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一章 (ミステリーダンジョン編)
4.旅の準備
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翌朝ーー
「昨日は悪かった。少し気難しくなっていたんだ」
俺はヂラスに昨夜のことについて謝った。
「久しぶりに会えたと言うのに、人生相談なんかして。自分勝手だったのは分かっている。悪かった」
俺はそう言ってヂラスに頭を下げた。
ヂラスは驚いた顔をしている。
「おいおい、そんなことで気に病まないでくれよ。誰にでも悩む時期はある。お前さんも、そういう時期だったんだろうよ」
そういう時期か。この年齢になって言われるのは気恥ずかしいな。
「それより、俺の方が謝るべきだ」
ヂラスが布団を畳みながら言う。
「お前さんが真剣に話していたというのに、俺は睡魔に負けちまった。言い訳はするつもりはねぇ。悪かった……」
「お互い様だ。ところで、少し聞いていいか?一体、どこまでの記憶があるんだ?」
ヂラスがこちらの顔色を伺うようにチラチラと見てくる。
「……すまない。その様子だと、相当怒っているように見えるが……」
「そういうことじゃないよ」
間違って伝わっているのを感じて、慌てて言葉を繕う。
「昨日のお前は……なんだろう。少し、精霊王ぽかったっていうか……何か覚えてないか?」
ヂラスは安心したのか、ガハハと笑ってあぐらをかいた。
「精霊王ってのは伝説上の存在だろ?どうしたら俺がそいつに見えるんだよ」
「そうだよな……」
昨夜、ヂラスの口から「精霊王は全てを見ている」という言葉をたしかに聞いた。
魔法に長けてるヂラスなら何か知っているのではないかと思ったが。
覚えていない様子見て、やはりあれは寝言だったのだと、無理やり納得する。
ダンジョンを出て、俺らはヂラスの鍛冶屋へと足を運んだ。やはり良い剣や装備ばかり扱っている。
この中の数本はヂラスが打っているのだろう。
俺はヂラスに言いたいことがあった。
「なぁヂラス。俺、旅に出てみようと思うんだ」
「……」
「昨日、お前に提案されてから考えたんだ。このままでいいのかって。俺はお前を信じることにするよ。相棒」
「……そうか。冒険者は旅をしてこそだからな」
ヂラスは意外にも薄い反応をした。ようやく動いたかと思うと、店の奥へ行ってしまった。
やがて戻って来ると、その手には一振りの刀が握られている。
「それは……?」
「これは俺が代々受け継いできた刀だ。お前さんにこれを渡す」
何を言っているのか分からなかった。
「お前……正気か?」
「正気だ。お前に持っていて欲しい」
「いや、だってこれ、お前の家宝みたいなものだろう?そんな大切なものーー」
「言っただろう?俺にとってお前は特別だって」
「……答えになってねぇって」
俺とヂラスが出会ったのはたったの一年前。家宝を渡すには短すぎる付き合いだ。
ヂラスはガハハと笑うと、腹を蹴ってきた。
「おい!何をするんだ!」
「可愛いやつが!お前さんが自分の存在に気がつくのが楽しみだい!」
予想外の言葉に吹き出してしまう。
「何だよそれ。」
長い押し問答の末、一時的に俺が「預かる」という形でまとまった。
「んで、いつ発つんだ?」
「明日の朝には行くよ」
「送迎会とか開かないのか?」
「いい思い出ないしな。」
「……そうか。……じゃあ発つときこの店に寄ってくれ。この刀をお前に合うように打ち直してやる」
「本気か?」
「あぁ。久しぶりに本気出してやるぜ」
「何もかも……ありがとうな」
俺は何故か涙が止まらなかった。
ーーー
夜、ヂラスが刀を打っているーー
「継承者が見つかったようじゃな。お前があれだけ気に入るのも珍しい」
「あいつはきっとデカくなる。あいつは特別だ」
「わしには凡人にしか見えないのじゃがね」
「いいや。俺が保証する」
あいつは将来、奇跡と呼ばれる男だ
「昨日は悪かった。少し気難しくなっていたんだ」
俺はヂラスに昨夜のことについて謝った。
「久しぶりに会えたと言うのに、人生相談なんかして。自分勝手だったのは分かっている。悪かった」
俺はそう言ってヂラスに頭を下げた。
ヂラスは驚いた顔をしている。
「おいおい、そんなことで気に病まないでくれよ。誰にでも悩む時期はある。お前さんも、そういう時期だったんだろうよ」
そういう時期か。この年齢になって言われるのは気恥ずかしいな。
「それより、俺の方が謝るべきだ」
ヂラスが布団を畳みながら言う。
「お前さんが真剣に話していたというのに、俺は睡魔に負けちまった。言い訳はするつもりはねぇ。悪かった……」
「お互い様だ。ところで、少し聞いていいか?一体、どこまでの記憶があるんだ?」
ヂラスがこちらの顔色を伺うようにチラチラと見てくる。
「……すまない。その様子だと、相当怒っているように見えるが……」
「そういうことじゃないよ」
間違って伝わっているのを感じて、慌てて言葉を繕う。
「昨日のお前は……なんだろう。少し、精霊王ぽかったっていうか……何か覚えてないか?」
ヂラスは安心したのか、ガハハと笑ってあぐらをかいた。
「精霊王ってのは伝説上の存在だろ?どうしたら俺がそいつに見えるんだよ」
「そうだよな……」
昨夜、ヂラスの口から「精霊王は全てを見ている」という言葉をたしかに聞いた。
魔法に長けてるヂラスなら何か知っているのではないかと思ったが。
覚えていない様子見て、やはりあれは寝言だったのだと、無理やり納得する。
ダンジョンを出て、俺らはヂラスの鍛冶屋へと足を運んだ。やはり良い剣や装備ばかり扱っている。
この中の数本はヂラスが打っているのだろう。
俺はヂラスに言いたいことがあった。
「なぁヂラス。俺、旅に出てみようと思うんだ」
「……」
「昨日、お前に提案されてから考えたんだ。このままでいいのかって。俺はお前を信じることにするよ。相棒」
「……そうか。冒険者は旅をしてこそだからな」
ヂラスは意外にも薄い反応をした。ようやく動いたかと思うと、店の奥へ行ってしまった。
やがて戻って来ると、その手には一振りの刀が握られている。
「それは……?」
「これは俺が代々受け継いできた刀だ。お前さんにこれを渡す」
何を言っているのか分からなかった。
「お前……正気か?」
「正気だ。お前に持っていて欲しい」
「いや、だってこれ、お前の家宝みたいなものだろう?そんな大切なものーー」
「言っただろう?俺にとってお前は特別だって」
「……答えになってねぇって」
俺とヂラスが出会ったのはたったの一年前。家宝を渡すには短すぎる付き合いだ。
ヂラスはガハハと笑うと、腹を蹴ってきた。
「おい!何をするんだ!」
「可愛いやつが!お前さんが自分の存在に気がつくのが楽しみだい!」
予想外の言葉に吹き出してしまう。
「何だよそれ。」
長い押し問答の末、一時的に俺が「預かる」という形でまとまった。
「んで、いつ発つんだ?」
「明日の朝には行くよ」
「送迎会とか開かないのか?」
「いい思い出ないしな。」
「……そうか。……じゃあ発つときこの店に寄ってくれ。この刀をお前に合うように打ち直してやる」
「本気か?」
「あぁ。久しぶりに本気出してやるぜ」
「何もかも……ありがとうな」
俺は何故か涙が止まらなかった。
ーーー
夜、ヂラスが刀を打っているーー
「継承者が見つかったようじゃな。お前があれだけ気に入るのも珍しい」
「あいつはきっとデカくなる。あいつは特別だ」
「わしには凡人にしか見えないのじゃがね」
「いいや。俺が保証する」
あいつは将来、奇跡と呼ばれる男だ
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