。
もしかして適当にそう言ったのかなとか、やっぱりお世辞なのかなと思ったけれど、尚史は視線を私の頭のてっぺんから爪先まで3往復させて、大きくうなずいた。
どうやら本当に似合うと思っているらしい。
「いいじゃん、似合うよ。勝負服、それにしとけば?」
「あ……うん……そうする……」
尚史は私が八坂さんとのデートに着ていく勝負服を選んでいるのだと思っているようだ。
……違うんだけどな。
だけど尚史本人に面と向かって『私が服を買おうと思ったのは、尚史と一緒に歩くためだよ』とは言いづらい。
着てきた服に着替えようか、それともそのまま着て行こうか悩んでいると、尚史が少し離れた場所にいる店員を呼んで「このまま着ていくのでタグを切ってください」と頼んでくれた。
店員にタグを切ってもらって会計を済ませ、私が着てきた服の入った紙袋を持って店を出ると、尚史は靴屋の方を指差した。
「靴も買う?」
「あ、うん」
「じゃあ靴屋行こう」
服を買ったらそれに合う靴も買おうと考えるのは当たり前なのかも知れないけれど、尚史がそれに気付いたのは本当に意外だった。
私の服を選んでくれたり、店員を呼んでくれたり、さっきから尚史がいつもとは全然違う。
明け方近くまでゲームをして常に寝不足で無気力ないつもの尚史とはあまりにもギャップが大きすぎて、なんだか尚史じゃないみたいだ。
できるだけ彼氏らしくしようと、かなり頑張ってくれているのかな?
もしそうだとしたら、尚史とのデートのために、尚史が選んだ服を買って良かったと思う。
一緒に靴屋に行って、買ったばかりの服に合うあまり踵の高過ぎない歩きやすそうな靴を買った。
靴もその場でタグを切ってもらって会計を済ませ、履いてきた靴を紙袋に入れてもらった。
「……尚史がそう言うなら」
服を持って試着室に入り、鏡の前に立つ。
鏡に写った自分の姿を改めて見ると、本当に冴えない格好だ。
いや……『格好が』と言うよりは、冴えないのは私自身が女としてイマイチだからだろう。
尚史は特別おしゃれをしているわけでも、服装に気を遣っている様子でもないのに、何を着ていても見映えがして人の目を引く。
小さい頃から一緒にいるのが当たり前すぎてあまり気にしたことがなかったけれど、尚史と会うためだけにこんなに服装で悩んだのは初めてだ。
尚史が選んでくれた服に着替えて、鏡の前でクルリと一周回ってみた。
スカートの裾がフワリと翻るのを見て、私にはやっぱり可愛すぎやしないかとか、この姿を見た尚史はなんと言うだろうかと考えてしまい、恥ずかしいような、照れくさいような、なんとも言えない気持ちになる。
「モモ、どんな感じ?試着できた?」
「うん……試着はできた……けど……」
「じゃあ開けるよ?」
えっ、いきなり開けるの?!
まだ心の準備もできてないのに?
私が「ちょっと待って」と言おうとしたときにはすでに、尚史は試着室のカーテンを開けていた。
鏡の前で尚史に背を向けうつむいている状態の私を見ても、尚史は何も言わない。
無言はつらいよ、頼むからなんか言って!
黙って憐れみの目を向けられたり、気を遣って白々しいお世辞を言われるよりは、『やっぱり似合わないな』と笑い飛ばされる方がまだマシだ。
「はは……こんな可愛い服、私にはやっぱ似合わないよねぇ」
私が沈黙に耐えかねてそう言うと、尚史は私の両肩をつかんでクルリと私を自分の方に向かせた。
「思った通りだな」
「うん、思った通りだね」
「似合ってる」
「そう、似合ってる……え?」
今のは聞き違いなのか?
『似合ってる』って言ったような……。
もしかして適当にそう言ったのかなとか、やっぱりお世辞なのかなと思ったけれど、尚史は視線を私の頭のてっぺんから爪先まで3往復させて、大きくうなずいた。
どうやら本当に似合うと思っているらしい。
「いいじゃん、似合うよ。勝負服、それにしとけば?」
「あ……うん……そうする……」
尚史は私が八坂さんとのデートに着ていく勝負服を選んでいるのだと思っているようだ。
……違うんだけどな。
だけど尚史本人に面と向かって『私が服を買おうと思ったのは、尚史と一緒に歩くためだよ』とは言いづらい。
着てきた服に着替えようか、それともそのまま着て行こうか悩んでいると、尚史が少し離れた場所にいる店員を呼んで「このまま着ていくのでタグを切ってください」と頼んでくれた。
店員にタグを切ってもらって会計を済ませ、私が着てきた服の入った紙袋を持って店を出ると、尚史は靴屋の方を指差した。
「靴も買う?」
「あ、うん」
「じゃあ靴屋行こう」
服を買ったらそれに合う靴も買おうと考えるのは当たり前なのかも知れないけれど、尚史がそれに気付いたのは本当に意外だった。
私の服を選んでくれたり、店員を呼んでくれたり、さっきから尚史がいつもとは全然違う。
明け方近くまでゲームをして常に寝不足で無気力ないつもの尚史とはあまりにもギャップが大きすぎて、なんだか尚史じゃないみたいだ。
できるだけ彼氏らしくしようと、かなり頑張ってくれているのかな?
もしそうだとしたら、尚史とのデートのために、尚史が選んだ服を買って良かったと思う。
一緒に靴屋に行って、買ったばかりの服に合うあまり踵の高過ぎない歩きやすそうな靴を買った。
靴もその場でタグを切ってもらって会計を済ませ、履いてきた靴を紙袋に入れてもらった。
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