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月曜日は波乱の予感

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朝礼の終わりに、今日から第二支部に所属する事になった新人の紹介があった。
金井さんの〈子〉の原田ハラダさんは、中学生の双子の子どもがいるらしい。
里山サトヤマさんの〈子〉の倉橋クラハシさんは、3人の子を持つバツイチのシングルマザーなんだそうだ。
〈親〉のいない佐藤サトウさんは、保険の営業職員には珍しく独身の30歳で、ずっと派遣社員として大手化粧品メーカーの美容部員をしていたと言う。
愛美は内勤席で新人の自己紹介を聞きながら、佐藤さんの美しさに見入っていた。

   (美人だな、佐藤さん……。さすが美容部員やってただけあって、肌が白くて綺麗……。おまけにスラッとしてスタイルもいいし、大人の女の色気もある……。なのになんで独身?)

今時30歳独身なんてなんの不思議もないが、あれだけの美人だからきっとモテるんだろうな、などと愛美は勝手に想像する。

   (歳だけは私の方が3つ若いけど、肌年齢はあちらの方がずっと若いかも……)

男は美人に弱い。
うかうかしていると、同行などで行動を共にする機会が多いであろう緒川支部長も、佐藤さんの色香にやられてしまうかも知れない。

   (ちょっと気を抜き過ぎだな、私……。今日から念入りに肌の手入れしよう。ダイエットとかもした方がいい?それともエクササイズか……?)

特別太っているわけではないけれど、体の所々に気になる無駄な肉がついているなと思う。
佐藤さんに比べると胸のボリュームも腰のくびれも物足りないし、色気にはほど遠い体型だと愛美は肩を落とす。

   (はぁ……。とても同じ女だとは思えないよ。一体何から手をつければいいのやら……)



朝礼の後、愛美は新人たちに説明をしながら、いくつもの提出書類を配布した。
すぐに提出する必要のある書類に新人たちが記入し始めると、愛美は佐藤さんの手元をチラリと覗いた。
佐藤さんの『綾女(アヤメ』という名前の響きが素敵だなと愛美は思う。

   (佐藤さん、容姿だけじゃなくて名前まで綺麗なんだよねぇ……)

『川南第二支部にはイケメン支部長だけでなく、ものすごく美人な営業職員がいる』と社内で話題になりそうだ。

   (支部長と佐藤さん、背も高いしスラッとして、二人並んでると絵になるな……。圧倒される……)

美男美女という言葉がこれほどぴったりと当てはまる男女も、なかなかいないだろう。
佐藤さんのそばにいるのが同じ女としてなんとなく恥ずかしくなり、愛美は書類を配り終えるとそそくさと内勤席に戻った。

   (今はそんな事より仕事仕事!!)

女子力では敵わない分、仕事で頑張ろうと思ったものの、今月は増産月の後で気が緩んでいるのか、営業職員のオバサマたちの仕事のペースが遅い。
数少ない契約に関する処理を終えると、年度末の支部会計報告に備えて、パソコンの支部経費出納帳を開き間違いがないか確認する事にした。

   (暇すぎるのも困るけど、こういう細かい仕事はできるときにやっておかかないと)

その後も愛美は、パンフレットの補充や備品のチェックなど、忙しい時にはなかなかできない細かい仕事をした。
備品のチェックを終える頃、緒川支部長が新人研修の終わりを告げる声が聞こえた。
時間は10時半をまわったところだ。
内勤席の奥にある備品用ロッカーの鍵を締め、コーヒーでも飲んで一息つこうと愛美が立ち上がろうとした時。

「おはようございまーす!!」

背後からの突然の大声に驚いた愛美は、思わず慌てて立ち上がろうとしてバランスを崩し、足首をひねって転んでしまった。

「いったーい……」

   (急にデカイ声出したの誰だよ、バカ!!)

愛美が床にへたり込み、痛む足首を押さえていると、慌てた様子で健太郎が駆け寄ってくる

「大丈夫か?」
「バカ……大丈夫じゃないよ……。めちゃくちゃに痛い……」
「ちょっと見せてみろ」

健太郎は愛美の足首に手を添えて、ゆっくりと動かした。

「これ痛むか?」
「痛いわ!!動かすな!!」

あまりの痛さで、愛美の目に涙がにじんだ。

「あー……結構派手に捻挫してるな……」
「バカー!!健太郎のせいだー!!」

健太郎は泣きそうになっている愛美の頭を、ヨシヨシと撫でた。

「ごめん、悪かったって……」

愛美と健太郎の声を聞きつけて、支部のオバサマたちが何事かと集まってくる。
世話焼きの金井さんが、いち早く声を掛けた。

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