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恋愛はRPGの如し?まずは経験値を積むべし
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キヨの店からの帰り道、私と尚史は無言で電車の座席に並んで座っていた。
なりゆきとは言え、尚史とカップルの真似事をすることになろうとは思ってもみなかった。
それはきっと尚史も同じだと思う。
尚史はどうだかわからないけれど、私は世間のリア充カップルがどんな風に過ごしているのかなんてよく知らない。
漫画の中のカップルは、最初のデートからいとも簡単に手を繋いだりキスしたりしているけれど、現実でもそんな感じなんだろうか。
もちろん私と尚史は仮想カップルだから、手ぐらいは繋いだとしても、本物の恋人同士みたいなことはしない。
しかし尚史と手を繋いだのなんて、きっと小学校に入学して間もない頃が最後じゃないか?
キヨは『尚史に慣らしてもらえ』と他人事のように言ったけれど、お互いに大人になった今、そんなことがシラフでできるのかと思ったりする。
尚史と難なく手を繋げるようになればミッションクリアとなるのか、それとも最後のミッションはもっと別の場所にあるのか。
この作戦の最終目的地は一体どこなんだろう?
「なぁモモ、さっきの話だけど」
尚史は鞄の中からゲーム機を取り出しながら呟いた。
冷静になったら面倒になって、やっぱりやめておこうと言うのかな?
「うん……なんかごめんね、面倒なことに巻き込んで。イヤなら今からでも断ってくれていいよ」
「うーん……別にそんなこと思ってないけど、カップルみたいにしろって言われても、俺もそれらしいことはしてこなかったから、どうすればいいのかがよくわからない。モモはどうすればいいと思う?」
誰と付き合っても長続きしなかったと言っていたからなんとなく想像はつくけど、尚史も恋愛に関してはほぼ初心者で、経験値は0に近いんだと思う。
「キヨは手を繋いでデートしろって言ってたけど……それ、私たちにとってはハードル高過ぎるよね」
「あれだな。冒険始めたばっかのときってレベル1で、丸腰同然の弱っちい初期装備で、もちろん経験値も0で、激弱の敵を倒すのにも一苦労じゃん?俺とモモは今まさにそんな状態で、王様から中ボスクラスの敵を倒しに行けって言われてるみたいな」
「ん?あー、そうだね。そんな感じ」
なんともゲーヲタの尚史らしい例えだ。
だけどロールプレイングゲームに置き換えると、私たちのおかれている状況がよくわかる。
「いくらなんでも、レベル1でいきなり中ボスは無理だよな。まずは最初の城とか町の周りウロウロして、弱い敵で経験値積んでレベル上げて、お金貯めて装備も整えてから次の町を目指して、またレベル上げて……って言う段階を踏んだ方がいいと俺は思うんだけど」
「だよね、私もそう思う。いきなり全滅したくないもん。じゃあ具体的にはどうしようか」
「そうさなぁ……。まずは……」
尚史は一度ゲーム機の画面から顔を上げて少し考え、少しだけ私との距離を詰めて座席に座り直した。
「これくらいかな」
「……ん?何が?」
「俺とモモは横に並んで座ることが多いじゃん。電車はもちろんだけど、外で飯食うときもカウンター席に座るし、部屋でゲームしてるときも横に並んで座るだろ?だいたいいつも30センチくらいは離れて座るから、その距離を少し詰めてみた」
なるほど、物理的な距離を縮めてみたということか。
私と尚史には暗黙の了解で確保しているパーソナルスペースみたいなものがあって、その領域は常に守られてきた。
尚史はきっと、恋人同士ならもう少しその距離が近いのではないかと考えたのだろう。
なりゆきとは言え、尚史とカップルの真似事をすることになろうとは思ってもみなかった。
それはきっと尚史も同じだと思う。
尚史はどうだかわからないけれど、私は世間のリア充カップルがどんな風に過ごしているのかなんてよく知らない。
漫画の中のカップルは、最初のデートからいとも簡単に手を繋いだりキスしたりしているけれど、現実でもそんな感じなんだろうか。
もちろん私と尚史は仮想カップルだから、手ぐらいは繋いだとしても、本物の恋人同士みたいなことはしない。
しかし尚史と手を繋いだのなんて、きっと小学校に入学して間もない頃が最後じゃないか?
キヨは『尚史に慣らしてもらえ』と他人事のように言ったけれど、お互いに大人になった今、そんなことがシラフでできるのかと思ったりする。
尚史と難なく手を繋げるようになればミッションクリアとなるのか、それとも最後のミッションはもっと別の場所にあるのか。
この作戦の最終目的地は一体どこなんだろう?
「なぁモモ、さっきの話だけど」
尚史は鞄の中からゲーム機を取り出しながら呟いた。
冷静になったら面倒になって、やっぱりやめておこうと言うのかな?
「うん……なんかごめんね、面倒なことに巻き込んで。イヤなら今からでも断ってくれていいよ」
「うーん……別にそんなこと思ってないけど、カップルみたいにしろって言われても、俺もそれらしいことはしてこなかったから、どうすればいいのかがよくわからない。モモはどうすればいいと思う?」
誰と付き合っても長続きしなかったと言っていたからなんとなく想像はつくけど、尚史も恋愛に関してはほぼ初心者で、経験値は0に近いんだと思う。
「キヨは手を繋いでデートしろって言ってたけど……それ、私たちにとってはハードル高過ぎるよね」
「あれだな。冒険始めたばっかのときってレベル1で、丸腰同然の弱っちい初期装備で、もちろん経験値も0で、激弱の敵を倒すのにも一苦労じゃん?俺とモモは今まさにそんな状態で、王様から中ボスクラスの敵を倒しに行けって言われてるみたいな」
「ん?あー、そうだね。そんな感じ」
なんともゲーヲタの尚史らしい例えだ。
だけどロールプレイングゲームに置き換えると、私たちのおかれている状況がよくわかる。
「いくらなんでも、レベル1でいきなり中ボスは無理だよな。まずは最初の城とか町の周りウロウロして、弱い敵で経験値積んでレベル上げて、お金貯めて装備も整えてから次の町を目指して、またレベル上げて……って言う段階を踏んだ方がいいと俺は思うんだけど」
「だよね、私もそう思う。いきなり全滅したくないもん。じゃあ具体的にはどうしようか」
「そうさなぁ……。まずは……」
尚史は一度ゲーム機の画面から顔を上げて少し考え、少しだけ私との距離を詰めて座席に座り直した。
「これくらいかな」
「……ん?何が?」
「俺とモモは横に並んで座ることが多いじゃん。電車はもちろんだけど、外で飯食うときもカウンター席に座るし、部屋でゲームしてるときも横に並んで座るだろ?だいたいいつも30センチくらいは離れて座るから、その距離を少し詰めてみた」
なるほど、物理的な距離を縮めてみたということか。
私と尚史には暗黙の了解で確保しているパーソナルスペースみたいなものがあって、その領域は常に守られてきた。
尚史はきっと、恋人同士ならもう少しその距離が近いのではないかと考えたのだろう。
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