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嘘も通せば修羅場になる

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翌日カフェで顔を合わせた恵梨奈は、いつもとたいして変わりない様子に見えた。
順平の言う通り、そこまで本気でもなかったのかな。
私は余計な事を話さないで済むように、せっせとランチの仕込みをした。
仕事中はそれでやり過ごせても、賄いを食べるのは同じ時間だ。
恵梨奈はチキンのクリーム煮をスプーンですくいながら、ジーッと私を見た。

「朱里さん、ホントに順平くんと付き合ってるんですかー?」

やっぱり来たか、この質問。
ここはハッキリと否定した方がいいのか、それとも順平の下らない嘘に付き合ってやった方がいいのか。
付き合ってはいないけど、同じ部屋で暮らしているのは事実だ。
あれは嘘だとバラすとしても、順平がなぜそんな嘘をついたのかと聞かれるとまた面倒な事になる。
順平の本音を恵梨奈本人に面と向かってそのまま言う勇気は、私にはない。
ここは適当に話を合わせて濁しておくか。

「うん……まぁ」
「えー、信じられなーい!」

そうでしょうよ。
昔はともかく、今は付き合ってないからね。

「順平くん、今までそんなの一言も言わなかったのに。朱里さんも黙ってるなんてひどいです」
「あー……うん、ごめんね。言い出しづらくて……」

なんで私が8つも歳下の子に、ありもしない事を責められて謝らなきゃいけないんだ。
全部順平が蒔いた種なのに。

「だけど、なんか納得しちゃいました」
「……何が?」
「順平くん、私とエッチはしてもキスはしてくれなかったから」

恵梨奈の言葉に面喰らって、危うく口の中の物を吹き出しそうになった。
なんだそれ?!
本気で好きかどうかの基準ってそこなの?
今まで一体どんな恋愛をしてきたんだ?

「……そうなの?」
「順平くんからもキスしてくれないけど、しようとしてもキスは嫌いだって言って、一度もさせてくれなくて。よく考えたら、たまに会ってもエッチしかしてないし、デートらしいデートも食事もした事なかったです」
「ふーん……」

明け透け過ぎる……。
仕返しのつもりではなさそうだけど、私がその男の彼女だって言ってるのに、普通はそんな話しないよね?
この子は天然なんだろうか。

「順平くん、めちゃくちゃタイプだったのになぁ。エッチもすごく良かったし……」

呆れて言葉も出ない。
順平の言った通り、たいしたダメージはなさそうだ。
私は少しホッとして食事を続けた。

「朱里さんは順平くんと一緒に暮らしてるんですよね?」
「ん?まぁ、そうだね」

一緒に暮らしているとは言え部屋は別々だし、順平の部屋には一度も入った事がないけれど、それは本当の事だ。

「順平くん、いっつもあんな感じですか?」
「……どうかな」
「え?」

あ、しまった。
私と順平は付き合っている事になっているんだから、普段の様子を知らないと言うとおかしいと思われる。
ボロが出るといけないから、当たり障りのない事を言っておこう。

「うん、そうだね。あんな感じ」


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