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乙女のピンチにヒーローが駆け付けるのは漫画だけではないらしい
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「まぁそうだな。モモっちの話聞いただけでも、その八坂って男はかなりモテそうだし、おそらく相当こなれてるだろうから、手が早い可能性も高い」
確かに私は幼馴染みやゲーム仲間以外の男の人と接することには慣れていない。
入社5年目になった今でも、男性の同僚と業務上のやり取りをするときですら目を合わせることができずにいる。
本当にこんなことでは結婚どころか、デートもまともにできそうもない。
「どうしよう……。もし相手が近付いたり手を繋ごうとしてきたときに拒否ったりしたら感じ悪いよね?」
「俺なら嫌われてるのかなと思うかも。そうしたら多分もう誘わないだろうな」
八坂さんのことはまだ好きというわけじゃないけど、嫌われていると勘違いされた上に逆に嫌われでもしたら大変だ。
また振り出しに戻って結婚が遠のいてしまう。
「それは困る……。なんとかならないかなぁ……」
「そこは慣れるしかないだろ」
「慣れるったって……」
慣れるにはどうすればいいのかと尋ねようとすると、店のドアが開き見慣れない3人組の男性客が店内に入ってきた。
常連客の多いこの店では珍しいことだ。
「いらっしゃい」
「もう開いてんだよね?入って大丈夫?」
「ええ、どうぞ」
キヨが男性客のおつまみを用意して接客を始めると、続けて常連客も来店したので話はそこで打ち切られた。
私の相談は結局なんの解決にもならなかったけど、私は男の人に慣れるにはどうすればいいのだろうと考えながら冷めかけたオムライスを黙々と平らげた。
それから1時間ほど経った頃、尚史からメッセージが届いた。
【やっと終わった。これから行く。着いたらすぐ飯食えるようにキヨに頼んどいて】
お気に入りのキャラスタンプで【了解】と返信して、キヨに尚史の晩御飯を大盛りで注文した。
こんな時間まで尚史が残業するなんて珍しい。
あと30分待って来なければ先に帰るつもりだったけど、これから来ると言うので待つことにして、もう一杯ビールをオーダーした。
それにしても今日の客はあまり馴染みのない人ばかりだ。
いつものゲーム仲間が全然来ない。
私の次に来店した3人組の男性グループは平日の夜だと言うのにガンガンお酒を飲んで、完全に出来上がって騒いでいる。
他の席の客たちもそれぞれに盛り上がっているので、それほど気にしてはいないようだ。
だけど私はこの騒がしさが、なんだか別の店に来ているようであまり居心地が良くない。
キヨはキッチンで尚史のために料理を作り、アルバイトのマコトくんとカズミくんが接客に追われている。
カウンター席に座っているOL風の女子2人組はマコトくん目当てなのか、さっきからしきりにマコトくんに話し掛けている。
マコトくんが彼女らにつかまっている分、カズミくんは忙しそうにボックス席とカウンターの間を行ったり来たりしている。
この店にもいろんな客が来るんだなと思いながらRPGのレベル上げをしていると、尚史のために空けておいた一番奥の席に誰かが座った。
尚史にしてはやけに早いなと思って顔を上げると、そこに座っていたのは、さっきまでボックス席で騒いでいた3人組の男性客の一人だった。
その人はやけに近い距離で、ニヤニヤしながら私の顔を覗き込むように見ている。
直接体に触られたわけでもないのに、その視線だけで不快な気持ちになった。
「こんばんは」
「こ……こんばんは……」
もちろん知り合いではないし、この店で会うのも初めてなのに、突然話し掛けてくるなんて一体なんの用だろう?
確かに私は幼馴染みやゲーム仲間以外の男の人と接することには慣れていない。
入社5年目になった今でも、男性の同僚と業務上のやり取りをするときですら目を合わせることができずにいる。
本当にこんなことでは結婚どころか、デートもまともにできそうもない。
「どうしよう……。もし相手が近付いたり手を繋ごうとしてきたときに拒否ったりしたら感じ悪いよね?」
「俺なら嫌われてるのかなと思うかも。そうしたら多分もう誘わないだろうな」
八坂さんのことはまだ好きというわけじゃないけど、嫌われていると勘違いされた上に逆に嫌われでもしたら大変だ。
また振り出しに戻って結婚が遠のいてしまう。
「それは困る……。なんとかならないかなぁ……」
「そこは慣れるしかないだろ」
「慣れるったって……」
慣れるにはどうすればいいのかと尋ねようとすると、店のドアが開き見慣れない3人組の男性客が店内に入ってきた。
常連客の多いこの店では珍しいことだ。
「いらっしゃい」
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「ええ、どうぞ」
キヨが男性客のおつまみを用意して接客を始めると、続けて常連客も来店したので話はそこで打ち切られた。
私の相談は結局なんの解決にもならなかったけど、私は男の人に慣れるにはどうすればいいのだろうと考えながら冷めかけたオムライスを黙々と平らげた。
それから1時間ほど経った頃、尚史からメッセージが届いた。
【やっと終わった。これから行く。着いたらすぐ飯食えるようにキヨに頼んどいて】
お気に入りのキャラスタンプで【了解】と返信して、キヨに尚史の晩御飯を大盛りで注文した。
こんな時間まで尚史が残業するなんて珍しい。
あと30分待って来なければ先に帰るつもりだったけど、これから来ると言うので待つことにして、もう一杯ビールをオーダーした。
それにしても今日の客はあまり馴染みのない人ばかりだ。
いつものゲーム仲間が全然来ない。
私の次に来店した3人組の男性グループは平日の夜だと言うのにガンガンお酒を飲んで、完全に出来上がって騒いでいる。
他の席の客たちもそれぞれに盛り上がっているので、それほど気にしてはいないようだ。
だけど私はこの騒がしさが、なんだか別の店に来ているようであまり居心地が良くない。
キヨはキッチンで尚史のために料理を作り、アルバイトのマコトくんとカズミくんが接客に追われている。
カウンター席に座っているOL風の女子2人組はマコトくん目当てなのか、さっきからしきりにマコトくんに話し掛けている。
マコトくんが彼女らにつかまっている分、カズミくんは忙しそうにボックス席とカウンターの間を行ったり来たりしている。
この店にもいろんな客が来るんだなと思いながらRPGのレベル上げをしていると、尚史のために空けておいた一番奥の席に誰かが座った。
尚史にしてはやけに早いなと思って顔を上げると、そこに座っていたのは、さっきまでボックス席で騒いでいた3人組の男性客の一人だった。
その人はやけに近い距離で、ニヤニヤしながら私の顔を覗き込むように見ている。
直接体に触られたわけでもないのに、その視線だけで不快な気持ちになった。
「こんばんは」
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もちろん知り合いではないし、この店で会うのも初めてなのに、突然話し掛けてくるなんて一体なんの用だろう?
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